移動開始
カル達は、早朝から移動することになった。
問題の斎宮の場所までは、半日程の距離だ。オーリーは先に現地に赴き、結界の有無を調べてもらっている。
オーリーが出発する前に、カルに魔石を渡していた。この魔石から念話が可能だと教えてもらっていた。大我の距離だったら通話可能との事だった。
カルは気の同調を試みる。
普段なら見落としてしまいそうな、熟練された動きをする者の気配を感じる…。
監視されていた…?
だが、昨日までは感じ無かった気配だった。
カルは皆に伝える。
「皆、そのままで聞いて欲しい…どうやら敵の斥候のような者がいるみたいだ」
カル以外の4人は何事も無かったように動きながら答える。
「どうする?」
「このまま移動するのは得策とは思えません」
「そうだな、何か手を打つべきだろう」
ウーリは答えずに馬に変身した。
カルはクリスに聞いてみると皆に伝えた。
クリスは宿屋の主人の、ヨシタカと打ち合わせをしている。
クリス達は、夕暮れに現地で合流する手筈になっていた。
カルはそんなクリスに声をかける。
「クリスさん、どうやら敵の斥候が近くにいるみたいです。おそらく何かしらで連絡を取り合い、離れた場所の仲間に伝えるんだと思います」
「…ああ、気づいていた…。お前はどうするつもりだ?」
「何か混乱させるような行動が取れればいいんですが…」
「…そうだな…敵の目的はお前だ。お前とセシル、そしてウルスラグナはしばらく別行動を取る方がいいだろう。敵もまさか空の移動は考えて無いだろうからな….」
「はい、僕もそれがいいと思います。ヨウとブリトニーだけなら、敵もまだ襲撃されないと考える筈です」
「問題はお前達が、何処に向かうかだろう。あからさまに逆方向に行けば警戒される恐れがある」
「わかりました、途中まで一緒に移動し、それから離れるようにします」
「…わかった」
まずカル達は一緒に行動し、途中からヨウ、ブリトニー組とカル、セシル、ウーリ組に別れる。揺動組は明るい内に神宮内に潜伏し、暗くなった頃を見計らって斎宮に向かう。
混乱に乗じて空からの部隊が、斎宮に突入する。
クリスとヨシタカ達は後から合流し、ヨウ、ブリトニーと共に行動するということになった。
カル達は警戒しながらも、順調に移動していた。その途中、ヨウが少し緊張しているのに気づいた。カルは声をかける。
「ヨウ、大丈夫?」
「…はい、少し考え過ぎてしまって…」
カルは昨日セシルに教えてもらった事をヨウにも伝えてみた。
「ヨウ、僕や他の仲間を見てみて、どう感じる?」
「えっ…?」
そう言われて、ヨウはキョロキョロと皆を見てみる。
セシルは笑顔だけど、どこかやる気が感じられ、ブリトニーは目に強い意志が見られる。馬の姿のウーリも堂々としている。
「…皆、頼もしいですね」
「実は、僕も昨日セシルに教えてもらったんだ。そして今みたいに皆を見たら、何の心配もいらないって思えてきたんだ。不思議だよね?セシルもいい事言う時あるって思った」
その時、セシルが突然カルに声をかけてきた。
「カル!あんた今なんか言った?」
カルはドキっとしながらセシルに答える。
「えっ、別に何も…」
「…そう、ならいいけど」
そんなカルとセシルのやり取りを見て、ヨウは思わず笑顔になる。
「セシルってすごいですね」
「ほんとに…」
カルはヨウの笑顔何嬉しかった。皆が幸せになるような笑顔だった。
一方、斎宮でもカル達の動向を嗅ぎつけ、カル達は密かに監視されていた…はずだった。
監視されていたのだが、斥候が既にカルとクリスには気づかれている事まではわからなかった。
移動を開始したとの報告をすべく、斥候も動き出す。だが途中、カル達は二手に分かれて行動して行く。そのまま街道を進む組と、山間部に向かう組とで別れる。カルは山間部に向かっていった。
斥候はその情報をさらに詳しく調べる為に、案の定カルの向かう方についていく。
カルはセシルとウーリに乗りながら、のんびりと移動している。とても、これから敵の本拠地に向かう様には見えない。
だが斥候も油断せず、一定の距離を保ちつつ、監視を続けていた。
カル達が山間部の村落に着くと、馬のウーリがカルに語りかける。
『カル、この村に少し不思議な気を感じる…なんだろう?僕と似てるけど、少し違う存在がいるみたいだ』
「えっ、どんな感じ?確かに何か強い気は感じられるね、人とは違う」
『僕も初めて感じる気配だね、敵意は感じられないから、問題無いと思うけど』
「わかった、注意してみる」
2人のやり取りを聞いて、セシルも声をかける。
「それって魔物とは違うの?」
『うん、もっと霊力が強くて強い魔力も感じるね』
「へぇ、どんな感じの存在なんだろう?」
カルは斥候の存在を意識しつつ、その未知なる存在にも気を配っていた。その存在が感じられる場所に近づくと、不思議な事にガーランドが光を放つ。
カルは気づいてガーランドに声をかけた。
「うん?ガーランド…?」
また強く輝く。何かを伝えたいのだろうか?
カルは強く念じてみる。ガーランドが何かを伝えたい…ヴ…ク…ヴ、ルーク…ヴルーク、ヴルーク!
「ヴルーク?もしかして君の姉妹?」
答えるようにガーランドは輝く。
「あの場所にあるの?」
ガーランドはまた輝く。
カルは斥候の気配を意識しつつ、その場所に行ってみることにした。
ウーリから降り、ウーリも人の姿に変わる。
その場所はどうやら工房らしい。強い霊力を放つ者の存在を感じる。
カルは戸を叩き、声をかけてみる。
「こんにちは、誰かいますか?」
しばらくして、声が聞こえる。
「あれあれ、今日はご主人はいませんよ。お出かけ中です」
少女の声だった。カルは答える。
「すいません、実はちょっと伺いたい事があるのですが…」
すると扉が開く。可愛らしい少女が現れる。まるで仔猫のように見える。
「初めまして、僕は旅の者でカル・エイバースといいます。実はこちらに不思議な剣か杖なような物はありませんか?」
ウーリが少女に声をかける。
「君は猫なの?」
少女はギクっとして、ウーリを見る。ウーリに不思議なものを感じたようだった。
「あれあれ?あなたすごく不思議な力を持っている様です…聖獣…?」
「うん、僕はウルスラグナ。ウーリって呼んで。君は霊獣だね」
「ウーリ?私は猫又のネネ、よろしく」
カルは自分のガーランドをネネに見せながら話しかける。
「実は、この槍の姉妹を探してて…」
「ウニャっ!あれあれ、その槍はウチのヴルークちゃんにとても良く似てますね」
「っ!?…ヴルーク、やっぱりヴルークはここにいるの?」
「ですが、今ご主人様が持って出かけたまま帰って来ません…昨夜出かけたままです」
「そうですか、ヴルークは剣なのでしょうか?」
「そう、この国には珍しい剣。そしてとても賢い剣」
「わかりました、ネネさん、ありがとう。また会いに来ます。失礼ですが、ご主人の名前を教えて頂けますか?」
「ムラサメ様です!」
「えっ、ムラサメってもしかして、隕鉄で刀を作る方ですか?」
「あれあれ、良く知ってますね?」
「やっぱり…わかりました、もし、ムラサメ様が戻ったらガーランドが待ってるとお伝えください」
「わかりました!」
カル達は精霊武器の存在を確認した。刀匠ムラサメの元にあると言う。
カルがその場から離れるとウーリが一言伝える。
「あのネネって霊獣、200才は超えてるね。まあ、僕よりだいぶ若いけど」
カルはどう見ても少女にしか見えないネネが、200才を超えている事に驚いた。
斥候もしっかりとついて来ているのを確認し、カル達は再び移動を開始した。
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