オーリーと作戦
空腹のウーリが子供のように駄々をこねてから暫くして、夕食が部屋に運ばれて来る。
今まで見たことのない豪華なものだった。運ばれてくる側から、ヨウが食材の説明をしてくれる。
「わぁ、こちらの刺身の活け造りはイセエビ、そして鍋料理はカキですね!そしてどれも高級な食材ばかりです!」
「ごはーん!!」
ウーリは限界だったのか、テーブルごと食べる勢いで料理を片っ端から食べて行く…。
ヨウはもっと味わって食べなさい、と嗜めるが、ウーリには無意味なようだった。
あまりの勢いに主人のヨシタカも圧倒されていたが、笑顔でまだまだあると伝えてくれた。
皆それぞれ食事を堪能している様子だった。
ウーリは料理の殆どを食べ、代わりの料理の半分ほどを食べ終えたところで満足したらしい。
カルは周囲の警戒を解かずに、同調していた。今のところ異常は感じられなかった。
皆食事を終えて、風呂に行くという話になった。
カルは注意を怠らないように伝え、ヨウとセシル、カルとウーリがそれぞれ風呂に向かう。ブリトニーは皆の後でいいと伝え、見張り役を申し出た。
なぜかヨウとセシルが気まずそうな顔をしていたが、問題無い…かな…。
カルはウーリと共に男湯に向かう。風呂の中に突然巨大な気を感じた。
ウーリはカルに一言伝える。
「…大丈夫、知り合いだよ」
そう言って、脱衣所で着ている服を脱ぎ捨て、風呂に向かって行く。カルは警戒しながらもウーリに続いた。
風呂に入ると黒髪の男性が、湯船に浸かっていた。その顔を見てカルは警戒を緩める。オーリーだった。
「いやぁ、カル君、風呂はいいねぇ」
「オーリーさん!」
ウーリは何事も無いように桶に湯を汲み、身体に湯をかけてから湯船に浸かる。慣れているように手拭いを頭の上に乗せていた…。ウーリは地元の人か…?
カルもお湯を身体にかけて湯船に浸かる。
「カル君、もう少し早く合流するつもりだったんだが、遅れてしまいすまない」
「いえ、しかしオーリーさんも神出鬼没ですね…」
「ハハハ、申し訳ない。実は曖昧だった事がハッキリしてきたので、詳しく調査してきたのさ」
「そうですか…」
ウーリは本当に気持ち良さそうに湯船に浸かっている。うぃ、なんて唸ったりしてるが…。
「それで、わかった事を伝える…まず、君の父さんを害した者は、この東国のドラゴン族だ。しかも斎王と関係が深い…」
「えっ⁉︎」
「まあ、驚くのも無理は無いが、君たちの敵対している組織の一員だろうね」
「(食す者)の一員のドラゴン…」
「そうなるね、その者の名は(夜刀)という。ここよりも更に東にある、ヒタチという場所を拠点にしているドラゴン族なんだが、僕やお嬢よりも格は少し下がる種族だね」
「格、ですか…?」
「おや?お嬢からは聞いてないかな?ドラゴン族は、タイプによって格が存在するんだ」
「初めて聞きます」
「そうか、お嬢や僕は1番上の超級とされている。他にも数体の超級種が存在しているけど、まあお嬢は更に上の存在だけどね」
「そうなんですね…」
「そして、夜刀はその下の特級のドラゴンさ。普段は群れで行動する種族なんだけど、どういう訳か単独で組織に入ってしまったみたいだね」
「わかりました…」
「よし、続きは上がって部屋でしよう!」
「はい」
オーリーとカルは湯船から上がる。ウーリは魂まで湯船に浸かっている様子だったが、カルとオーリーに続いて行った。しかし、ウーリはどこにでもすぐに馴染むな…、才能かも知れない。
風呂から上がり、オーリーが合流しているのを気づくと、ヨウがまた手をつき、深々と頭を下げようとしたので、オーリーが宥める。
ブリトニーも風呂に向かう。しばらくして皆が揃った。
スゥーっと気配を消しながらクリスも入って来た。カルはクリスの気配を感じていたので、前もって皆に伝えていた。
明日は斎宮に向かう。その為の作戦会議が開始される。
まずは、オーリーから調べていた事が伝えられた。夜刀の事、そして斎王が関係が深い事などだった。
ふと、セシルがオーリーに質問した。
「あの…オーリーさんの力なら、難なく解決してしまうのでは無いですか?」
「…?それは、僕が力でって事かな?…うーん、確かに組織を滅ぼすくらいは簡単に出来るかも知れないけど、それ以上に罪のない人達も被害を受けるだろうね…それと、国の半分くらい無くなってしまうかも知れないな」
「…………」
「まあまあ、驚かないで。僕たちの力は天災と同じなんだ。例えばお嬢がブレスを本気で発したら、君達の国は跡形も無くなってしまうだろうね」
オーリーが途轍もない事を平然と言っているのを聞き、皆理解が追いついていない様子だった。
「しかも、僕はどちらかと言うと研究職で、生身の戦闘はあまり得意では無いんだ…多分ヨウにも軽くやられてしまうだろうね。もちろん本来の姿ならば別だけど」
皆は何も言えない…。特にヨウは困惑している。
「龍での力は大き過ぎるのさ、だから君達のサポートはできても直接手を下す事は難しいと思って欲しい。まあ、その辺りの事はウルスラグナに聞くといいよ」
皆ウーリの方を向く、ウーリはテーブルに倒れるように寝ていた…,
「それで、斎宮にはどうやって侵入するのかな?」
黙って話を聞いていたクリスが口を開く。
「斎宮は今や要塞と化している…斎宮の元で動いている組織は、訓練された軍隊と同じだ。まあ、1人ずつならばこちらの戦力が優っているだろうが…数も数百人いると思って間違いないだろう」
カルが答える。
「侵入出来れば何とかなると思う」
ブリトニーが続けて声をかける。
「となると、揺動か?」
「クリスさん、手薄な所はありますか?」
「…かなり険しいが、斎宮は岩山に囲まれている。崖をよじ登り、そこからならば少しは侵入しやすい筈だ…しかし罠もはられている」
「ならば、空からならどうでしょう?」
カルは空からの侵入を提案する。カル達の中で飛ぶ事が出来るのは、カル、セシル、そしてウーリだ。
その3人以外を正面から展開し、そちらに目を向けた隙にカル達が上空から侵入する。
ただ、斎宮に結界が張ってあるかも知れないので、それだけはオーリーに確認してもらうことになった。
現状、敵が近づいてくる事は無いようだが、カルは警戒を緩めていない。
そして、正面から揺動するメンバーは、クリス、ヨウ、ブリトニー、そしてウバクの仲間である、ヨシタカ達合わせて10数人。
別行動を取るのがカル、セシル、ウーリだ。
行動開始は明日の日没後、禁忌の地だけに奥の院まで辿り着くのが一つの課題だが、夜間であればそれ程問題無さそうだった。
作戦は決まった。少々大雑把だが、皆の実力を信じての事だった。
オーリーは結界を調べる為にその場を後にする。
明日は戦いが待っている。カルは皆の表情を見る。誰一人怖気付く様子は無かった。
クリスは一人部屋を出て行く、カルはクリスを追い、声をかける。
「クリスさん、色々ありがとうございました」
「大丈夫だ、お前は私が必ず守る」
「いえ、僕が必ずクリスさんを守ります」
クリスが少し微笑んだように見えた。カルは初めてクリスの笑顔を見た。そしてクリスの笑顔は、誰よりも美しく感じ、カルはしばらくその場に立ち止まってしまった。




