斎王と食す者
数年前………。
斎王はいつものように、神事を終え、休もうとしているときだった。
誰もいないはずの斎宮に何者かの気配を感じる…。
武術や魔術にも能力が高い斎王は、油断せず警戒をしていた。
寝所にすぅーっと何者かが現れた。
「何者か!ここを斎宮と知っての狼藉か!」
斎王の言葉にその者は静かに答える。
「我は(食す者)に使えるサンダユウと申す者。斎王、その力を我らにお貸し願えぬか?」
斎王は答える
「何を馬鹿な!我は龍神の巫女、我は龍神にのみその力を尽くす。貴様らなどの為に使う力など微塵もない、立ちされ!」
「貴方様なら、今の帝よりも大きな力を手に入れる事が出来ましょう、もし気が変わりましたら声をおかけ願う、またお会いいたしましょう」
「無礼な!」
斎王が身構えるよりも先に、サンダユウと名乗った者の気配は消えていた。
その数日後…、
再び斎王の前にサンダユウが現れる。しかし今回は一人では無かった。
斎王は警戒し、既に身構えていた。
「何者か!姿を現せ!」
「斎王、またお会いしましたな…我はサンダユウ、そしてこちらは夜刀と申します」
夜刀と紹介された人物には、異常な気を惑っていた。それは斎王にもすぐに分かった。
「まさか!?…あなた様は…」
「いかにも、我は龍神なり。斎王よ、我に手を貸すのだ…」
斎王は両手を前に付き、頭を下げたまま夜刀に答える。夜刀は、隻眼で、刀傷のようなものが見えた。
「しかし、私はオロチ様に使える巫女、龍神様と言えど…」
その瞬間、夜刀は斎王に呪縛をかける。自分の思い通りに思考させる、「従属」の呪法だった。
「ぐっ…うぅ……」
斎王は苦しみながらも、抵抗を試みる。しかし、相手は龍の力を持つドラゴン族…並の人間では抗う事が出来ない。
苦しんでいた斎王は、やがて大人しくなった。
暫くしてサンダユウと夜刀を見上げ、声をかける。
「…夜刀様、何なりと我に申し付け下さい…」
夜刀は不適に笑い、答える。
「斎王よ、我ら(食す者)に手を貸すのだ、良いな」
「…はっ、応せのままに…」
「このサンダユウを支配下に置く、何なりと命ずるが良い。我らにその力を捧げるのだ…」
「…はっ、命ずるがままに…」
斎王の表情は邪悪に歪み、腕には呪縛の入れ墨のような文様が浮き上がっていた…。




