ミノそしてイセ その2
昨日の夜から降り出した雨は、朝方には上がっていた。少し涼しく、肌寒く感じる朝だった。カル達はミノの宿を出て、刀工のいる場所を訪ねるつもりだった。
カルはヨウの事が心配だったが、今日は少しだけすっきりとした表情を浮かべていた。
「ヨウ、刀工は何人もいるの?」
「ええ、そうですね、何人かいてそれぞれ工房を持っています」
「今日はそれを見学することと、情報を集めることが目的だね」
セシルが話しかける。
「ヨウは実際に工房に行った事はあるの?」
「はい、タンゴの南に王都のヤマシロと言う場所があって、その街の工房には行った事があります」
「なるほどね、西方の鍛治とは違うのかな?」
「ええ、基本的には同じ事をしていると思いますが、ヤマトの刀工は工程が細かく、素晴らしい物を作っていると思います」
「そうか、見てみたいね」
刀工の工房まではそれほど時間はかからなかった。こじんまりとした工房だった。中には数人の者が働いているのが見えた。金槌を打つ音が響いている。
ヨウは工房に入って、話をしている。工房の親方に話を聞き、工房を見たいとの話をする。工房の親方は快く了承してくれた。カル達は工房の親方に話を聞く事にした。工房の中は暑く、親方も汗を流し作業をしている。初老の男性で、その姿は柔和で優しそうに見える。
「お忙しいところ申し訳ありません、西方の連邦国から来ましたカル・エイバースです」
「初めまして、私はカネミツと申します」
「東国の刀工は素晴らしいと聞き、話をお聞かせ願いますか?」
「わかりました、私で良ければ何なりとお聞き下さい」
「この国では刀は素晴らしく、切れ味も鋭く丈夫だと聞いています、やはり工程の違いなのでしょうか?」
「うむ、工程が西国の方法よりも細かく、繊細な作業を必要としております」
「先程刀身を見させて頂きましたが、とても美しく感じますね」
「ありがとうございます、我々は刀身に命を吹き込む様に刀を打ちます、その感情が刀に映るのかも知れません」
「なるほど…」
カルは遠くから東国に移り住んだ刀工がいるかを聞いてみた。
「何処か異国で修行をした刀工の噂を聞いた事はありますか?」
「ふむ、やはりイセの刀工の噂をお聞きしましたかな?」
「はい、イセにそのような方がいらっしゃるのですか?」
「私もお会いした事は無いのですが、不思議な刀を打つと聞いた事があります、なんでも刀が意思を持つとか…私にはまだまだ辿りつけない境地ですな…」
「名前はご存知ですか?」
「確か、ムラサメと名乗っていた様な…」
「ムラサメさんですか…どうもありがとうございます」
カル達はしばらく工房を見学し、鉄の塊から刀になっていく様を見た。東国の刀は息を飲むような美しさだった。他の4人もじっと工程を見つめていた。
工房でしばらくの時が過ぎ、カル達はまた出発する。次の目的地はイセだった。イセにはムラサメと呼ばれる刀工がいる。そして、斎王も…。
今のところオーリーから連絡は無かった。イセに入ればイーターからの接触は間違いなくあるだろう。カルはヨウに声をかける。
「ヨウ、明日にはイセに着くと思う、大丈夫?」
「はい、覚悟は出来ています、叔母上を助けましょう」
「そうだね、僕達ならきっと助けられる!」
セシルとブリトニーも声をかける。
「そうよ、ヨウ、私達はいつも大変な状況を乗り越えて来たんだもん、絶対大丈夫!」
「そうだ、今回も、そしてこれからもずっとな!」
ウーリも声をかける。
「僕も皆の力になるよ!」
ヨウは答える。
「はい、皆さんありがとうございます」
ヨウはいつもの笑顔に戻っていた。全ての人が包まれてしまうような優しく温かい笑顔だった。カルは久しぶりにヨウの笑顔が見られた事がとても嬉しく感じた。ヨウが笑うと他の皆も笑顔になる、そんな感じがカルは大好なんだと感じていた…




