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斎王

 



  東国の北岸から遠く離れた南岸の半島にイセという場所が存在している。北岸に比べ南岸の方が暖かく、過ごしやすい。半島のほぼ中心に壮大な祠、神社が存在していた。

  辺りは濃い緑から、ちらほらと色を変え初めた樹木が生い茂り、神社の赤く塗られた建物を彩っていた。


  ヨウの叔母である、現斎王はこの場所に囚われているように過ごしていた。


  斎王は神の御子であり、遡ればミカドの血筋に繋がっている。伊勢のこの神社は神宮と呼ばれ、斎王の住まう場所だった。


  つまりヨウの一族はミカドの血筋を引く由緒ある一族だった。


  斎王は未婚であることが必須であり、神と契る存在として崇められていた。しかし実際には孤独であり、年に数回神託をミカドに伝えるだけの存在で、もはや儀式だけを行う存在とも言えた。


  この神宮の一画に斎宮と呼ばれる建屋があり、そこに斎王は住んでいる。しかし、現斎王は孤独ではないようだった…。


  「……ほう、ヨウは里に帰ったのか?」

  「はい、そうでございます」

  「して、例の血筋の者は一緒なのか?」

  「はい、そう知らせを受けております」

  「ならばこの場所に来るのは時間の問題の様だな」

  「その通りかと…」

  「ククク、この場が素奴の最期の場所になるやも知れぬな」

  「はい」

  「サンダユウよ、抜かるなよ」

  「はっ」


  斎王は覆面に黒ずくめの男とそんな会話をしていた。斎王の顔は暗く凶悪な表情が浮かんでいた……。





  カル達は翌朝アマミの里を出発した。イセまでは1週間程の日程だった。途中東のミノの街に向かい、刀工を訪ねてからの行程だった。ヨウはその方が、険しい山道を越えずに済むとの事だった。


  「ミノの街はどんな感じなのかな?」

  「はい、元々商業の街で様々な工芸などがあります」

  「なるほど」

  「有名なのは、鵜飼という鳥を使った漁師ですね」

  「へぇ、そんな方法があるんだね?」

  「はい、川で鳥を使った漁をするのです」


  カルの好奇心が刺激された。ウーリがカルに話しかける。


  「僕も水鳥に変身出来ないものかな…?」

  「ウーリはもっとすごいものに変われるじゃないか」

  「うーん、でも魚取ってみたいな」

  「まあ、見てみたい気もするけど…」


 秋の風を感じながら馬車は進んで行く。天気は今のところ良さそうだ。しかし季節の変わり目は不安定な天候を呼ぶ。いつ天候が悪化してもおかしくなかった。


  しばらく行くと、見慣れた顔に出会う。クリスだった。


  「…皆、元気だったか?」

  「クリスさんこそ」

  「カルはどこに向かうのだ?」

  「はい、ミノの街に向かうつもりです。その後にイセに行く予定です」

  「…そうか、イセには注意した方がいい」

  「…!?」

 

  ヨウがクリスに尋ねる。


  「イセは危険なのでしょうか?」

  「…ああ、ヨウの叔母…斎王は…」

  「叔母上が!?…斎王様は…」

  「……イーターだ」

  「…なっ……」

  「…真実は過酷なもの」


  クリスはカルに向かって話す。


  「カル、私は先に行く、イセの様子を見て来る」

  「わかりました、気をつけて」

  「…ああ、お前もな」


  クリスは去って行く。カルはヨウが心配だった。


  「ヨウ、大丈夫?」

  「……叔母上が…確かに私に厳しかったですが、まさかイーターとは…」

 

  セシルがカルに話しかける。


  「カル、ヨウの両親には伝える方がいいのかな?」

  「….いや、そんなことを信じてくれるかな?」

  「ああ…イーターの存在を知らないか…」

  「うん、そしてこの国の王制を批判してしまうかも知れないし…」

 

  馬を引くブリトニーが話しかける。


  「確かに、我々が言っても話にならないだろう…」

  「そうだ、オーリーさんならどうだろう?」

  「そうね、オーリーさんなら何とかしてくれるかも知れないわ」

  「そうか、竜の神ならその言葉を信じてもらえるな」

 

  ウーリがカルに話しかける。


  「オロチはどこにいるのかわかるの?」

  「いや、それはわからないけど…お師匠様ならわかると思う」

  「そうね、サンドラさんだったらわかるはずね」

  「しかしあの場所まではいくら飛んで行くにしても、まる一日はかかるな」


  その時だった、突然黒い影が現れ、人の形に変わっていく。オロチだった。


  「やあカル君、僕に話があるのかい?」

  「オーリーさん!」

  「ああ、この辺りの事は僕にはわかるんだ」

  「じゃあ聞こえていたのですか?」

  「まあね、しかしイーターとは何だい?」

  「ええ、それは……」


  カルはオーリーにウバクの民の事と、それに敵対する勢力のイーターの事を説明した。


  「なるほど、僕が調べていた魔族も関わっているのか…何か組織的なものを感じてはいたんだけど、これでわかった」

  「それでオーリーさん、ヨウの両親に伝えてもらえませんか?」

  「うん、僕の巫女を取り込むとは放って置けないな、よしうまくやってみよう」

  「ありがとうございます、よろしくお願いします」

  「龍神様、本当にありがとうございます…」

  「ヨウ、君の叔母上は僕の娘みたいなものさ、大丈夫、一緒に助けよう」

  「オーリーさんに連絡する方法はありますか?」

  「うーん、ちょっとお嬢に聞いてみる、君達はミノに行くのかい?」

  「はい、その予定です」

  「そうか、では僕はお嬢に聞いてからミノに向かう。君達が着く頃には僕もミノに行けるだろう」

  「わかりました」

  「それでは失礼する」


  オーリーはまた影の様に消えて行った。


  カルはこれから激しい戦いが始まる予感がしていた。ヨウの叔母を助ける事が出来るだろうか…?

  少し不安もあったがカルは落ち着いていた。少しだけ冷たい風が頰に当たる。ハラリと木の葉が舞った、葉の色は薄い緑色をしていた…

 


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