東国上陸
カルはいつの間にか眠っていた様だった。気がつくと波が穏やかに変わっていた。もうヤマトの内海に近いのかも知れないとカルは思った。皆は部屋にいなかった。
カルは甲板に上る。皆が遠くに見える陸地を見ていた。
「あ、カル起きた?ねえ、見てあれがヤマトだって!」
「もうすぐ着きます!」
「やっと目的地に辿り着くな」
「お刺身、お寿司!!」
皆長い旅の目的地を目にして、高揚しているみたいだった。
「あれがヤマトの地なんだ、もう少しだね…」
カルは警戒を怠ってはいなかった。今のところ問題は見当たらなかった。
甲板に置いてある箱にクリスが腰を下ろしていた。膝の上に両膝を乗せ、手を組んでいる。カルはクリスに話しかけた。
「クリスさん、ヤマトへは?」
「…ああ、何度か行った事がある」
「そうなんですね、クリスさんは本当に神出鬼没です」
「…それは褒めているのか?」
「はい、クリスさんは僕に出来ない事をやってます」
「…そうだな、それが仕事だ」
クリスは海の方を眺め、目を細めた。カルはその横顔がとても美しく見えた。しばらくクリスを見ていると、クリスがカルの方を向く。
「…どうしたカル?」
「いえ、な、何でもありません」
「……?」
カルは目を逸らして誤魔化した。こっちを見つめるクリスの顔もとても美しかった。
………数時間が経過し、陸地がすぐ近くに見える。ダウニングが皆に声をかける。
「もうすぐ港に着きます、皆さん準備をして下さい」
カル達は準備を済ませ、上陸の用意をする。もうすぐに港だった。
船が港に到着した。陸と陸の間を抜け、たどり着いた場所だった。
港に降りたカル達は今までに見た事も無い光景を目にしている。ヤマトの家々はほぼ木造で出来ており、石造りの街並みに慣れているカル達には新鮮だった。
カルはヨウに聞く。
「ヨウ、東国は木造の家が普通なんだね?」
「はい、ここではこれが普通ですね」
「凄く美しく、新鮮だよ」
「ありがとうございます、私を褒められているみたいに感じます」
ヤマトに到着してからの予定は、この港から東に向かい、一度ヨウの故郷を訪れる。その後オーリーが言っていたイセと言う街を目指す。ここからヨウの故郷までは約一週間程掛かる。馬車で移動する事になった。東国の馬はとても小柄だが、丈夫な感じがした。いつものようにブリトニーが馬を操る。
ダウニングとはここで別れる。カルは挨拶を交わす。
「船長、色々ありがとうございました」
「カル様、道中お気をつけて」
「はい」
カル達は港を後にする。小型の馬に引かれなが馬車はのんびりと進んで行く。途中大きな祠が目についた。
「ヨウ、あの巨大な祠は何?」
「はい、ここヤマトではあの巨大な祠を神社と呼びます」
ヨウが説明する。あの神社と呼ばれる祠は神様の住む家で、ヨウはそう言った場所に仕える巫女で、ここイズモは神々の集う場所と呼ばれ、神社は特に神聖な場所だと言う事だった。
「あの祠にも龍神が祀られているの?」
「いえ、あの場所は東国の神様が祀られています」
「ここには神様がいっぱいいるの?」
「はい、私の国はあらゆる場所に神様が存在すると考えられています、だからその数も数えきれない程多いのですよ」
「私はこの雰囲気はすごく好きだぞ、元々エルフ族は森の民故、神聖な林や森は居心地がいい」
「僕も好きだよ」
ヨウは自国の文化が褒められて嬉しいのか、笑顔を浮かべていた。
カル達はイズモを抜け、東に向かう。
今日はイズモの先の街道の宿に泊まる事になった。ヨウの故郷までは先は長かった。
ヨウの説明では、ヤマトは複数の地区に分かれていて、その中心にミカドと呼ばれる王が存在するとの話だ。ヨウの故郷はミカドの存在する街の北の海沿いで、ここもまた神聖な場所だと言う。
その後の道中で襲撃を受ける事はなかったが、警戒を怠らない。おそらくクリスも近くにいるのだろう。
カル達は海沿いを進み続けていたが、途中途中で見かける風景は美しかった。夏が過ぎ秋に変わりかけの季節で、この国の主食である米の稲穂が黄金色に輝いてくる頃だった。異国の旅人に人々はあまり慣れていなかったが、慣れてくると心からもてなしてくれる、そんな印象を受けた。
次の目的地で、ヨウの故郷であるタンゴまではもう少しだった。とにかく今は情報を集めること、そして襲撃にも備えなくてはならない。東の果てのこの国にも、イーターは確実に存在している…カルは馬車の中から外を見る。田んぼで農夫が作業しているのが見えた。カルは故郷のキンクウを思い出した…,




