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ニルヴァナ

 



  ラムドールの襲撃を退け、カル達は宿屋に戻っている。5人とも戦いに慣れてはいたが、流石に疲れていた。


  「皆、ありがとう、僕は仲間に恵まれてる….」

  「本当よ!あんたはなんで、竜王の弟子で、失われた国家の王家の一族で、得体の知れない集団に命狙われて、精霊鍛治の武器を探してんのよ!?」

  「…そう言えば、何でだろう?」


  カルは冷静に考えると、自分の置かれた立場がかなり異常だと思った。


  「本当にカルは不思議な存在ですね、私も良く仲間をやってられると思います」

  「本当だな、でもちょっと待ってくれ、皆それぞれ何かがあると思うのだが…」

  「…僕もそう思うな」


  何か不思議な力で操られている、そんな感覚すら覚える。

 

  カルは言わずもがな、セシルは魔神の子孫で、ヨウは龍神の巫女で次期斎王になる、ブリトニーはダークエルフ族の若き族長、そしてウーリは長き時を生きて来た聖獣である…。


  何故かカルを中心として、何かを抱えている者達が集まって来る。そして次から次へと色々な事が起こり続けている。


  「皆、今はイーターの襲撃に注意しよう、僕は皆を危険な目に合わせてしまっている…それは申し訳無いけど、同時に皆を信頼している、ごめんそしてありがとう」

  「そうね、カルには私がついてないとダメだからね」

  「私は皆と一緒にいるから自分も成長出来たと思っています。辛い事もありますけど、それ以上に得るものが多いですね」

  「カル、私はお前に助けられ恩を忘れてはいない…そしてその恩を返し、今は自分も成長する為に一緒にいるのだ」

  「僕は皆と一緒になって、今までよりも楽しい毎日だよ、だから一緒にいる」


  カルは皆に向かって言う。


  「皆、本当にありがとう!よし必ず精霊鍛治の情報を手に入れよう!」

 

  皆笑顔で頷き合った。




  ………翌日、カル達はダウニングに話す為に船に向かった。既にクリスから報告は受けている筈だろう。


  船に乗り、船長室に向かう。扉をノックし返事を確認してから中に入る。クリスも一緒だった。クリスの片手にはグラスがあった。


  「船長、昨日の襲撃については…」

  「ああ、クリスに聞いております」

  「それで商人は?」

  「…おそらくですが既に手にかけられた可能性が高いです、しかし、強かな者です。何処かで生き延びているとも考えられます、今は情報がありません」

  「そうですか…しかしこのまま停泊しているのは危険なのでは?」

  「ええ、明日には出港しようと考えております、交易品は街の商人に話をする予定です」

  「わかりました、船は襲撃されなかったのですか?」

  「ええ、しかし全ての確認は行います」

  「では、僕達は準備が終わり次第こちらにも戻ります」

  「お願い致します」


  カルはクリスに話しかける。


  「クリスさん、昨日はありがとうございました」

  「カル、お前と仲間は相当腕が立つようだな…しかし気は抜くなよ」

  「はい、わかっています」

  「…ああ」


  クリスはもうカルには興味無さそうにグラスを口にする。カルは軽く頷き外に出る。


  カル達は出港の準備をする為に宿屋に戻り、夕方までには船に戻る事にした。それまでは街を見て回る事にした。もちろん警戒は怠らない。


  街は大きい寺院を中心に広がっている。この街の根底には宗教がある。ここに住む人々は寺院に通い、祈りを捧げている。


  「ヨウ、この街の宗教はヨウの国にもあるの?」

  「はい、あります。大きい寺院も沢山あります」

  「この宗教は何て言うの?」

  「はいニルヴァナと呼ばれています」

  「ニルヴァナとはどういう意味?」

  「そうですね、悟りなどと言われています、自分の内を見つめ、全てを超越した存在を目指す…そんな感じでしょうか」

  「なるほど」


  カルは寺院を遠くから見つめる、大きな建物に多くの人々が入って行く。生活の中に祈りが存在している、そんな感じがした。しかし悪い感覚は持たなかった。寺院にはお守りやお札などの宗教的な物も販売していた。


  カル達が見回っていると僧侶らしき男性に声を掛けられる。年配の僧侶だった、寺院の重要な立場についている感じがする。


  「旅の方、こちらは初めてですかな?」

  「はい、寺院を見るのも初めてです」

  「そうですか、この寺院には誰にでも寛容です、是非中を見て行く事をお勧めします」


  僧侶は両手のひらを顔の前で合わせて頭を下げ、立ち去って行った。


  カル達は少しだけ中を見て行く事にした。


  寺院の中には大きな像が立っている。ニルヴァナの神なのだろう。皆手を合わせ頭を下げていた。カル達も真似て同じように手を合わせた。


  …突然不思議な現象が起こる。スゥーっと辺りから人が居なくなっていく。


  「セシル?ヨウ、ブリトニー!、ウーリ!あれ、ここは、確かにさっきの寺院のはず………?」


  カルは辺りを見回す、自分以外の誰も見当たらなかった。


  大きな神の像を見上げる。すると像が突然輝いて辺りを包み、光が消えると目の前に少年が立っている。ラムドールの民族衣装を着ていた。


  「やあ、カル初めまして、僕はニルヴァナ」

  「え、ええっ!あなたは神様ですか…?」

  「うーん、僕は神じゃあ無いんだよね…どちらかと言うと君に近い存在だと思う」

  「…それはどう言う意味ですか?」

  「僕は君に似てある国家の王族だったんだ、でも不思議な力があって、色々な事が自分を中心に起こって行った…」

  「それって…?」

  「うーん、まあ言うなれば君の先輩みたいなものだね」

  「この状況は?」

  「ああ、君の魔力とこの寺院の聖なる力が反応したのかも知れないね」

  「…僕があなたに会う事は何か意味があると思うのですが」

  「そうだね、君はこれからもっと色々な事を経験する、僕達のような者を(特異点)などと呼んだりする…でもカル、君にはそれを乗り越える力がある、苦しい事もあるけど、それ以上の事も必ず起こる…」


  だんだんとニルヴァナの姿が消えて行く


  「…君は、その運命を必ず乗り越えられる筈…自分を、仲間を…信じ…て……」



  辺りが消えて行く、カルの目の前が真っ暗になって行く


 カルが気がつくと寺院の像の前で手を合わせていた。カルはキョロキョロと辺りを見回す。セシルが声を掛ける。


  「カル、どうしたの?キョロキョロして」

  「え、い、いや…」

  「大丈夫?」

  「うん」


  カルはニルヴァナの像がを見上げる。特異点とは何だろう…?いずれ知らなくてはならない事なのか…?

 カルはその場を離れる。多くの人が神の像に向かって手を合わせている。カルには、人々がエネルギーをニルヴァナに送っているように見えた…

 

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