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海上の戦闘

 



  カル達の乗船する船はタラスの街を出港した。また10日前後の船旅になる。船酔いもそれ程無く、無事に過ごしていた一行だったが、いつ何が起こるかはわからない。警戒だけは緩めなかった。


  タラスを過ぎると文化圏が変わって来る。街並みも西方と異なり、異国の文化が目につくようになるとの話だった。


  その日甲板に出ると、クリスに声をかけられる。


  「…カル、注意するのはこれからだ、キスクとは違う場所から乗り込んでいる者もいるだろう…」

  「はい、警戒は緩めていないつもりです」

  「そうか、ならばいいが….」

 

 クリスはどこかへ去って行った。潮風が気持ち良かった。船室に降りようとした時、ダウニングに声をかけられる。


  「カル様、後1、2日すると海が荒れそうな気配です。揺れますのでご注意を」

  「わかりました、仲間にも伝えておきます」

  「よろしくお願いします」


  カルは船室に降りて行き、皆に声をかける。


  「皆、船長の話だと、後1、2日すると海が荒れそうだって」

  「そう、船も初めてだけど荒れた海なんて想像もつかないわ」

  「本当に怖いくらい揺れますので、注意して下さい」

  「私もどんなものか考えられないが、気を引き締めるとしよう」

  「嵐になるのかな?」


  カル達は荒れた海で何も起こらなければいいと思っていた。


  「皆、荒れた時に何事か起こるかも知れない、襲撃も考えられる、警戒は怠らないで」

 

  皆はそれぞれわかったと返事をする。カルは窓から外を見てみた。今はまだ静かな海が目についた。



  ……それから1日が経った。少し風が強くなり、湿った感じに変わって来た。今のところそれ程の変化は見られない。カルはダウニングに話を聞く事にした。


  「船長、後どのくらいで天候は荒れそうですか?」

  「はい、このままだと後数時間で嵐になりそうです」

  「僕達に何か出来る事はありますか?」

  「ははは、大丈夫です、我々は何度も経験しておりますので」

  「わかりました、よろしくお願いします」


  カルは船室に降りて、皆に後数時間で荒れそうと伝える。


 

  風が強くなり、雨が激しく降って来た。嵐に突入した。

船は大きく揺れる。慣れていないカル達は戸惑っている。


  「皆、大丈夫?」

  「きゃあっ、また揺れが…」

  「皆さん何かに捕まってじっとしていましょう」

  「うむ、少し気持ちが悪く…」

  「凄くゆれるね!イャッハー!」


  何故かウーリは肯定的に楽しんでいるようだった…。


  その時、甲板で大きな音がした。何かが爆発したような音だ。咄嗟にカルは刺客が来たと感じ、外に出ようとする。


  クリスが突然現れる。


  「カル、出るな!私が行く!」

  「でも…」

  「狙いはお前だということを忘れるな!」


  クリスは激しく伝え、その場を立ち去る。


  「カル、私が出ます!」

 

  ヨウがそう言って、部屋を出る。

  カルはクリスに言われた通りにするべきか迷っていた。


  「僕も行く!友達が戦っているのに僕は黙って見てられない!」


  そう言ってカルは部屋を飛び出す。


  甲板に出ると、船員が何人か倒れているのが見えた。


  ヨウはカグツチを構え、カルはガーランドを構える。

 クリスは誰かと素手で戦っている、魔族のようだった。


  魔族が魔法を使い、先程の爆発を起こしたようだった。


  魔族は剣で武装している。クリスは素手で戦っているが一歩も引かない。素晴らしい体術だった。


  その他にも数体の魔族が襲って来ていた。ダウニングが巨大な曲刀で戦っている。ヨウは船長のところに駆け寄る。襲って来た瞬間をカグツチで突く、油断していた魔族はもろに食らう。更に気を込めた一撃を魔族に打ち込む。魔族は動かなくなった。


  船長も魔族の攻撃を躱し、曲刀を打ち込む、避けた剣ごと薙ぎ払う力強い一撃だった。魔族の受けた剣は粉々になり、頭から切られ絶命した。


  もう一体の魔族は魔法をクリスに向かって放つ、炎の塊がクリスを襲う、


  カルは走り出し、炎をガーランドで払う、そのまま飛び上がり、魔族にガーランドで攻撃する。


「いやあああ!」


  掛け声と共にガーランドが魔族に振り下ろされる、首筋からガーランドで切りつけられた。


  そのまま甲板に落ち、絶滅した。


 クリスは魔族の腕を掴み、その腕を力で折る、頭を掴み腹に膝蹴りを入れる、魔族は口から大量の血のようなものを吐き、倒れる、膝蹴りで内臓が潰れたのかも知れない。クリスはそのまま掴んでいた魔族を海に放り投げる。かなり先の方に魔族は飛んで行った。


  カルは辺りを見回したが、他には敵は見当たらなかった。


  クリスがカルの方に歩いて来る。パシっと平手を顔に放った。


  「カル!何故言うことを聞かなかった?お前は出てこなくても、私に任せておけば大丈夫だったろう!」


  カルは張られた頬を抑えながら答える。


  「ごめんなさい、でも、僕は友達だけに任せて自分が隠れているなんて出来ません!」

  「私はお前を守るのが使命だ!お前に何かあったら私は自分を許せない」

  「僕もクリスさんに何かあったら許せません!」

  「カル…」

  「僕は確かに立場上クリスさんに護衛して貰わなければならないかも知れません、でも、僕はそこまでして…大切な人を危険に晒して、自分が助かろうなんて絶対に出来ません!」


  後ろからダウニングが声をかける。


 「はははっ、カル様は武人のようだ、クリス、武人に座して死を待てとは死よりも辛い事じゃろう」

 「しかし船長…」

 「なに、カル様はお前を大切な人と呼んだ。その意味を考えるのだな」

  「……」


 クリスは振り返って去って行く。


  「カル様、クリスは不器用なのだ、許してやってくれ」

  「いえ、僕は怒ってなんていないです。ただ僕はやるべき事をやっただけです」

  「あなたは自分よりも他人を大切に考えておりますな?それはクリスも同じです、わかってやって下さい」

  「はい、ありがとうございます」

  「うむ」


  船長が船員に向かって叫ぶ。


  「まだ天候は回復しないぞ、余裕のある者は怪我人を連れて行け!舵を取り違えるなよ!」


  周りから声が上がる。ヨウは倒れている船員を介抱している。持っていた薬を飲ませる。


  下からセシル達がやって来る。


  「カル!大丈夫?」

  「セシル、怪我人に回復魔法を頼む」

  「わかったわ!」

  「わ、私も何か手伝うぞ…」

  「ブリトニーは大丈夫、休んでいた方がいい」

  「し、しかし」

  「大丈夫、慣れない船で酔ったんだ、休んでて」

  「す、済まない」

  「その分僕が手伝うよ、任せといて!」


  ウーリが張り切り出した。カルも怪我人を運ぶ。


  「皆さん、申し訳ない」


  船長がカル達に伝えた。


  嵐の中、ずぶ濡れで人を運び、天候が落ち着いた頃、全員を運び終わった。幸運にも死んだ者はいなかった。ヨウの薬とセシルの魔法で明日には動けるようになりそうだった。


  「カル様、皆さん、ありがとうございました」


  船長に言われる。


  「いえ、大丈夫です」

  「はい、皆大事無くて良かった」

  「本当に、良かったです」

  「うんうん」

 

  船長が感心したように言う。


 「カル様は良い仲間に囲まれているようですな」


  カルは笑顔で答える。


  「はい、かけがえのない仲間です!」

  「ははは、素晴らしい!」


  海はまだ少し波が高かったが、雨は止んでいた。空を見ると、雲の間に太陽が見えていた。


  「さあ、皆着替えて食事にしよう」


  カルはそう皆に声をかける。皆は返事をした。カルは調子の悪そうなブリトニーが少し心配だった、それ以上にクリスの事が心配だった…

 

気がついたら70話を超えてました…読んでくれる方々本当にありがとうございます、少しでも気に入ってもらえればブックマーク、評価等お願い致します!

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