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東国へ!その2

 



  カル達は東国への長い旅の準備を終え、馬車に乗って移動中だった。外は夏の終わりの最期の足掻きのように、暑く日が照りつけていた。

 

  カル達はヴィスニーを目指す。途中、ブリトニーのダークエルフの里に立ち寄り、物資を補給する事になっていた。


  「ブリトニー、そう言えばブリトニーの里に精霊の伝承があるって言ってたよね、どんな話なの?」

  「ああ、色々あるのだが、中でも有名なのは精霊王の可愛がっていた王子がいて、その王子が妬まれて兄弟に殺されてしまう話だな」

  「うん?…どこかで聞いたような…あ、そうかガーランドに聞いた話だ」

  「何、この話は実話という事か?」

  「うん、僕がガーランドに聞いた話が本当なら事実だと思う」


  話を聞いていたセシルとヨウとウーリが話に加わってくる。


  「カル、ガーランドにどんな話聞いたの?」

  「私も興味あります」

  「僕も聞きたいな」

  「分かった、僕がガーランドに聞いたのは…」


  カルはガーランドが精霊王の可愛がっていた王子に贈り物として作られたという事、可愛いがられていた王子が妬まれて兄弟に殺されてしまった事、ガーランドは波長があって使える者にはすごく扱いやすくなるが、使えない者にとっては本当に扱い辛く、使い物にならなくなってしまう事、その後地脈の結界として使われ、やがてサンドラの元に渡ったことを話した。


  「へぇー、そんな事が有ったのね」

  「カルはガーランドに聞いたのですね?興味深いです」

  「このラッテアにもその様な話があるのだろうか…?」

  「悲しい話だね…」


  そんな話をしているうちに、迷いの森に着く。ブリトニーは結界を解き、里の中に入って行った。


  ダークエルフの里で馬車を引く者を雇い、ヴィスニーまで連れて行ってもらい、その者に馬車を管理してもらう事になっていた。


  カル達を見て里の者達が集まって来る。今日中にヴィスニーに向かう為、余りゆっくりはしていられない。カル達に声をかけて来る者がいた。ミー・リーとチムの姉妹だった。


  「ブリトニー様、カル様、こんにちは」

  「こんにちは」

  「おお、仲良し姉妹が来たな、元気かミー・リー、チム?」

  「こんにちはミー・リー、チム」


  ブリトニーはミー・リーが馬車を扱えるのを思い出し、ヴィスニーまで連れて行ってくれるか聞いてみた。ミー・リーは快く了承してくれた。どうやらチムも一緒に行く事になったらしい。


  カル達は水や食料を補給し、すぐに里を離れヴィスニーに向かう。馬車を扱うのはミー・リーだった。ミー・リーの隣にチムが座っている。


  数時間でヴィスニーに着く。ダークエルフ達は、ヴィスニーの街に怒りや嫌悪感はもう持っていなかった。もちろん酷い仕打ちを受けた事を忘れたわけでは無いが、新しい領主が優れた人物で、食料や資金を毎月ダークエルフの里に与えていた。今では感謝を感じている程に変わった。


  街に入るとクリスが待っていた。


  「…遅かったな、カル」

  「クリスさん!」

  「この街では大活躍だったみたいだな」

  「いえ、友達を助けただけです」

  「友達か…ついて来な」


  クリスはそう言ってスタスタと歩いて行ってしまう。カル達は急いで後を追った。向かった先は領主の館だった。


  クリスは躊躇わずに中に入って行く。まるで自分の家のように見えた。カル達は後について中に入る。既に私設の騎士団らしきものは存在していなかった。


  中に入って行くと広い部屋に向かって行く。部屋の中に男性が1人待っていた。小柄で少しふくよかな体、金髪で領主らしく、貴族のような格好をしていた。年齢は40代くらいに見えた。領主がカル達に声をかける。


  「カル様初めまして、領主のアンドレと申します」

  「初めまして、カル・エイバースです」


  ブリトニーがアンドレに向かって話し出す。


  「アンドレ殿、我が里への支援心から感謝する、この場を借りてお礼申し上げる」


  ブリトニーはそう言って深々と頭を下げた。ミー・リーとチムもブリトニーに習って頭を下げる。


  慌ててアンドレが声をかける。


  「ブリトニー様おやめください、前の領主の事とは言え、あなた方にしてしまった事は取り返しがつきません。せめてものお詫びです」

  「そう言ってもらえると助かる、本当に感謝する」

  「いえいえ、こちらこそ」


 ブリトニーの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。 ブリトニーはアンドレと手を握り合った。アンドレはカルの方を見て話しかける。


  「カル様、今日はこちらにお泊り下さい。明日の船の手配も既に済んでおります、ごゆっくりお過ごし下さい」

  「えっ、そんなにしてもらうなんて…」

  「はははっ、私もカル様の組織の一員なのですが」


  アンドレは笑顔でカルに話す。カルは驚いてクリスの方を向く。クリスは領主の部屋の酒を勝手にグラスに注いで既に飲んでいた。


  「はあ、そうですか…それでは甘えさせて頂きます」

  「はい、それでは部屋に案内します。食事が用意出来ましたらお呼びしますのでごゆっくりお過ごし下さい」


  カル達は使用人に案内され客室に向かった。


  荷物を置き、しばらくのんびりしていると、食事の用意ができたと使用人に呼ばれる。


  皆テーブルに座っている。クリスの姿は見当たらなかった。もう既に何処かに移動しているのだろう。


  カルは美味しそうに食事する仲間とミー・リーとチムの姉妹を見て、少しだけ嬉しくなった。そしてダークエルフ達に手を差し伸べているアンドレ、ウバクの仲間に感謝した。

  カルはクリスの事が気になっていた。クリスはいったいどういう人なのか?今度聞いてみようと思った。しかし今は目の前の美味しそうな食事を取ろう、そう考え煮込まれたシチューを口に入れる。肉がとろけるような柔らかさだった…


 

 


 

 

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