ダンジョンでの戦い
新しい家での生活も数日が過ぎ、少しずつ落ち着いて来た。仕事を受ける為に、カル達はギルドに向かっていた。
「よーし、頑張って仕事をしてあの首飾りを買うぞ!」
「私は翡翠の宝飾品を買います!」
「私はあの指輪を買うぞ!」
カルとウーリ以外の3人は俄然やる気になっていた。
「ねえ、カル、女の子達は何かあったの?」
「うーん、宝石の魔法かな?」
「えっ、宝石は魔法があるの?」
「うん、女の子にだけ効く魔法かな?」
「へー、そうなのか、勉強になるよ」
女子達が足早に馬車に乗り込み、カル達を呼ぶ。
「ほらーっ!早く行くよ!」
「急いでください!」
「こっちはもう準備万端だぞ!」
カルとウーリは急いで馬車に向かう。
「ごめん、待って」
「宝石の魔法って強力なんだね?」
いつもより速いスピードでギルドに向かった。
ギルドに着いて早々、女子達が率先して依頼を選んでいる。
「もうこうなったら複数依頼こなしてやる!」
「ええ、何でもやります!」
「私もやるぞ!」
カルはその姿を少し怖いと感じながら眺めていた。
受付嬢も少し困惑している様子だった。
「あの、皆さん少し落ち着いて、ね?」
「ねえ、もうこれしか依頼はないの?」
「セシル、ブリトニー、こちらの方が報酬はいいですよ」
「うむ、これでもいいが、時間がかかるな…」
「…………」
しばらくして女子達の意見がまとまり、依頼を受ける。
その目には今までにない気迫がこもっていた。
「カル!この依頼にするわ、文句は無いわね!」
「私達はもう決めました」
「うむ、これしかないだろう」
「ひっ、ど、どんな依頼?」
「1番報酬高くて日数かからないやつ」
「少し危険も伴いますが問題ありませんね?」
「たいした事はない、ダンジョンを捜索して宝を持って帰るだけだ」
「は、はい…わかりました」
ダンジョンの調査などは今までもやった事があった。しかし今回のダンジョンはかなりの難所だ。その場所には多くの魔物が存在していて、強力なボスが住んでいるとの事だった。
「皆かなり大変だけど大丈夫?」
「何も問題ない!」
「私はカグツチでパワーアップしました、大丈夫です!」
「もちろん、私も大丈夫だ!」
「は、はい…」
カルは依頼を受付嬢にお願いする。受付嬢に話しかけられる。
「カルさん、何があったのかはわかりませんが、気をつけて下さいね」
「は、ははは……」
カルは依頼を受け、皆はすぐに出発する。ダンジョンの場所は東の森よりも少し南の方にある洞窟だった。
カル達は街道を東の森方向に進んで行く。洞窟までは馬車でも2日はかかる。出来るだけ急ぎ進んで行く。
キスクを出て2日目にカル達は洞窟に辿り着いた。
「皆、注意して」
「わかってるわよ」
「はい、大丈夫です」
「抜かりはないぞ」
「僕も大丈夫」
5人は洞窟の中に入って行く。途中魔物とも遭遇し、倒しながら先に進んで行く。
魔物の数も多く、難易度はかなり高い場所だった。魔物達を駆逐しながら先に進み、地下に降りて行く。
セシルの光の魔法が役に立った。光球を近くに配して明かりにする。洞窟の中は日が当たっているように明るかった。
洞窟の中は地下に降りる程、魔物も強力になり数も増えていくようだった。さすがに疲労も感じられる。
「皆、大丈夫?」
「まだまだよ」
「はい、大丈夫です」
「これからだ」
「平気だよ」
今は地下3階、この洞窟はどこまで続くのか…。
カルは闘気を同調してみる。結構な数の魔物の数を感知する。下の階層から巨大な闘気を感じる。
「皆、この下に大きな気配を感じる」
「それがボス?」
セシルが聞いた。カルは同調を解きながら答える。
「うん、かなりの闘気を感じた」
「じゃあ、もう少しね」
「もう少し頑張りましょう」
「よし、行くか」
「うん」
皆は下の階層を目指し進む。やがて下の階層に降りる場所を見つけ進んで行く。
魔物も強力だったが、新しくなったガーランドとヨウのカグツチの力は絶大だった。今までよりも扱いやすく、強力な攻撃になる。特にヨウの闘気を込めた武術は効果を発揮する。
魔物を倒しながら、辺りから異様な気配のする場所に辿り着いた。辺りは広く巨大な部屋のようになっている。
「皆、多分ここにボスがいる」
「わかったわ」
「はい、私のカグツチの力を見せてやります!」
「よし、やってやるぞ」
ウーリは巨大な猪に変化する。
巨大な部屋の先に何かがいる気配がある。姿が見えてきた。巨大な3つ首の巨人だった。
巨人は炎をカル達に向かって吐く、皆それぞれに避けて体制を整える。
猪のウーリが巨体で突撃する、その後にカルとヨウが続く、ブリトニーは弓を構え射る、セシルは魔法を展開している。
巨人はウーリの突撃を両手でガシッと受け止める、カルはウーリの背中を踏み台にして高く飛ぶ、ヨウは闘気を込めた一撃で巨人の足を狙う。
後方からブリトニーの弓が飛んでくる、数本の矢が巨人に刺さる、セシルは水の魔法で攻撃、ヨウの攻撃が足に直撃した、カルは3つ首のひとつをガーランドで突き刺す、巨人はかなりのダメージを負う。しかしまだ終わってない。皆距離を取り、体制を整える。
猪のウーリは巨人の手を振りほどき、一度距離を取ると、今度は巨大な雄鹿に変わる。黄金色の角が槍の様に前に伸びている。角で巨人に向かって突進する。
巨人はまた受け止めるが、角は腕に突き刺さる、ブリトニーはすかさず疾風の連矢を放つ、
ヨウも必殺の一撃、
セシルは上級魔法を唱える、
巨人も黙ってやられない、残った首から炎を吐く、皆の体制が少し崩れる、角の刺さった腕でウーリを放り投げる。ヨウの方に飛んで来る。ヨウは大きく飛んで躱す、ウーリは少し体を打ったが直ぐに立ち上がる。
ブリトニーの矢を巨人は腕で払い落とす。再び炎で攻撃する、皆は躱すのに精一杯だ。
「皆、あの巨人は強い、油断しないで!」
カルが叫ぶ、良く見ると巨人の腕の傷がふさがっていく。カルの刺したひとつの顔も再生している。
「何、再生能力があるの?」
セシルが叫ぶ、皆は体制を整えながら構える。
「よし、皆一気に攻撃しよう!」
カルは身体中から闘気を溢れさせる。巨大な闘気がカルを包む、ドラゴンフォースだ。
「わかったわ!」
「はい!」
「わかった!」
雄鹿のウーリは前足をかいて返事をする。
巨人はまた炎で攻撃する、カルはギリギリで躱し突進する、動きは今までよりも数倍速い、
ウーリは炎を躱して巨人に突撃する、ヨウが続く、
後方からブリトニーが疾風の連矢、セシルは光属性の魔法を展開している、
カルは右側からガーランドを巨人に叩きつける、左腕を切り落とす、
ウーリが正面から巨人に突っ込む、右手で受け止めるが、角は腹に刺さる、
巨人の頭にブリトニーの矢が飛んでいく、ほとんどが突き刺さる、
ヨウの闘気を込めた一撃、
「はあああ!アマミ流闘技術、金竜撃!」
巨人の足を砕く必殺の一撃だった。
セシルは光魔法を放つ、
「聖なる光よ、我に力を与えその光を力となせ、聖なる光矢!」
巨大な光の矢が巨人に向かって行く、胸部に光の矢が突き刺さる、
カルは高くジャンプし、ドラゴンフォースでの一撃を巨人に放つ、頭の端から腹部に至るまでガーランドで斬りつける、手応えはあった。
皆はまた距離を取る。
巨人はバーンっと音を出してその場に倒れた。体から火が起こり燃えて行く。もう再生する様子は無かった。
「皆、やったみたいだね、大丈夫?」
「あちち、ありゃ、結構火傷してるのね」
「ああ、私の服も焦げてます…それに火傷も」
「私は大丈夫だ」
「あいてて…腰を打ったよ、全くあの巨人め」
皆それほどの怪我はない様だった。セシルの魔法とヨウの薬で治癒する。
「それで、ここには何があるだろう?」
「うん、ボスが何かを守ってるって話なんだけど…」
セシルは光の魔法で辺りを照らす。先の方に巨大な扉が目に入った。
「あの扉かな?行ってみよう」
皆は扉に向かう。カルは闘気を同調させるが、中に気配は感じられない。扉は重いが、開いた。
中には財宝がそれなりに蓄えられている、罠は無さそうだった。
「すごい、こんなにたくさんの財宝が」
「魔物はこういうものを集めるのでしょうか?」
「確かにダンジョンには宝はあるものだが…」
「僕は金が好き!」
カルは奥に宝箱を見つけた。
「皆、これじゃないかな?」
大きな宝箱だった。
「どうしよう、と言っても開けるよね?」
「ええ、開けるわ」
「はい、これが依頼ですから」
「良し、開けよう」
宝箱はすぐに開いた、中には古い本が数冊入っている。
「これ、かな…?」
「えっ、本?」
「とにかく持ち帰った方がいいのでは?」
「ああ、ここに置いておいても仕方あるまい」
ウーリは金色のものを手にとって何かニヤニヤしている…。
「良し、じゃあ本を持って帰ろう」
「ねえ、カル、お宝はどうするの?」
「持ち帰れるだけ持って帰ろう」
「やった!」
それぞれ宝を手に取り、部屋を出る。今のところ何も無い。
来た道を地上に向かって歩いて行く。
ブリトニーは宝のあった部屋で変わった物を見つけ持ち出していた。
「あれ、ブリトニーそれは何?」
カルが聞く。ブリトニーはカルの方を向いて答える。
「あ、ああ、どうやら弓と矢のセットらしいのだが、魔力を感じたので持って来た。気になったのでな」
「ふーん、使えるといいね」
「ああ、でも少し不思議な感覚があるのだ…」
その時ガーランドが輝く。すると弓も輝き出した。
「これはいったい…」
「うーん、ガーランドと会話してるみたいだね。僕がお師匠様のところでガーランドを見つけた時、なんだか呼ばれてる感じがしたんだ」
「ああ、そう言えば私も他の宝物よりもこの弓に惹きつけられた感じがするな」
またガーランドと弓が輝き出す。
「ブリトニー、集中してみて、何か聞こえたりする?」
「うむ、やって見よう」
ブリトニーは集中してみる。
「…ラッテア、名はラッテア」
「名前、名前があるのか?ラッテアがお主の名か?」
「うーん、やっぱり精霊と関係してるのかもしれない、ラッテアって言うんだね」
ガーランドとラッテアが輝いた。まるでお互い会話をしているようだった。
「とにかく帰ってから調べてみよう」
「ああ、そうだな」
皆は歩き続け、また地上を目指す。やっと最上階に辿り着いた。もうすぐ地上に出られる。
魔物を倒し歩き続け、やっと地上に帰って来た。
「ああ、やっと帰って来たね」
「うん、お腹減ったな…」
「そうですね、さすがに疲れました」
ブリトニーは弓を見つめ呟く。
「ラッテアか…」
ウーリは馬の姿に変わる。
《はーっ、やっぱり空ばいいな》
カルは皆に大きな声で言った。
「さあ、皆キスクに戻ろう!」
洞窟内では丸一日過ごしたようだ。来た時と同じ高さに日が昇っていた。見つけた本を馬車に乗せ、それぞれ宝を積み込み出発する。
ウーリは一緒に馬車を引くと言い出した。巨大な白馬と二頭の馬が馬車を引いて行く。ウーリ以外の4人は皆眠ってしまっていた。
《やっぱり疲れたよね、皆、お疲れ様》
誰にも操られずに馬車は進んで行く、巨大な白馬は自分の意思で街に向かっていた、聖獣は寝なくても問題無かった。
《でも、帰ったらいっぱい食べさせてもらうからね!》
巨大な白馬はそんなことを呟いて街を目指し進んでる行く。街はまだまだ先だった…




