引っ越し
カルはジョシュ達と別れ、ヨウの家に帰って来た。
「ただいま」
皆興味深そうにカルに聞いてくる。
「どう、いい家あった?」
「私も気になります」
「どうなんだ?」
「あ、お帰りカル」
ウーリ以外は非常に興味を示す。
「うん、ジョシュさん達と相談して一応見せてもらった」
「どんな感じ?」
「はい、教えてください」
「広いのか?」
「僕はどんなとこでも構わないよ」
カルは農業地区の古い廃屋で、ウバクのアジト的な建物だと言う事とウバクの技術が使われている地下室があり、秘密の部屋に繋がっている事を伝えた。
「一度見ないと何とも言えないけど、いいんじゃない?」
「どんな技術が使われているのでしょう?」
「家は広いのか?」
「…くぅー、くぅー」
何故かウーリは眠っている様だけど、カルは答える。
「これから見に行ってみようか?」
「うん!」
「はい、行きましょう!」
「よし、行くぞ」
「うーん、まだいい…くぅー」
カルはウーリを起こし、皆で家を見に行く事にした。鍵は預かって来たので、気に入らなかったら返す事になっていた。30分程歩けば着く。
農業地区のはずれにある廃屋だった。
「ここだよ」
「うーん、見た目はちょっとね」
「そうですね、ですが手をかければ問題無いと思いますよ」
「うむ、大きいな、中はどうだ?」
「カル、僕は君が決めた場所に行くよ」
カルは鍵を開けて中に入る。中は外観とは違いかなり整っており、広かった。全てが揃っている。
「中はすごくいいんじゃない?」
「ええ、これならば料理なんかも問題なさそうですね」
「ああ、私はあの暖炉が気に行ったぞ」
「この椅子座り心地いいよね、僕またふぁーっ…」
カルは地下室に行ってみようかと提案し、皆と一緒に行ってみる。
階段を降りて行くと扉があった。鍵はかかってない、中に入ってみる。
そこは不思議な事に、地下なのに明るい。これがウバクの技術なのだろうか?
「すごい、ここ明るいね!」
「魔力ですか?」
「いや、魔力は感じないぞ」
「うーん、これはウバクの技術だろうね」
カルは皆に尋ねる。
「それで、皆はどうかな?ここに住む?」
皆それぞれ意見を言う。
「私はここでも全然構わないわ」
「はい、私も」
「問題は家賃だが…」
「僕はどこでも大丈夫だ」
皆が賛成したのを確認して、カルは話す。
「じゃあここに引っ越そう、僕達の新しい家だ」
そうと決まり、皆戻って早速引っ越しの準備に取り掛かる。ヨウは大家に連絡し、カルはジョシュ達に詳しい事を聞いてくる事にした。
カルはギルドに着くと、受付嬢に話しかける。
「すいません、ギルドマスターいますか?」
「カルさんこんにちは、はい、ギルドマスターですね?」
受付嬢が事務所の方に歩いて行った。しばらくして戻ると、中に入るように伝える。
「はい、それでは失礼します」
中に入るとロンバルドが自分専用の大きな机に肘を突き、大き目の椅子に座っていた。
「カル様ようこそ、それで御用件は家の事ですかな?」
「はい、皆で相談して借りる事にしました。それで家賃等はどうすれば…?」
「ははは、家賃は頂けません、我が主人から受け取れる筈がありません」
「ですが…」
「心配なさらずとも問題ありません、カル様気になさらず」
「わかりました、ではお言葉に甘えます」
「それですぐに引っ越されるのですか?」
「はい、そのつもりです…あの、ギルドマスター、ひとつ聞いていいですか?」
「おや、何でしょう?」
「僕らの組織に必要な資金はどこから出ているのですか?」
「ああ、そういう事ですか。ふむ、ここでは何ですね…」
「あ、今すぐでなくてもいいんです、ただそれがどんなものなのか、豊富なのかそれさえわかれば…」
「わかりました、そうですな、すごく豊富で問題の無いお金と言っておきましょう」
「そうですか、それが聞ければ大丈夫です」
「ええ、他にも聞きたい事があればいつでもお声かけ下さい」
「はい、では家の事ありがとうございます、それじゃ失礼します」
「はい、それではまた」
カルは受付嬢に挨拶し、ギルドの外に出る。
カルは戻る道すがら「ウバクの民」の組織はどのくらい大きいのか、その資金はどこから出ているのか考えていた。カルはまだまだ知らない事が多すぎる。
それはいずれジョシュにきちんと聞く事にした。今は皆と引っ越しすることが大事だ。
カルはヨウの家に戻り皆に伝える。
「家賃はただでいいみたいだ」
「本当?太っ腹ね」
「私も大家さんに伝えて来ました。お金はすでに払ってあるのでいつ引っ越ししても大丈夫です」
「ならば荷物をまとめよう」
「僕も何がしようか?」
皆それぞれテキパキと荷物をまとめる。
作業中、扉を叩く音がした。ヨウが扉を開くとジョシュが立っていた。
「こんにちは、ジョシュさん」
「こんにちはヨウ様、カル様はおられますか?」
「はい、カルっ…ジョシュさんが」
自部屋で荷物をまとめていたカルがやってくる。
「あ、ジョシュさん、どうしました?まさか緊急な…」
ジョシュが微笑みながら話す。
「いえいえ、引っ越しなら荷物も多いと思いまして、ちょっと外に出てもらえますか?」
「はい…」
外に出たカルはピカピカの馬車を目にした。
「どうぞこれをお使い下さい」
「え、貸して頂けるんですか?」
「いえ、お使い下さい」
「これを頂けるんですか?」
「はい、ご自由にお使いください」
「ジョシュさん、そう、後で聞きたい事があるんですが…まあ引っ越し終わってからでいいんですけど」
「…わかりました、その時はまた声をおかけください」
「じゃあ有り難く馬車を使わせて頂きます」
「はあ、それでは私はこれで」
ジョシュは去って行った。
カルは家の中の皆に馬車を貰った事を伝える。
「ええっ、どれだけ太っ腹なのよ!」
「ええ、助かりますが…」
「ああ、本当に良いのか?」
「僕が引くの?」
「いや、馬も一緒だった」
皆は外に出て確認する。大き目の馬車だった。
「すごい!」
「本当、これなら荷物は一度で運びきってしまいます」
「うむ、私が馬を扱おう」
「ふんふん、この子たち中々いい子だよ」
カルは申し分け無いと思いながらも、ウバクの組織についてもっと知らなければならないと改めて思った。
やがて荷物も馬車に詰め込み、それでも載せきれないものはウーリに元の姿に戻ってもらい運んでもらった。
ほぼその日は荷物を新しい家に運び、片付けはまた明日になりそうだった。
新しい家には馬房もあるので、馬を繋いでおく事が出来た。
新しい家の外に出て、辺りの風景を見ながら、明日からここで新しい生活が始まる、そうカルは思っていた。とにかく片付けを終わらせて、ジョシュ達にウバクについての話を聞こうとカルは思った。
いい匂いがして来た。ヨウが料理をしている。今日のご飯は何かな?カルはそんな事を考え家の中に入っていった…




