東の森にて…
東の森に向かう途中、クリスに出会った。クリスは食す者なのだろうか?
カルはそう考えながら依頼の場所に向かい歩き続ける。他の3人もおそらく同じ事を考えているだろう。
そんな事を察してか、セシルが声をかけて来た。
「カル、やっぱりあのクリスって人イーターに関係してるのかな?」
「うん、はっきりとは言えないけど僕らを監視しているような気もするね」
「私はイーターの可能性は否定出来ないと思います」
「急にこちらの目につくようになったのは事実だ。それにカルが目をつけられてるのもな」
「皆、気を抜かずに、今は魔物を退治しよう」
3人はそれぞれ頷き合い、気を引き締める。もうそろそろ依頼の場所に着く頃だった。
カルは気の同調を試みる。森の中に多くの魔物の気配を感じる。
「皆、近くに魔物がいる。とにかく今は倒す事に集中しよう!」
「わかったわ」
「はい、わかりました」
「ああ、了解だ」
森の茂みから魔物が現れる。最初に出て来たのはグールだ、この魔物は人を食料として襲う。真っ先に倒さなければならない。数は6体、他の魔物も森に潜んでいそうだ。カルはガーランドを構える。
ブリトニーが素早く弓をつがえ、数本の矢を同時に放つ、セシルは水系の魔法で攻撃する。
カルとヨウは前に出て、ガーランドと棒でグールに向かう。
矢が刺さっているグールにカルは向かう、ガーランドを素早く数回突き出す、グールは後ろに倒れる。
ヨウは闘気を込めた棒を突き、払い、打つ、これで2体は動かない。
ブリトニーとセシルは後方から攻撃する、ブリトニーの得意技を放つ、数体のグールに風魔法をのせた矢が突き刺さる、疾風の連矢だ。セシルの広範囲魔法、水流の矢も続く。グール達はかなりのダメージを受ける、すかさずカルとヨウが近付き攻撃をたたみかける。
グールが倒される。森から続けて魔物が現れる。オークの群れだ。槍と小剣で武装していた。
まずブリトニーが疾風の連矢、セシルはファイヤーボールを連射する。オークの群れは10数体いる、半分以上はその攻撃で倒れる。
カルがガーランドを振りかざし、群れに突入する、ヨウも続く。カルとヨウで残りを倒して行った。
カルはまだ森の中に魔物の気配を感じていた。
「皆まだだ、奥に大きな気配を感じる」
「わかった!」
「はい!」
「了解だ!」
カルは気配の方に気を集中させる。巨大な力を感じる。
その他にも気配を感じていた。
カル達は気配のする方に進んで行く。姿が現れる。獅子の頭に山羊の体、尻尾は毒蛇の魔物、キマイラだ。しかし、何かと対峙している。巨大な白馬だった。
キマイラは白馬に炎を吐く、白馬は躱しながらキマイラに突撃する。キマイラがよろける、カルはそこに突入して行った。
キマイラが体制を整える前にガーランドで尻尾の毒蛇を切り落とす。キマイラが苦しみ出す、遠くからブリトニーの弓とセシルの水魔法、ヨウも棒を叩き付ける。
キマイラが吠え、火を吐く。カルは砂の防壁で防ぐ、ヨウは後ろから棒を突く、ブリトニーは弓を射る、セシルも魔法を放つ。全てを受けたキマイラは苦しそうだ。
最後にカルがジャンプし、上空からガーランドを叩きつける。キマイラの獅子の額にガーランドが突き刺さる。
ガァと一度苦しそうにキマイラは吠え、そのまま動かなくなった。
大きな白馬はじっとこちらの様子を伺っていた。その時ガーランドが輝き出す。輝きが大きくなると同時に白馬が人の姿に変わる。少年だ。カル達と歳も変わらないくらいに見える。金髪の美少年だった。服装は白い民族衣装のような物を着ている。
「あれれ、人の姿は久しぶりだな…あ、どうもありがとう。僕はウルスラグナ、ウーリって呼んで」
少年の姿に変わった白馬は、そう名乗る。
「うわっ、お師匠様みたいに変わった!」
カルは驚いて人に変わるサンドラを思い出した。
「君は誰?お師匠様って人に変われるの?」
「あ、僕はカル・エイバース、僕の師匠はドラゴンの王です」
「竜王ってもしかしてサンドラ?え、サンドラの弟子なの?」
「ええっ、お師匠様を知ってるの?」
「はははっ、僕は会ったことあるよ。サンドラが地脈の処置をしてた時にたまたま居合わせてね。もう、随分昔の話だけど…」
「そうだったんですね?あなたは魔物ではないようですが…」
「うん、全然違う!僕は神に作られし聖獣だよ。あんな何処から生まれたのかわからない奴らとは全然違う」
「やはり…あのキマイラは突然現れて人々を襲っていたみたいです」
「ああ、僕がこの森に来たら突然襲って来たんだよ、全く迷惑な話さ」
その時、遠くから何かがカルの方に飛んでくる。カルはガーランドで防ぐ、飛んで来たのは手裏剣のような物だった。
「皆、気をつけて!誰かが狙ってる」
「くそっ、キマイラの次は何だ!?」
ウルスラグナが毒づいた。カルの他の3人は身を低くし、木に隠れながら気配を伺う。カルはウルスラグナを庇いながら身を潜める。
また手裏剣が飛んでくる。今度は数本、しかしギリギリ当たらない。
ウッと声が聞こえた。ブリトニーが腕をやられたらしい。
「大丈夫ですか、ブリトニー?」
「ああ、かすり傷だ問題ない」
ヨウとブリトニーの声が聞こえる。カルは気配のする方に気を集中させる。すると、遠くからものすごいスピードで気配に近づくもうひとつの気配があった。
少し離れた場所で争うような音がする。音が止んだと思った時、人が上から降って来た。黒ずくめの格好にマスクまでつけていた。ヨウが喋り出す。
「こ、これは忍と言う東国の暗殺者です!」
遠くから誰かが近づいて来た。
「よう、また会ったな。こいつが狙ってた奴だ。この前から少し怪しい気配があった」
「クリスさん?」
「うん?どうしたカル、ジョシュに聞いてないか?」
「いえ、手を打つとは言ってましたけど…」
「チッ、あの野郎…」
「ありがとうございました、クリスさん」
「いや、私もウバクの民だ」
「えっ?」
「それでは、これで」
クリスは立ち去って行った。
「クリスさんもウバクだったのか…僕達はとんだ勘違いをしてたみたいだね」
「そうね…」
「ブリトニー、大丈夫ですか?」
「ああ、毒は塗ってなかったらしい」
ヨウが薬を傷に塗っている。セシルが回復魔法を使い傷は治って行った。
ウルスラグナはカルの方を見つめ話す。
「今ウバクって言ったのか?」
「は、はい…」
「ははは、失われた文明がまだ生きてるなんて面白いな、決めた、僕は君達と一緒に行く!」
「は、はい?」
「大丈夫!僕は聖獣さ、ほら」
ウルスラグナは馬の姿に戻る。
《僕は勝利を信じる者に味方する、勝利を信じて。よろしくカル》
白馬の姿のウルスラグナが語りかけた。カルは腹をくくり、ウルスラグナを仲間にする事に決めた。
「ああ、わかった、よろしくウーリ」
ウーリは大きく嘶いた。
「まあよろしく頼むね、ウーリ」
「ウーリ、よろしくお願いします」
「さすが聖獣、素晴らしい体躯だ。よろしく頼むウーリ」
そう言って3人はウーリの頭や胴を撫でる。
《ふふふ、くすぐったいよ!》
3人は笑顔でウーリを撫でていた。
カルは襲って来た忍の亡骸を見つめ、まだ始まったばかりだと思いながら言う。
「よし、キスクに戻ろう!」
まだ日は高かった。カルは少し考えていた、ウーリは馬車を引いてくれるかな…




