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セシルの弟




 日が沈みかけた夕暮れにカル達はキスクの街に着いた。

暗くなる前に家に帰る為か、人通りはそれなりにあった。


 4人はヨウの家に帰って来た。久しぶりのような感じがする。でも何となく懐かしさのようなものを感じていた。


 歩き詰めで疲れていたのか、食事を済ませると皆すぐに床についた。



 翌朝、4人はギルドに向かう。扉を開けるといつもの受付嬢が笑顔を向けている。


「おはようございます、依頼の砂漠の涙をお持ちしました」

「えっ?依頼達成されたのですか?」


 受付嬢はびっくりしたように、受け取った砂漠の涙をまじまじと見つめている。


「ちょっとお待ちください!」


 そう言って、受付嬢は依頼の用紙を事務所から持って来た。


「あの、何か問題でも?」

「いえ、そうでは無くて、実はこの依頼を達成されたカルさん達は特典が付いて、冒険者のレベルが上がりました!」

「えっ?特典ですか?」

「はい、しかも今回はダブルアップで一挙にBランクになります。おめでとうございます!」

「は、はあ…」

「それではこちらが報酬の金貨200枚と、特別ボーナスで後100枚で合計300枚です」

「そんなに貰っていいんですか?」

「はい、それ程難しい依頼を達成されたのです。自信を持ってください」

「わかりました、ありがとうございます」


 カルはそんなやり取りをし、3人に伝えた。



「えっ、すごいね!」

「これだけ貰えればしばらくは何の問題も有りませんね」

「そうだな、これだけ貰えるなら次も頑張って仕事をするぞ」


 カルは皆に提案した。


「あの、これでセシルのお母さんに何か出産祝いのような物をあげたいんだけど…とうかな?」

「カル!いいの?」

「そうですね、それは素敵だと思います」

「ああ、私も賛成だ」

「もちろん全部使う訳じゃ無いけど、何か豪華な贈り物をプレゼントしたいね」


 皆も賛成し、早速買い物に行く事になった。品揃えのいい商館で赤ちゃん用の物を探す。


「セシル、どんな物がいいだろう?」

「うーん、そうね、定番は服とかかな?」

「男の子と女の子、まだわからないですよね…」

「そうだな、それだと違った場合はかわいそうな気がするぞ」


  4人は考えて、赤ちゃん用の寝具という事になった。


「少し高級なものを買ってあげたいね」

「そうですね、せっかくですから」

「寝心地が良いものならば健康に育つだろう」

「みんな、ありがとう!」


 4人で色々選び、高級な絹製の寝具を買うことにした。それでも金貨数枚で足りてしまったが、セシルが十分だと言ってそれを贈る事にした。


「カル、ヨウ、ブリトニー、本当にありがとう」

「大丈夫、僕らは今家族みたいなものだしね」

「そうです、私達に弟か妹が増えるような感じです」

「ああ、私も同じ気持ちだ」


 買ったプレゼントを手に持ち、カル達はゲートでキンクウに向かう。


 魔法陣の中に4人が入り、光と共に移動する。気がつくとキンクウの村の入り口に着いていた。


「それにしても、このゲートの魔法は便利ですね」

「本当だね、僕もそう思うよ」

「今度はヨウの故郷にも行ける様に頼んでもらえば?」

「私の里も頼みたいぞ」


 そんな会話をしながら、村の中に入っていった。知り合いの村人に挨拶をしながらセシルの家に向かう。数分で家に着いた。カルは自分の家に帰ってから直ぐに行くと伝え、帰って行った。


「ただいま、母さん!」

………


「あれ、誰もいないな?セシルの家かな」


 カルは家を出て、隣のセシルの家に向かう。すると、中がやけに騒がしいのを感じた。


「今日は、お邪魔しまっ…て、赤ちゃんが生まれてるの?」


  カレンもアンナのそばで生まれたばかりの赤子をあやしていた。


「カル、お帰りなさい。実は一昨日生まれたばかりなの」

「母さん、それでセシルの家に」

「どう、可愛い男の子よ」


 カレンは愛おしそうに赤ちゃんを見つめていた。


「シンさん、アンナおばさん、おめでとうございます」

「カル坊、ありがとうよ、いいものもらっちまったなぁ」

「カルちゃん、ありがとう。この子を見てあげて」

「はい、かわいいですね」


 生まれたばかりの赤ちゃんは思った以上に小さく感じられた。


「シンさん名前は?」

「ああ、この子はロブだ、ロブ・グレース」

「ロブ、いい名前ですね!」

「そうだろう?ははっ」


 セシル達はずっと釘付けになってロブを見ていた。かわいいと言う声が何度も聞こえてくる。


「じゃあヨウとブリトニーはうちに泊まってもらおう、いいよね母さん?」

「ええ、もちろんよ」

「それじゃ、荷物は僕が持って行くよ」

「カル、ありがとうございます」

「カル、すまない」

「じゃあ、落ち着いたらお師匠様のところへ行くけど皆も行くかな?」

「もちろん行くわ!」

「ええ、行かせて頂きます」

「私ももちろん行くぞ」

「わかった、じゃあしばらくしたら行こう」


 カルは荷物を自分の家に運び、落ち着いたところでサンドラの元へ向かう。


 いつもどおり、祠から竜の口の地下に向かう。中に着くと、グリムが相変わらず無表情に立っていた。


「グリムさん、今日は」

「カル、セシル、ヨウ、ブリトニー…確認した。久しぶりだなカル」

「グリムさんも元気でしたか?」

「ああ、変わりない」


  挨拶を交わし、扉から巨大な部屋に入る。


「お師匠様、ステラさんこんにちは」


  サンドラとステラが答える。


「おお、我が弟子よ!よく来たな」

「カルちゃん、元気してた?、ああセシルちゃん達も一緒ね、こんにちは」


 3人はそれぞれ挨拶を済ませる。


 カルはサンドラにウバクの事を話し、目にした事を伝えた。


「そうか、カルよお前も色々な経験をするものじゃな、運命と言う物かもしれんが」

「うん、カルちゃんはちょっと人とは違うわね」

「いえ、僕は竜王の弟子です!それが僕です」

「そう言えば食す者とやらはどうなっておる?」

「いえ、まだ接触すらしてません」

「ふむ、どうやら東の魔王を名乗る輩も関係してあるやもしれんの」

「魔族ですか?」

「そうじゃ、魔石を集めていたのも何か関係あるようじゃ」

「魔石を何に使うつもりなのでしょうか…?」

「確かな事は言えないが、地脈の流れを止める、そして魔力を魔石によって補う、そんな使い方が考えられるのう。他にもありそうじゃがまだ調査中じゃ」

「わかりました、こちらも何かわかりましたら連絡します」

「うむ、地脈が絡む以上、我も放っては置けぬ。カルよ、心して取り掛かるのじゃぞ」

「はい、ありがとうございます」


 カルが サンドラと会話している間、ステラは他の3人と話していた。


「えっ、セシルちゃんに弟が出来たの?良かったわね」


 ステラはいつもの太陽のような笑顔を見せる。


「はい、ありがとうございます」

「本当に可愛くて、いい子でした」

「無垢で純粋故に本当に可愛く感じました」


 ステラは少し真面目な表情で話す。


「弟の為にも、皆おかしな輩に好きにさせちゃダメよ」

「はい!」

「その通りです」

「私もそのつもりだ」


  ステラはまた笑顔に戻り話す。


「皆強くなったわね、お姉さんも安心よ」

「そう言えばステラさんは私達のお姉さんみたいなものですね?」

「はい、師匠でもあり姉のようでもあります」

「私も姉のように感じている」

「あら、可愛い妹が3人も出来ちゃったわ、ね、お嬢」


 サンドラはステラの方を向いて答える。


「うむ、少し癖のある姉かのう?」

「何よ癖があるって?」

「そのままじゃが、何か?」

「そこは美しく強いとかなんかあるでしょう?」

「おお、そうじゃ!酒が物凄く強い」

「お嬢、そうじゃなくて!」

「他には、酔うとタチが悪いかのう」

「もう、お嬢!」


  2人のやり取りを見て3人は笑っていた。


 カルはその様子を見てすごく温かな気持ちになった。この後何が起ころうとも、この場所を守ってみせる、そう心に誓った…



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