ウバクが滅んだ真相
砂漠の蜃気楼の城を離れ、4人は迷いの森のブリトニーの里に戻って来た。ブリトニーの家の広間に4人は集まっていた。砂漠の涙を大きなテーブルに置き、カル達はその周りに座っている。
「カルはウバクの過去を見てきたの?」
セシルがカルに聞く。カルは目を閉じ、少し考えてから話し始める。
「うん、僕は見て来たよ。ウバクの科学や人々の生活、そしてどうして滅んだのか…」
「そう言えば、光の巨人は自ら滅んだって言ってだけど…」
「うん、ウバクの生活はとても素晴らしいものだった、僕達がいる今の時代よりも、遥かに快適だっただろうね。でも快適な生活を支えるエネルギーが徐々に枯渇してしまった、と言うより、エネルギーを必要以上に使ってしまったんだ…」
「どうしてそんなにエネルギーが必要だったのでしょうか?私達は今でもそれなりに快適に生活していると思うのですが…?」
ヨウがカルに聞く。カルはヨウの方を見て答える。
「うん、例えば火を起こし、そこに皆が集まればひとつの薪で済むけど、1人が1箇所ずつ薪を使ったとしたら薪はそれだけ使わないといけないよね?薪はすぐに消えてしまう、そしてまた薪を入れる…そうやって薪を使い続けると薪はすぐに無くなってしまうと思わないかな?」
ヨウ少し上目で考えながら答える。
「確かに、そう考えると薪は火を起こすエネルギーですから、すぐに無くなってしまいますね」
「そうやって快適を求める余り使い方を間違えてしまったんだ。僕は火を使わずにお湯が出るところとか、馬や牛を使わずに移動する車なんかも見た。そして空飛ぶ船も見たよ」
ブリトニーが話す。
「まるで想像もつかないが、やはり快適な暮らしには代償がつくのだろうか?」
カルは答える。
「そうだね、今日の砂漠は実は巨大なエネルギーを作る場所だったんだ。それがある時事故により爆発して使えなくなってしまった。今までのエネルギーが危険だとわかり使わなくなった、それから新しいエネルギーを研究し、とうとう使えるようになったんだ」
セシルが思い出したように言う。
「それが地脈のエネルギー…?」
「そう、これは当時のウバクの人々にとって枯渇していたエネルギーの代わりになるもので、安全だと信じていたんだ。ところが、徐々に農作物は育たない、気候が不安定になる、疫病が起こる、などの悪影響が現れたんだ」
ヨウはカルに聞く。
「地脈のエネルギーが危険だと思わなかったのですか?」
「うん、当時の人々はそれが地脈のエネルギーを使った事が原因だと思わなかったんだ…でも気がついた時にはもう遅く、突然火山の噴火や大地震、そして巨大な津波により一瞬にして文明が滅んでしまった。あらゆる場所でそれが起こったらどうだろう?」
「…」
「…」
「…」
3人は想像もつかないのか黙ってしまった。
カルは続ける。
「それでもほんのひと握りの人々は生き残る事が出来たんだ。もちろん科学も一部だけ残った。それがウバクの民に伝わっているものだと思う」
ヨウが立ち上がってカルに強い口調で話す。
「そんな危険な技術をカルはどうするつもりなのですか?もし万が一の事態が起こったりしたら…」
カルはヨウを見て優しく答える。
「僕は何もしないと思う。多分ウバクの民はもう二度と繰り返さない為に技術を守ろうとしてるんだと思う。僕も絶対に科学を広めようとはしないよ」
「それを聞いて安心しました」
「そうだよね、そんな危険なものを世に広めるのは間違っているような気がしますがする」
「うむ、私も今のままでいいと思うぞ」
3人がホッとしたように話す。カルは3人に伝える。
「もし僕が間違いを侵すなら、皆で僕を止めて欲しい。僕はたまたまそんな感じになってしまったけど、その力を悪用しないし、誰にもさせない!」
「わかってるわ、カルは私がいないとダメなんだから」
「私もカルを信用してますが、間違いを侵すなら絶対に止めます」
「ああ、その時はこの身に代えてもお前を止めよう」
「ありがとう、みんな」
それぞれがカルの考えに納得した。明日はキスクに戻る為早めに床につく。
… 翌日、
カル達はダークエルフの里を出発し、キスクの街に向かう。カルは街に着いたらサンドラに報告すると伝えた。
とにかく街に戻り、ギルドに報告する事がまずやるべき事だった。
歩きながらカルは考えていた。僕達の動向は食す者に既に知られているのか、食す者はその技術を何に使うつもりなのか、軍事利用…
そんな事を漠然と考えていた。
「何ボーっとしてるのよ」
セシルがカルに聞いてきた。
「いや、ちょっと考え事を…」
「ふふ、そう言えばキンクウにいた頃もいつもボーっと空想に浸っていたよね?」
「あ、うん、否定はしないけど」
「なんだか思い出しちゃったな」
「そう言えばアンナおばさんそろそろ…」
「そうだよ、私の兄弟が生まれてるかも知れない」
「そうだね、一緒にお師匠様のところに行こうか?」
ヨウとブリトニーも話に加わってくる。
「私もセシルの兄弟を見たいです」
「ああ、私も見たいぞ」
「うん、じゃあ皆で行こう!」
「そうだね、僕達は家族みたいなものだし」
4人は一路キスクを目指す。夏の日は長く、まだ日は沈みそうに無かった。カルは砂漠の暑さを経験したせいか、少し涼しいと思いながら歩き続けた…




