カルと秘密の部屋
翌日カル達はドワーフの村のロランを訪ねて行った。ウバク神文明の遺跡から見つけた、オリハルコンも持っていく。この金属は加工が出来るのかも知りたかった。
ほぼ1日歩き続け、ドワーフの村に辿り着いた。
「ロランさんこんにちわ」
「おお、カル君達良く来てくれた、頼まれまた物は出来上がっているよ」
「ありがとうございます」
カルはヨウに出来上がった防具を渡す。セシルのミスリルの繊維で作られた服に似ているが、もっと細かく編まれている。そしてより丈夫そうに見える。言うなれば、ミスリル繊維のインナーと言ったところだ。そして頭に着けるハチマキの様なものも一緒にあった。
「これは素晴らしいですね、ちょっと身に着けてみたいです」
「ああ、試着はこちらで」
ロランは試着室に案内した。しばらくして防具を身につけたヨウが出て来た。
「着心地はどうですか?」
「これは本当に素晴らしいです、軽くて丈夫それに動きやすい!」
「ハチマキもすごく似合ってるよ」
「ああ、私も何か欲しいぞ」
「良かった、ヨウが喜んでくれて」
セシルとブリトニーはヨウと一緒に話している。可愛いとかそんな声が聞こえて来る。カルは箱の中の金属をロランに見せた。
「ロランさんこれを見て欲しいのです」
「うーむ、こんな金属は見た事がない、いったいこの金属は何かな?」
「オリハルコンと呼ばれるものらしいのですが…」
「何?お、オリハルコンじゃと?」
「ご存知ですか?」
「ああ、じゃがあれは伝承の中だけのものだったのではなかったか?」
「はい、ある経緯で僕達が手に入れました。これは武器や防具に使えますか?」
「うーむ、何とも言えんが、この金属で作った剣は切れない物は無いと聞いた事がある。おそらくじゃが、加工は可能じゃろう」
「では最高の武器と防具を作っていただけますか?」
「ああ、これを断るなんて職人としてあり得んわい。任せておけ、この金属ででき得る最高の物を作ってやるわい」
「ではよろしくお願いします」
「しかし、時間をくれないかのう?2月、いや3月は欲しいぞ、よいか?」
「もちろん、お任せします」
「よし、今日はここに泊まって行くといい」
「ありがとうございます、それではお言葉に甘えさせてもらいます」
そうしてカル達はその晩ドワーフの村で過ごした。翌朝、カル達はロランに別れを告げ、キスクに帰って行く。
夕方前にはキスクに戻って来た。カルはギルドに向かい、ジョシュに会いに行った。残された3人は家で待っている事になった。
カルはギルド併設の酒場にジョシュを探した。カウンターのそばの席で座っているのを見つけた。大柄な人と一緒に座っている。
「ジョシュさんこんにちわ、実は父のことで話があります」
「カル、スレイの手紙を読んだか?」
「はい、話とはその件です」
「…そうか、じゃあ外に出るとするか、ああ、こっちのでかいのはアラヤって言う、仲間だ」
「初めましてアラヤさん、カル・エイバースです」
「…」
「そいつは無口でな、余り話さん。しかし腕は立つぞ」
カルはジョシュとアラヤについて行く。酒場を出てしばらく歩き、路地裏の様な場所に出た。それからまたしばらく歩き、小さな建物の裏に来た。周りに人の気配は感じられない。
建物の裏口から中に入った。扉を開けると地下に階段がある。カルはジョシュとアラヤの後に続いて階段を降りて行った。下にかなり続いている。
やがて大きな扉の前に出た。ジョシュはカルを呼ぶ。
「カル、例の鍵は持ってきたか?」
「はい、ここにあります」
カルはズボンのポケットから鍵を取り出した。
「扉を開けてみろ」
「はい」
カルは扉に鍵を差し込み、鍵を回す。ガチャと音がして、鍵が開いた。扉を開ける
中に入った。
その中には考えられないほどの広さがあった。普通の部屋というより、図書館のように本がたくさん並べられている。中には誰もいなかったが、部屋は綺麗に掃除されていた。
「ジョシュさん、ここはいったい何の部屋なのですか?」
突然ジョシュとアラヤがカルの前に膝まづき、カルに首を垂れる。
「え、ジョシュさんアラヤさんこれは…」
「ははっ、カル様、我々はウバクの生き残りの子孫です」
「ええっ、まだ生き残っていたのですか?」
「はっ、ずっと光の巨人のお血筋のカル様を待っておりました、我々はウバクの民という組織を作っており、その血を大切に連綿と繋げております」
「ウバクの民?」
「はい、そしてその組織の頂点にいたのがお父上のスレイ様です」
「え、父さんが…」
「スレイ様はその正体を我々を狙う組織に見つけられてしまいました」
「でも父さんは強かったのでは?」
「はい、ですがその組織もかなりの腕の暗殺者を使って来ました。あれは人ならざる者でした…」
「人ならざる者って、エルフとかな種族ですか?」
「いえ、あれはドラゴンのような強さを持った者と考えられます」
「ドラゴンの暗殺者だって?」
「はっ、おそらく…」
カルは父親の仇がドラゴンと知って複雑な気持ちになった。
「それで何故僕達は狙われているのですか?」
「我々には失われた技術があるのです」
「それはオリハルコンの事?」
「いえ、科学と呼んでおります」
「科学?」
「はい、魔力に頼らなくても色々な事が出来る技術の事です」
「魔力に頼らなくても…」
「例えば、炎の魔法を一国の兵士が全員使えるとしたらどう思われますか?」
「それは、あり得ないと…」
「我々にはそれを提供出来る技術があるのです」
「!?」
「そればかりか、遠くの者と話せたり、空を飛べる技術もあります。特別な素質が無くても色々な事が出来てしまうとなると、その力はどうなると思われますか?」
「誰もが欲しいものかな…」
「はい、それが国の権力を握る者だとしたらどのように使うと思われますか?」
「まさか、軍事利用?」
「はい、その通りです。その力で世界を征服することが出来るかも知れません」
「世界を征服…」
「ですから我々は密かにずっと持ち続けていたのです」
「しかしそれを知ってしまった者がいると?」
「はい、その者どもは食す者と名乗っております」
「食す者?」
「はい、全てを喰らい尽くすという意味らしいのです」
「世界も技術も喰らい尽くす…食す者…か」
「カル様、我々の主になってもらうしか有りません。でないと私があなたを手にかけなくてはなりません」
「…わかりました、ですが僕は冒険者のままでいたい、それで構いませんか?」
「はい、あなたの仲間にこの事は?」
「全てを伝えます」
「しかし…」
「何かが起きた場合は僕が責任をとる、例えそれが死であっても」
「そこまでの覚悟がおありなんですね?」
「はい、そのつもりです」
「わかりました」
「ですが、その科学とはどこで目に出来るのですか?」
「それはまた私に申し付け下さい、私はいつもギルドの酒場におりますので」
「わかりました、ここへは余り来ない方がいいですか?」
「私どもと一緒でしたら大丈夫です」
「はい、それでは必要な時はジョシュさんに話しかけます」
「それで構いません」
カルは地下の部屋を出てジョシュ達に別れを告げ、ヨウの家に戻った。そこで聞いた全てを話す。
「科学?」
「うん、ウバクの失われた技術を科学って呼ぶらしい」
「科学ですか、ですが、そんなものがあるってだけで狙われるのは当然のような気がします」
「ウバクの民か…」
「そして僕の父さんを殺したのは、どうやらドラゴンらしいんだ」
「え、本当なの?」
「ドラゴン…私は竜の巫女です。信じたくはありませんが…」
「うむ、確かに腕の立つ冒険者であっても、相手がドラゴンならば立ち向かえないだろう」
「とにかく今はお師匠様に話しに行こうと思う」
「そうだね、わかった」
「そうですね」
「カル、お師匠様とは?」
「ああ、ブリトニーには話してなかったね。僕は竜王の弟子なんだ」
「竜王とは、まさかゴールドドラゴンか?」
「うん、その通りよく知っていたね」
「お前は本当にどうなっているのだ?」
「私も散々そう思いました」
「うん、まあ慣れるか?」
「ちょっと行って来るね」
そう言ってカルは外に出ると、ドラゴンウィングと囁き、空に向かって飛んで行った。
カルは父さんの仇をお師匠様に聞いた後、自分はどうするのかを考えていた。お師匠様やステラさんならどうするのかを考えてみた。しかし、今は答えが出ない。とにかく急ごう、お師匠様の元に、速く、速く…




