新たな仲間
ダークエエルフの里を離れ、カル達はキスクの街に移動することとなった。ブリトニーを冒険者として登録する為である。その後にウバク神文明の遺跡に向かう予定を立てた。
キスクの街には数日で到着した。ダークエルフのブリトニーには無用ないざこざを避ける為、耳まで隠れる帽子のようなものを被ってもらった。
「私は誇り高きダークエルフ族の族長だと言うのに、何だこの帽子は?まったく…」
「まあまあ、少し我慢してくれればいいんだ、ごめんよブリトニー」
「まあ、カルがそう言うなら仕方ない…」
ブリトニーは少し頬を赤らめ、照れたように俯いてそう言った。なんだかしおらしいのだが…。
「あれ、ブリトニーなんかカルに対して素直だね…?」
「はい、何かあったのでしょうか?」
ちょっと2人も訝しむ程、カルに従順な様子だった。
何もないよ、ちょっとキスしたけど…とカルは思ったが、何事も無いようにギルドに入って行く。
受付嬢にいつものように声をかける。
「こんにちは、冒険者の登録をお願いしたいのですが」
「ああ、カルさん、依頼の進捗はどうですか?今日は新しい冒険者の登録ですね、はいこちらに記入お願い」
「ああ、遺跡の調査は結構進んではあるのですが、もう少しお待ちください」
「よろしくお願いしますね」
カルは渡された紙をブリトニーに手渡し、記入するように頼む。全て記入が終わり、カルが受付に持っていく。
…ブリトニーの本名はブリトニー・エレシア・アレンダート・エルフィン、長い…。え、ブリトニーは17歳、ヨウよりも若かったなんて…。
受付に持って行った。
「それではまた明日来て下さい。よろしく」
「はい、わかりました」
こうして4人は一度ヨウの家に帰った。家に人が増えたが、今のところは問題なさそうだった。カル達はブリトニーに街を案内し、今日は東国の料理屋で食事をする事になった。
店に入り、少しブリトニーに説明する。
「ここはヨウの母国の料理を出してくれる店なんだけど、ちょっと東国の食文化は変わっていて魚を生で食べたりするんだ」
「本当か?大丈夫なのか?」
「ええ、セシルもカルも気に入ってくれました、ブリトニーも気に入ってくれると嬉しいです」
「うん、すごく美味しいよ」
「私もすごく好きになっちゃった」
「よし、それならば私も覚悟を決めて食べよう!」
何やら気合いが入ったらしい。カルがみんなに話しかける。
「ブリトニー、2人に年齢を言ってもいいかい?」
「別に問題ないが、私から伝える。私の本名はブリトニー・エレシア・アレンダート・エルフィンだ。年は17歳、今後もよろしく頼む」
「ええ、ブリトニー私よりも年下だったのですか?びっくりです」
「そっか、私達とあまり変わらないんだね」
ヨウとカルが同じ歳で15歳、ヨウは18歳だとブリトニーに伝えた。カルは若くして族長っていう立場になったブリトニーが大人っぽく見えるのは仕方ないと説明した。
「なんだかもっと親近感がわいたな、ブリトニーこれからもよろしくね」
「はい、私も素敵な妹が増えたみたいで嬉しいです、よろしくお願いします」
「ああ、私も力になれるよう最善を尽くそう」
そう話しているうちに、テーブルに寿司と刺身、後は魚の出汁のきいたスープが届く。最初は面食らったブリトニーだったが、一度口にした瞬間、止まらなくなる程の勢いで食べ始めた。
「生の魚がこれほど美味いとは思わなかったぞ、これは素晴らしいな!」
「そう言ってもらえて嬉しいです!」
「本当に美味しいね」
「うん、美味い」
4人はお腹いっぱい東国の料理を楽しんだ。
ヨウの家に帰った4人は明日以降の行動について話し合う。
「カルがウバクの王族の子孫っていうことは、やはりあの遺跡に行くと何かあるという事なのでしょうか?」
「うん、とにかく行って確かめるしかないだろうな」
「カルにしかできない事なんでしょう、やっぱり」
「私はカルに何があろうと信じているぞ」
そして翌日、4人はギルドに出かけた。ギルドでブリトニーの冒険者カードを受け取り、外に出ようとした時声をかけられた。ジョシュ・ハンネマンだった。
「ようカル、頑張っているみたいだな」
「あ、ジョシュさんこんにちは」
「ああ、ちょっといいかい?」
「は、はい」
カルはブリトニーにカードを渡し、ジョシュに呼ばれた事を伝えた。カルはジョシュについて行く。ギルド併設の酒場の席でジョシュに伝えられた。
「お前さんに渡したいものがあってな」
「渡したいもの、ですか?」
「ああ、実はお前の家にスレイを呼びに行ったのは俺なんだ…あれが最後になっちまうなんて考えてなかったんだがな」
「え?ジョシュさんがあの日うちに来た人だったんですか?」
「ああ、小さかったお前もチラッと見えたよ」
「はい、ですがあの時は…そうか目ですね?」
「あの時はまだ両目があったんだったな」
「では父さんと一緒に行ったときに…?」
「そうだ、だがその話はまた後でしよう。今はお前に渡すものがある」
そう言ってカルに手紙を渡す。
「これは?」
「ああ、もし息子が冒険者になったら渡してくれって頼まれた。少し遅れちまって悪かったがな」
「いえ、こうして今もらえました」
「うん、用はそれだけなんだが、カルよ余り無理するなよ」
「はい、大丈夫です」
「じゃあまたな、仲間が待ってるんだろう?行ってやんな」
「はい、ジョシュさんまたゆっくりお話しましょう!」
そう言ってカルはみんなのもとに走って行った。
「ははっ、スレイあいつは間違いなくお前の子だな、過酷な運命も背負っちまったがな…いつかあいつに全てを伝えなければならないな…」
ジョシュは1人囁いた…。
カルは他の3人と合流した。
「ジョシュさんなんだって?」
セシルが聞いてくる。カルは歩きながら答えた。
「うん、父さんの手紙をくれたんだ」
「スレイおじさんの、そっか…」
「カルのお父様の手紙ですか?」
「ああ、うん、なんか重いなこれ」
「カル、開いてみるべきでは?」
「うん、でも今は依頼を終わらせよう」
「大丈夫なの?」
「ああ、後でゆっくり読もう」
カルは達は遺跡に向かって歩いて行った。カルの心の中では直ぐにでも手紙を読みたかった。でも読んでしまう事で、辛い思いをする可能性があると考えた。今は色々起こり過ぎている…とにかく遺跡に向かおう、カルは力強く歩き出した…




