友を救う為に!
翌朝、カル達は出発の準備をしている。早ければ今日の夕方頃には湖に辿りつけるだろう。いそいそと準備を整えて出発する。
「ブリトニーさん大変だったら言って下さい、僕達は足が速いので」
「はい、ありがとうございます」
「それじゃ、みんな湖を目指して行こう!」
「おー!」
「はい」
4人で歩き始める。夏の始まりの6月だが、森の中は涼しかった。辺りには人の気配は感じられない。時折野鳥の鳴き声や羽ばたく音が聞こえるくらいだった。
「静かなところだね、何も起こらなければいい場所かもしれないな」
「ええ、本当」
「ここには貴重な植物もありそうです。今度は薬草を取りに来たいですね」
「…」
「ブリトニーさん大丈夫ですか?疲れたら言って下さい」
「は、はい大丈夫です」
2時間程歩き続けた。カル達は休憩をする事にする。水分を補給し、軽く食べ物を口にする。辺りの気配を気の同調で調べてみた。遠くに気配を感じたが、問題無さそうだった。カルはブリトニーに話しかけた。
「ブリトニーさん、嫌な話かもしれませんが、あなたを奴隷にしたのはどんな奴ですか?」
「は、はい、湖よりも更に南に行った街の領主です。名前はマズルと言います」
「街の領主が何故奴隷を?」
「私達を売り物にして私腹を肥やしていました」
「えーっ、人身売買は完全に違法よ!」
「ええ、許せませんね」
「私達は碌に食事も与えられず牢のような場所に監禁されていました。私は密かに鍵を奪って牢を抜け出して来たのです」
「そうでしたか、ギルドに報告しないといけないな」
「うん、カルひとっ飛び行って来れば?」
「まあこの依頼が終わってからでも大丈夫だろう」
「そうですね、ここまで来たのですからやり遂げてからギルドに報告しましょう」
カル達は再び歩きはじめる。途中ブリトニーが苦しそうにしていたので様子を見ると、どうやら病気を持っているらしい。心配かけまいと黙っていたのだが、長い間の悪い環境が体に悪影響を及ぼし、病気になったとの事だった。ヨウが薬を渡す。
「この薬を飲めば良くなると思います。直ぐには効かないかもしれませんが、飲んでいれば回復します」
「こんな私に、薬まで下さるなんて…感謝の言葉もありません」
「ヨウの薬はよく効くって評判だよ、直ぐ良くなると思う」
「そう、元気になって私達の街に行こう、ブリトニーさん」
「ありがとう、ありがとうございます」
休みながら歩きを繰り返しもうすぐ辿り着きそうなところで日が暮れた。今日はこの辺で野宿する事にした。
「ヨウとセシルは薪の準備をお願い、僕は料理するね」
「はい」
「わかりました」
カルは調達したキノコや野草をナイフで刻み、鍋の中に入れている。ブリトニーがカルに話しかける。
「カルさんは何故それほど人に優しく出来るのですか?」
「え?普通だけど…強いて言うなら、僕も優しくされたいからかな?」
「人に優しくされたい…」
「うん、僕は自分が優しく接すれば他の人も優しく接してくるって思うんだ。例えそうじゃ無くても僕は損する訳じゃないしね」
「私は人に優しくされた事などありませんでした…ですからカルさん達はとても不思議、何か企んでるのかと考えてしまいます。これも、私がそういう中で生きて来た弊害なのでしょう…」
「僕はずっと強くなりたかった…友達や僕の村を守るためにね。ある事をきっかけに僕はすごく強くなれた。その分優しくなれたのかもしれない。ある人に言われたんだ、強さには責任が伴うってね」
「責任ですか?」
「うん、力を持った者は弱い者を守る責任がある、だからやりたくない事も時にはやらなくちゃいけないって、そう教わったんだ」
「…」
森の中からセシルとヨウが薪をたくさん持って来た。薪を並べるとセシルが魔法で火を付ける。直ぐに火は薪に燃え広がった。
「セシル火付けるの上手くなったね」
「練習してるからね!」
「最初は辺りを全て燃やすくらいの火力だったもんな」
「うるさいわね、カルのバカ!ドラオタ!」
そんな会話を聞いていたブリトニーが微笑んでいる
食事を終えみんなが寝床の準備を始める。カルは見張りを最初にすると伝え焚き火の側に座っている。辺りに闘気を同調させ、様子を見る。ある事に気づいた、しかしその事を誰にも言わなかった。
やがてみんなが眠りについた。カルは火の番をしながら辺りを警戒している。しばらくするとブリトニーが眠れないのかカルの隣に座った。
「ブリトニーさん、眠れないの?」
「はい、何故か目が冴えてしまって」
「そう、眠くなるまで付き合うよ」
「はい、ありがとうございます」
「ブリトニーさん、聞いてもいい?」
「はい、何でしょうか?」
「どうして僕達を試すような事をしたの?」
「え、何を?」
「うん、僕わかってるんだ。遠くに10人位ずっと僕達について来てる。でも襲って来ない、ブリトニーさんを守ろうとしてるよね?」
「…」
「あなたは何者なの?奴隷も嘘でしょ?」
「ふふふ、なんだ解ってたの?」
「多分、僕達の調査の原因もブリトニーさんだよね?」
「ふぅーっ、そこまでバレてたのね」
「でも僕はあなたが悪人には見えないんだ、何か理由があるんじゃないかって思ってる。良ければ教えてくれないかな?」
「人が、人が知ったような口を叩くな!」
ブリトニーは急に語気を荒める。
「我らダークエルフは、常に人に忌み嫌われ、奴隷にされ、時には家畜の様な扱いを受けて来た。その気持ちがお前達にわかるか!」
「…」
「ずっと憎しみしか知らない、それが我らの一族だ。優しさ何てまやかしだ、我らは人を敵と見なす!」
「僕はあなたを奴隷だなんて思っていない!それにセシルもヨウも、あなたを本気で助けたいと思っている。人が全てあなたを敵だなんて思ってない!」
「何!?」
「あなたがあなたを蔑んでるから憎しみが生まれるんだ!僕は絶対的な存在の側にずっと居た。その人達から見れば僕達はほんのちっぽけな存在だ。でもその人達は僕等を蔑んだりしなかった、むしろ愛してくれていた。だから僕は自分を蔑んだりしない、その人達に失礼にあたるからだ」
「き、貴様!」
「こんな事を繰り返していたら、いずれ討伐隊が編成される。そうすればあなた達の一族も無事では済まない、それでもいいと思ってるのか?」
「ああ、我らは人と戦い死んでも本望だ」
「そんなのは僕が絶大許さない!僕の友達が死んで行くのを僕は黙って見過ごせない!」
「友達だと?」
「うん、僕はブリトニーさんと一緒にいて、あなたの悲しそうで、淋しそうな目を見て絶対に守らなきゃならないって思った。僕はその為なら本気で戦う」
「お、お前は馬鹿なのか?これからお前を襲おうとしているのだぞ、待機している者は腕も立つ、お前達子供に何が出来る?」
「それってこの人達?」
ヨウとセシルが密かに全員を捕まえていた。セシルが飛んで空から麻痺の魔法を使い、ヨウは陰から闘気で相手を気絶させて捕まえた。
「馬鹿な、そんなはずは無い…」
「僕達は強いみたいです、ブリトニーさん」
ブリトニーはがっくりと膝を着いた。カルが優しく声をかける。
「ブリトニーさん達を奴隷にしたりしているのは、領主のマズルって言うのは本当なのですか?」
「…ああ、奴等は我らを家畜としか見ていない、しかし我らは何も出来なかった…こうして仲間を助け、仲間を増やし、組織して対抗するしか無いじゃないか…」
「わかりました、領主のマズルを調べてみます。だからブリトニーさん、絶対に大人しくしていて下さい、お願いします、僕はあなたを捕まえたりしません」
ヨウとセシルは捕まえたダークエルフ達を解放した。事情を説明すると、信じられないという顔を皆がしている。
カルは笑顔でブリトニーに話す。
「僕は絶対にあなたを守ります、あなた達の仲間も必ず助けると約束します、待ってて下さい」
「ブリトニーさん、カルはああ言ったら必ずやります。私の村も救ったのはカルです。待ってて」
「手荒な真似をしてすみませんでした、私達を信じて待っていて下さい」
「本気で、本気で言っているのか?お前達…」
「嘘でこんな事をしません、命かかってますから」
「ああっ…お前達を殺そうとした私を、本気で助けると言うのかぁ…うううっ、うわぁっ…」
ブリトニーは泣きじゃくっている、まるで子供のように周りも気にせず泣いている。カルはブリトニーの肩にそっと手を置いて語りかける。
「ブリトニーさん待っていて下さい、僕達が帰ってきたらまた笑顔で話しましょう」
セシルとヨウは微笑みながら見ていた。
「ヨウ、カルがあんな奴でごめん、大変な事になっちゃうね」
「いえ、私も奴隷なんて絶対に許せませんから、戦います!」
「よし、それじゃ行こう!」
カル達はその場を去って行った。恐らく大変な状況になるだろう。しかしカルの目は自信に溢れていた。苦しんでいる人を助ける事ば間違っていないと思うからだ。カルはガーランドによろしく頼むと心の中で念じる。答えるようにガーランドは光を発した…




