ダークエルフとの出会い
冒険者ランクがDになってから、さらにひと月が経った。カル達は数々の依頼をこなし、だんだんと顔も知られていった。まだまだ小さな依頼をこなして行くだけに過ぎないのだが、それでもカル達は充実した日々を送っていた。最近では、毎朝訓練をしている。カルとヨウは組手方式の実戦訓練、セシルは武器と体術の基本と魔法の練習、あと飛ぶ練習も…。
ヨウはステラと実戦訓練をした時、動きやすい服装が必要と考え、袴の裾は絞り、小袖ではなく胴着を着用するようになった。本人も非常に動き易くなったと喜んでいる。
カルはヨウにずっと世話になりっぱなしになっていると考えていたので、防具を作ってもらってはどうかと提案した。ヨウは強くなる為なら、と了承したので、ドワーフのロランのところに行くことになった。
街を出て数時間の距離を歩いて行く。
「早いものであれからひと月ですね、ステラさんは元気でしょうか?」
「ああ、きっと元気だと思う。あの人元気じゃない時見たこと無いもの」
「そうだね、想像できないね」
「ところでヨウはどんな物を注文するつもりなの?」
「私は胴着の内側に着れるものをお願いしようと思っています」
「なるほど、いい考えかもしれないね」
「そうだね、動き易さを損なわず防御力を高めるってことよね」
「はい、欲を言えば頭を守るためのものでしょうか」
「そうか、僕も何か作って貰おうかな?」
「あんたは必要ないでしょう?」
「はい、カルの強さなら攻撃される事もないのではないですか」
「ステラさんやお師匠様には勝てないよ」
「比べる相手が間違ってるよ」
「ほぼ世界一強い人と比べるのは間違いですね」
「そうか…」
そんな会話をしてるうちにドワーフの村に着いた。ロランを訪ねる。
「ロランさん、こんにちは、先日はお世話になりました」
「ああ、君はカル君だったな。良く来てくれた」
「こんにちは」
「こんにちは」
「ああ、こんにちは」
「ロランさん、実は…」
カルはロランにヨウが要望している防具の事を説明した。ロランは腕を組みながら考え、答える。
「うむ、良くわかった。おそらく軽くて丈夫なシャツ状の防具じゃな」
「はい、後彼女の頭を守るもの、ヘッドバンドのようなものは作れますか?」
「問題無いじゃろう、色々調べて作ってみよう。少々時間がかかるが大丈夫か?」
「はい、問題ありません」
「ああ、それでは20日ほど時間をくれ、何としても間に合わせてやるぞい」
「ありがとうございます」
お礼を言って街に戻る。
「ヨウ20日かかるってさ」
「そうですね」
「じゃあそれまでまた依頼をこなすしかないね」
「よし、また頑張ろう!」
街に戻ったカル達は、ギルドに向かった。
「今日は、お世話になります」
「あ、カルさんどうも」
「何かいい仕事ありますか?」
「ちょっと待ってね、うーん、こんなのはどうかしら?」
「どんな感じですか?」
「そうね、湖の調査ね」
「湖ですか?」
「ここから南に3日くらいの場所にある湖で人が襲われたらしいの、それで原因を調べて欲しいという訳」
「わかりました、すぐにでも行きます」
「はい、じゃあよろしくね」
ギルドを出た3人はそそくさと用意を整えて、湖に向かう。街道を南に歩いて行くと、広い森が見えてくる。この森の奥に湖があるらしい。
「今日はこの辺で休もう」
「わかりました」
「はい、じゃあ準備しないとね」
3人は野宿の準備を始める。既に手慣れたもので、木を集め火を起こし、食事の準備を整える。
食事を食べている時、ガーランドが光る。
周囲に同調を試みる。
一つの気がこちらに向かっているのが分かった。
「ヨウ、左から誰か来る。わかる?」
「はい、こちらに向かって来てます」
「敵?」
「いや、まだ分からない」
ガサガサっと音がする、誰かが出て来た。
「た、食べ物を…」
褐色の肌に銀の髪、長い耳をしている。女性のようだ。
人とは違う、ダークエルフ?汚れてボロボロの服装だった。
「食べ物をわけて、貰えませんか…?」
そう言って倒れてしまった。
「どうする?」
「ほっとけないでしょ」
「そうですね、このままにはしておけないですね」
ダークエルフと思われる女性を介抱し、目覚めるまで待った。疲労と空腹で倒れてしまったようだ。あまり悪意は感じられ無かった。
しばらくすると女性が目を覚ました。
水と食事を与える。スープとパンしか無かったが、驚くほどの食欲だった。
「あ、ありがとうございました…ウウウ」
ダークエルフの女性は突然泣き出した。
「大丈夫ですか?何があったか教えてくれますか?僕はキスクの街の冒険者、カルと言います」
「私はセシル」
「ヨウと申します」
「ううっ、わ、私はダークエルフのブリトニーと申します。ずっと奴隷としてに生きて来ました。やっとの思いで逃げ出しこの森に辿り着きました。しかし食べ物も無く彷徨っていました。すると明かりが見えたのでここに…」
「そうか、でも、奴隷だなんて…」
「うん、私そんな事は認めたくない」
「そうですね、私も許せません」
「あなた方は優しい方達ですね、本当にありがとうございます」
カルはブリトニーにローブを渡し、話す。
「その格好じゃ色々問題ありですね、これを着て下さい」
「そんな、受け取れません」
「大丈夫です。機会があればまた返してくれれば」
カルは笑顔でブリトニーに話す。とても優しい笑顔だった。
「ところで、あなた達はこんな場所に何故?」
「僕達は冒険者で、この先の湖の調査の依頼で来たんです」
「湖で人が襲われたらしく、それを調べに来ました」
ヨウが言った。ブリトニーは答える。
「あの、よろしければ私も連れて行ってもらえませんか?私は夜目がききます。少しは役に立てるかと…」
「うん、ここに置いて行く訳にもいかないし、一緒に来てもらった方がいいかな?」
「そうね、その方がいいと思う」
「はい、そう致しましょう」
「あ、ありがとうございます」
「とにかく今日は休もう」
そう言って、寝る準備をする。暫くしてヨウがカルの耳元で囁く。
「あのブリトニーさんは、ちょっと信用出来ません。恐らく奴隷と言うのも嘘でしょう。奴隷にしては体に傷が無いですし、何て言うか上品な感じがします」
「ああ、僕も怪しいと思っていた。大丈夫、今は何も知らない振りをしよう。でも、警戒は怠らないで」
「わかりました、それと無しにセシルにも伝えておきます」
「うん、それじゃおやすみ」
「はい、お先に休ませて頂きます」
カル以外の3人は眠りについた。カルはじっと火を見つめていた。パチっと一瞬何かが爆ぜた、カルは新しい薪をもう一本火に焚べた…




