ドワーフの依頼
冒険者になってから早くも1ヶ月が経った。色々な依頼をこなして見聞も広がって来た。ある日ギルドから、カル達は呼ばれた。
「あの、ご用件はなんでしょうか?」
「あ、エイバース様、おめでとうございます」
「え、何がですか?」
「この度EランクからDランクへと昇格致しました」
「え、そうなんですか?」
「はい、お受け出来る依頼も増えますよ、よろしくお願いしますね」
「はい、よろしくお願いします」
セシルとヨウは依頼の貼ってあるボードを見ていた。カルは2人に声をかける。
「僕達Dランクに昇格したらしいよ」
「え、そうなんだ、じゃあ出来る依頼も増えるね」
「そうですね、良かったです」
2人は嬉しそうに微笑んでいる。
受けられる依頼が増えたことで、色々見てみると気になる依頼を見つけた。
「ねえ、カルこれ見て!ドワーフの頼みごとだって」
「何々、ドワーフの頼みごと、大恩ある女戦士の戦士にお礼がしたいので村に連れて来てほしい…これってもしかしてステラさん?」
「そうかもしれないな?」
「ドワーフの恩人はお2人の知り合いなんでしょうか?」
「うん、僕に戦い方を教えてくれた人だよ」
「そうですか、ではこの依頼受けてみるのはどうでしょう?」
「そうだね、僕も久しぶりにステラさんに会いたいし」
「そうね、でも、どうする?」
カルはちょっと考えて、答える。
「ちょっと僕ひとっ飛び行ってくるね!少し家で待ってて」
「ひとっ飛びとは、どういう事でしょう…?」
カルは外に出て闘気を集める。
「ドラゴンウイング!」
そう呟くとあっと言う間に飛び立って行った。
「…って言うことね」
「ええっ、カルは空も飛べるの!?」
カルの姿はすぐに見えなくなった。
カルは空の旅を満喫しながら、キンクウの祠を目指す。空 を移動すると何日もかけて歩いて行ったのが嘘のように早い。数時間でキンクウの村に着いてしまった。
今は急いでいるのでカレンやシンさん達には声もかけず、祠から竜の口に向かう。
グリムが相変わらず無表情で立っていた。
「こんにちはグリムさん、お久しぶりです」
「カル・エイバース確認した…カル、久しぶりだ。元気だったか?」
「ええ、この通りです。それではまた後で」
扉を開けて巨大な部屋の中に入って行く。
「こんにちは、お師匠様、ステラさん!」
「おお、我が弟子ではないか、変わりないようじゃな」
「カルちゃん、久しぶりね、元気?」
そう言ってステラが抱きついてくる。
「お久しぶりです、実はステラさんに確認して欲しいんですけど」
「なあに、私の事?」
「はい、実は…」
カルはドワーフがアマゾネスの戦士を探している事をステラに話す。ステラは少し考え、思い出したのか喋り出した。
「ああ、ドワーフね、確か名前はロランだったかしら…?ロランが魔物に襲われていた時に助けてあげたのよね。もう、随分昔の話なんだけど…」
「そういう事だったんですね、ステラさん一緒に来てはくれませんか?」
「いいわよ、お嬢、ちょっと行ってくるね」
「うむ、良いであろう。じゃがステラよ余り羽目をはずすでないぞ」
「うふ、分かってるわよ」
ちょっとステラが悪戯っぽい笑顔を見せた。
「ふぅー…あの顔の時のステラは不安じゃ…」
「え、大丈夫ですよね、ステラさん?」
「全然問題無いわよ」
「では行きましょう」
「お嬢、ゲート開いてくれる?」
「仕方ない、使うが良いぞ」
「ありがとう!」
そう言って、魔方陣のある場所に2人が移動する。ステラがカルに聞いて来た。
「カルちゃんどこに向かうの?」
「出来ればキスクの街に行きたいのですが」
「わかったわ、キスクの街まで」
魔方陣が輝く、2人は光の中へと消えて行った。
「ステラよ、大人しくしておれよ…」
ポツリとサンドラが言った。
カルとサンドラはゲートによって直ぐにキスクの街にやって来た。2人で街に入って行く。しばらく歩いてヨウの家に着いた。
「ただいま、ステラさん連れて来たよ」
2人が出迎える。ヨウは少し驚いている様子だ。
「お久しぶりです、ステラさん」
「あら、セシルちゃん元気だった?」
「はい、ステラさんもお変わりないようですね。あ、こちらは私達の仲間のヨウです」
「初めまして、ヨウ・アマミと申します」
「ヨウちゃんね、かわいいわ、私はステラ、アマゾネスよ」
ヨウがカルにそっと話しかける。
「カル、あの方の強さは私にも分からないくらい凄いのですが…」
「ああ、そうだね、ステラさんは神様の血を引いてるからね」
「あなたは、本当に常識では測り知れませんね…」
ステラとセシルが楽しそうに話していた。カルが
ドワーフの村に行こうか話をするが、ステラが言う。
「ねえ、まず食事にしない?」
「そうですね、外に行きましょう」
そう言ってステラと3人は家を出て、食事の出来る場所に出かけて行った。普通に食事も取れる酒場だった。昼時を少し回っていたが、店の中は賑わっていた。
3人は食事を注文したが、ステラはお酒を頼む。カルは少しだけ嫌な予感がしていた…
しばらくすると、グラスの山が築かれる。ステラはどうやら酒豪のようで、いくら飲んでも酔わない。3人があっけに取られて酒を飲むステラを見ている。
「美味しいわ、久々にお酒飲んだわね。お姉さん、おかわり、樽ごとでもいいわよ!」
本気なのか冗談なのかわからない様子で、ステラは言う。顔はいつもの笑顔だった。なるほど、お師匠様の言った意味はこれだったのか…と、カルが考えていると、ステラが話しかけて来た。
「カルちゃん、大丈夫?心配しないで、私お酒強いのよ」
「ステラさんお店の酒を全て飲んでしまいそうで…」
「そうね、そろそろやめとこうかしら」
「これからドワーフの村に行かなくはならないですし」
「あら、忘れて無いわよ」
「よろしくお願いします」
「もう、カルちゃんせっかちなんだから」
「…」
「…」
セシルとヨウは無言だった…。
支払いはちゃんとステラが払って、店を出た。ドワーフの村は街からそう遠くない場所にある。歩いて2時間程である。夕方頃には村に着いた。依頼したロランを訪ねてみる。
「すいません、キスクの街から来ました。ロランさんですか?」
「いかにも儂がロランじゃが」
「ロランさん、キスクの街にの冒険者カル・エイバースです。依頼の件で伺いました」
「なんじゃと、見つけてくれたと言うか?」
「あら、ロランちゃん、久しぶり」
「あ、あなたは…本当に、本当にその節はお世話になりました」
「あら、ちょっと老けたね、ロランちゃん」
「あなたはほとんど変わりませんね、ステラさん」
ステラが里を抜け出してしばらくした頃、ロランに会った。ロランは鍛冶屋の見習いで、鉱物を採取に山に入ったところ、はぐれた魔物に襲われた。体中傷だらけになって、もう駄目と思った時誰かに救われた。それがステラだった。ステラは傷の看病までしてくれて、ロランの村まで連れて来てくれた。その恩はずっと忘れなかった。そして鍛冶屋として一人前になったロランは、いつしか恩を返したいとずっと思ってた。そこでギルドに依頼したとのことだった。
「ステラさんどうか私の作った物を見て頂けませんか?」
「いいわよ」
ステラとカル達はロランの作った武器や防具など色々見させてもらった。どれもこれも素晴らしい物ばかりだった。
「これもあの時ステラさんに助けて頂いたから出来た物です。本当にありがとうございました」
「どれも素晴らしい出来ね、立派な職人になったのね」
「はい、どうかステラさんこれをお持ち頂けませんか?これはステラさんの為だけに作った物なのです」
「あら、私に?」
「はい、私の最高傑作の剣と盾です。どうかお使いください」
ステラは盾を構え、剣を振る。持った感じも素晴らしく、本当によく出来た業物だった。
「これは良く出来てるわね、ありがとう使わせてもらうわ」
「ほんの気持ちです」
「ロランちゃん、私からもお願いしていいかしら?」
「はい、なんでしょう?」
「この子達、私の大切な仲間なの。この子達が必要な時には武器や防具、作ってあげてくれる?」
「はい、もちろんステラさんの頼みでしたら断れません」
「ありがとう、その時はよろしくね。それじゃ帰ろうかな?」
「いえ、今日は是非とも泊まっていってください」
「どうしよう?」
「僕達なら構いませんよ」
「いえ、冒険者の方々も是非」
「みんな、どうする?」
「私は大丈夫よ」
「私もよろしければご一緒します」
と言う訳でこの夜は盛大にもてなされた。
ステラさん昼間あれだけ飲んだのに、あれ以上に飲んでいる。でも楽しそうだから良しとするか。セシルやヨウも楽しそうだった。
しかし、ステラさんは本当に大丈夫なのかと思いながらその夜は更けていった…




