初めての依頼
翌日3人はギルドに出かけて行った。既に登録は済み、冒険者として活動出来るはずである。
「おはようございます」
カルが受け付けの女性に声をかける。
「おはようございます、登録は済んでます。こちらのカードをどうぞ」
そう言って、カードを渡してくれた。
「これであちらのボードにある依頼を受けることが出来るようになりました。もし引き受けたい依頼がございましたらこちらにお伝え下さい。それでは今後ともよろしくお願いします。エイバース様、グレース様、アマミ様」
「はい、よろしくお願いします!」
すると、受け付けの奥の方から声をかけている来る者がいる。
「エイバースさん、あなたの父親はもしやスレイという名前かな?」
黒い髪に口髭をはやしている30代から40代に見える男性だった。
「え、あー、はい、そうです」
「そうか、君がスレイの息子か…」
「あのー、父さんを知っているのですか?」
「ああ、もちろん知っている。古い冒険者ならば知らぬ者はいないだろう」
「あの、あなたは?」
「ああ、すまない、私はギルドマスターのロンバルドと申します」
「ギルドマスターですか?初めまして、カル・エイバースです」
「カル君、何かあったら力になります。いつでも頼るがいい」
「はい、ありがとうございます。後で父の話しでも聞かせて下さい」
「ああ、わかった、それではまた後で」
そんな会話を交わした。
「カルのお父さん、スレイおじさんの知り合い?」
「そうみたいだね、シンさん言ってたけど、父さんは有名な冒険者だったらしい」
「へえ、お父さんがね」
「カルのお父さんも冒険者だったのですか?」
「うん、僕が小さい頃に死んじゃったんだけど」
「そうですか…」
「あ、ヨウ、気にしなくて大丈夫だから」
「は、はい」
「それより依頼を見てみよう」
「うん、冒険者としての始めての仕事よ!」
「そうですね、頑張りましょう」
3人は依頼の内容が貼ってあるボードを見た。飼い猫の捜索から、魔物退治まで様々な依頼があった。
「僕らはまだ難易度の高い依頼は受けられないね」
「地道にこなして行くしかないのか」
「あの、私は薬草の採取などでしたらすぐにでもこなせます」
「そうだ、こういう時にヨウの知識が役に立つね、仲間になってもらって良かった」
「本当、私達だけじゃ結構苦労するよね、ありがとうヨウ」
「いえ、私はそんな…」
急に感謝されて、ヨウは照れているのかもじもじと顔を赤らめる。
「じゃあ、薬草採取に行ってみよう!」
「うん、そうね、ヨウに聞きながら私達も知識が増やせるし」
「はい、では参りましょう」
そう言って3人は薬草採取の依頼を受ける事にした。この依頼は採取した数に応じて報酬が増えるという説明を受けた。
「じゃあ、いっぱい採ればそれだけお金貰えるのね?」
「まあ、そういう事だね」
「私は薬草のある場所は良く知ってます」
「じゃあお願いします、ヨウ」
「頼りにしてるわ」
「はい」
3人は街を出て薬草の生息してる場所に向かう。ヨウがしっかりと薬草の生息している場所を記憶していた。
ほぼ一日中薬草を採取して、かなりの量が採れた。これなら報酬もそこそこ貰えるだろう。
「でも、こんなに運べるの?」
「大丈夫、僕に任せて」
「大丈夫ですか?」
カルは大きな袋を2袋軽々と背負った。
「あんた、何よ!その非常識な力は!」
「ええー?」
「うーん、僕結構力あるんだよね」
そう言ってカルは何事も無いように街に向かう。
「セシルとカルは色々な意味で常識を無視してますね…」
「ちょっと、ヨウ、私も含まれる訳?」
「だって…」
気がつくとセシルはまた浮いている。
「ああ、これは、まだ制御が難しいっていうか、ねぇ」
「うふふ、でもなんだか楽しいですね」
「そうね」
セシルは着地し歩き始める。
「ほら、2人とも早く行くよ!」
「あ、まってよ、まったくカルは」
「はい」
夕方街に戻って来た。大きな袋を軽々と担ぐ少年に街の人々は驚愕の目を向けている。カルは気にしていないのかギルドに向かって歩き続ける。セシルとヨウも後を続く。やがてギルドにたどり着いた。
「薬草持って来ました」
「はい、ではこちらに…ええーっ?」
余りの量に受け付け嬢も驚きを隠せない。
「こんな量を採ってきた方は初めてです…」
「そうですか、よろしくお願いします」
カル達は手続きを待っている。待っているカルに声をかけて来た冒険者がいた。40代くらいの金髪のガッシリした男だった。左目に眼帯をしていた。
「よう、お前がスレイの倅かい?」
「え、はい、あなたは?」
「ああ、俺はジョシュ、ジョシュ・ハンネマンだ」
「初めまして、カル・エイバースです」
「ははは、やっぱりスレイの倅だ、感じがよく似てる」
「そうですか、ジョシュさんは父さんのお知り合いですか?」
「知り合いかって?一緒に戦った仲間さ」
「そうですか、僕は父さんの事あまり覚えてなくて…」
「そうか、まあ俺はお前の叔父みたいなもんだな、よろしくな、カル」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「じゃあまたな、カル」
そう言って去って行った。
「今の人誰?」
「父さんの仲間だったんだって」
「へえ、そうなんだ」
「カルの父上は有名な方だったんですね」
「まだ僕にも分からないけど…」
カルは頬を掻きながら話す。そんな会話をしてるうちに、受け付けから呼ばれる。
「ふうーっ、これが今回の報酬です」
「ありがとうございます」
思った以上の金額が貰えた。
「またよろしくお願いします!」
「失礼します」
「どうも」
2人は外に、ヨウは丁寧にお辞儀をしてから外に出た。
初めての依頼は問題なく達成出来た。きっと、こんな積み重ねを続けていく事が大事なんだろう。カルはそう思って空を見上げる。夕日は沈み月がよく見えていた…




