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いざ、冒険者に!




  数時間歩いて、城壁のある街キスクにたどり着いた。大きな街だった。カル達の暮らすキンクウとは比べものにならないが、この辺りでも有数の巨大な街である。

 カル達は中に入ってとりあえず食事をとることになった。ヨウの勧めで東国専門の料理店に入る。


「あの、私の国では少し変わった食文化があります」

「え、どんなふうに?」

「まず、お刺身と言って魚を生で食べる習慣です」

「え?食べられるの?」

「お腹壊さない?」

「はい、基本的には海の魚を食べるのですが、大きいマグロや、ブリなどが有名です」

「へぇー、僕らは食べたことないな。美味しいの?」

「うんうん、興味ある」

「試してみますか?」


 そう言って、刺身を3人前注文する。


「他にはどんなものがあるの?」

「まず、主食は麦ではなく米です。椀に炊いた米を盛って食べます」

「うん、米も余り食べた事ないね」

「ないない」

「そしてフォークやスプーンを使わず箸というものを使い食べます。私はフォークやスプーンより箸の方が使い慣れているので、苦労しました」

「面白いな」

「うん、やっぱり文化って違うね」

「そうですね、後は肉よりも魚を良く食べます。それは私の国が島国だからそういう文化が広まったのでしょう」


 話しているうちに、料理が出来上がった。生の魚が皿に盛ってある。見た目はとても美しく感じる。


「こうして、箸を使って食べるのですが、難しいと思いますのでフォークでどうぞ」

ヨウがお手本を見せてくれたが、カルとセシルには難しかった。フォークで刺身を刺し、醤油というソースにつけて食べる。


「美味しい!魚って生でも美味しいんだね」

「ほんと、こんなに美味しいものなのね」

「喜んで頂いて良かったです。実は、このお刺身をお米の上にのせた寿司というものがあるんです。これが一番のおすすめです」

「食べてみようかな?」

「うん、食べたい食べたい」

「では、注文しましょう」


 ヨウは自国の食文化を受け入れてもらって、嬉しそうな表情を浮かべている。


「ねえ、カルこの後はどうするの?」

「まっすぐ冒険者ギルドに行こうと思うけど」

「あの、私も付いて行ってもいいでしょうか?」

「ヨウさんも冒険者になるんですか?」

「はい、私カル様達とでしたら色々学べる事もあると思いますし、1人で何かするよりも便利だと考えました。足手まといにはならないと思います。どうかお願い出来ませんか?」

「ヨウさんがいてくれれば頼もしいね、カル!」

「うん、ヨウさん願ってもない事です。こちらからお願いします」

「ふつつか者ですが、よろしくお願い致します」


 こうしてヨウはカル達の仲間として迎えられた。そんな話しをしているうちに、待望のお寿司が運ばれてきた。

 カルとセシルはその味に感動し、何かいいことがあった時にはまた食べようと誓った。


 3人はお腹いっぱいになったところで、冒険者ギルドに向かう。ギルドは割と古めかしい建物だった。中に入ると、酒場が併設してあるらしく、冒険者と思われる者で賑わっていた。

 昼間から酔っている冒険者達がジロリのこちらに目を向け、何やら話している。

 カル達は受け付けに行った。濃い茶色の髪を後ろに束ねた女性が対応してくれた。


「あの、すいません、僕達は冒険者になりたいと思い伺ったんですが…」

「3名でよろしいでしょうか?」

「はい」

「ではこちらの紙に記入をお願いします」

 カルは2人にも入力用紙を渡す。書き終えた紙を回収し、女性に渡す。

「はい、これで情報入力は終了です。冒険者カードは明日には出来ていると思いますので、明日また来て下さい」


 そう言われ外に出てきた。とりあえず、荷物を置きたいので宿を探そうしたところ、ヨウが言う。


「うちで良ければ泊まってもらってもいいですよ」

「本当ですか?」

「ヨウさん、いいの?」

「はい、それ程広い訳ではありませんが、3人くらいでしたら問題ありません」


 2人はヨウの言葉に甘える事にした。ヨウに着いて行くと、小さな平屋の一軒家だった。


「ヨウさんすごいですね、こんなところ借りられるなんて。キンクウのうちの家と変わらないや」

「本当ね、結構家賃高いんじゃない?」

「まあ、そうですね。でも私の薬は結構高く買い取ってもらえるのです。ですから生活的には問題ありませんよ」

「僕らも頑張っていい場所を借りよう」

「そうね、頑張っていきましょう」

「…あの、もし良ければここにいてもらっても構いませんよ」

「さすがにそこまでは…」

「あら、カル、ヨウさんに家賃払えばいいんじゃない?」

「あ、そうか。宿屋で払うのもヨウさんに払うのも一緒だね」

「いえ、家賃なんて構いませんよ…」


 カルとセシルは、そこだけはきちんとしたかったので、ヨウに受け取ってもらうことにした。ただ、相場の半分以下の金額だった。


「ヨウさん何から何までありがとうございます」

「ありがとう」

「では、私からお願いがあるのですが…」

「はい、何ですか?」

「お2人ともヨウとお呼び頂けませんか?」

「わかりました、改めてよろしく、ヨウ」

「ヨウよろしく、じゃあ私達もセシルにカルでお願いします」

「はい、わかりました。よろしくセシル、カル」


 こうして一旦荷物を置き、カル達はまた外に出る。かねてから武器屋に行きたいと思っていたので、出かけて行った。ヨウが案内してくれるので非常に助かっている。3人は大きい武器屋を訪れた。


「先ずはセシルの装備だね」

「うん、私こういうのあまり分からない」

「そうですね、私も余り」


 そう話していると店のオヤジが話しかけて来た。


「よう、兄ちゃん達初めてかい?」

「はい、そうなんです」

「嬢ちゃん達の装備かい?じゃあこっちだ」

 オヤジが様々な鎧や防具が置いてある場所に連れて来た。

「好きなの選びな、用があったら声かけてくんな」

「はい、どうも」

 カルが答えた。まずはセシルの装備を整えようと物色してみたが、余りいいものが見つからない。カルはオヤジに話してみる。

「あの、すいません、軽くて丈夫なものってありますか?多少値が張っても構いません」

「そうか、じゃあこっち見てみるか?」

 そう言って2階に通される。こっちには高価な物が多く置かれている。その中でミスリルという鉱物で作った繊維の服があった。


「セシル、これはどうかな?」

「ああ、これいいわね。軽いし丈夫な感じ」

「セシルとても良くお似合いです」

「あのこれおいくらくらいですか?」

「うーんミスリルの服な、金貨2枚ってところだな」

「どう、他にも見てみる?」

「うん、なければこれにする」

「わかった」


  3人は他も探してみた。不思議な力を感じる物もあった。どうやら魔力が付与されているらしい。


「こんなのもあるらしいよ」

「うーん、どんな力があるのかな?」

「そいつは自身の魔力を上げる効果があるみたいだ」

「セシルはどんなの欲しい?」

「うーん私の魔力上がるより、物理的なダメージを和らげる物かな?」

「だとするとさっきの服が一番だな」

「わかった、じゃああれを下さい」

「あいよ、毎度あり」


 ミスリルの服を選び今度は武器だ。セシルは武器は余り、いや全く使えない。暫く見ていると、変わったマークの付いたナイフを見つけた。羽のついた蛇である。


「ねえ、セシルあれ見て」

「あ、羽の着いた蛇!ククルカン」

「変わった紋章ですね?」

「ああ、こいつかい?こいつは良く分からないシロモノでな、南方から来た奴が、いつか必要とする者が現れるとか何とか言って、タダで置いてったんだ。あんたらの事かい?」

「私の事かな?私これも買う」

「うん、いいよこれも買おう」

「では、私はこれを」

 ヨウは棒術の棒を選んだ。鉄でも切れない木で出来た不思議な棒だと言う。

「僕は今の装備で問題ないから、以上かな?」


 セシルがミスリルの服とククルカンのナイフ、ヨウが魔力の付与された棒、以上で金貨5枚だった。

「もしもっと質のいいものが欲しかったら、隣の村を尋ねるといいぜ、ドワーフの店がある。あいつら偏屈だが気に入られれば、特注で何か作ってくれるかもしれないぜ」

「ありがとうございます。機会があったら行ってみます」


 高価なものを気前よく買ってくれたカル達に、そんな情報を教えてくれた。


 カル達はヨウの家に帰り、買って来た物のチェックをしている。ヨウがお金を払おうとしたところ、今回は家賃という事で受け取らなかった。ヨウもしぶしぶ納得してくれた。セシルがククルカンのナイフを見つめる。


「このナイフやっぱり不思議な感じ」

「そうか、何かセシルには感じるのかな?」

その時何かを訴えるようにガーランドが光る

「やばいのかな?大丈夫?」

「…カルは槍と会話が出来るのですか?」

「うん、こいつ女の子でたまに話しかけて来るんだ」

「カルは本当に不思議な方ですね」


 その時セシルが突然話し始める。


「血を示せ、血を示せってずっと言ってる」

「本当?」

「セシルもナイフと会話してる…」

「ナイフで指を切って見れば?」

「うん、ちょっとやってみる」


 セシルが親指をナイフで切る。血がナイフに流れ出す。

すると突然ナイフが光り出した。輝きが大きくなっていく。輝きが終わると、目の前に羽の着いた蛇が浮いている


「うわーっ」

「うわーっ」

「うわーっ」


 3人が同時に驚くと蛇が語り出した。


「やっと会えたのう、儂の子孫や。もうわかっとると思うが儂はククルカンじゃ」

「は、初めまして。私はセシル、セシル・グレースです」

「うむ、セシルと申すか。しかし長い間ナイフにいるのもつまらなかったのう」

「は、はい」

「儂は陰ながらお前を見ておるぞ、用がある時はまた血を示すが良い。何か力になれるかも知れんからの、あ、今日はお前に力を授ける」


 そう言ってククルカンは光ると、消えていった。

「え、今のご先祖様?」

「セシル、力って何?」

「カルやセシルっていったい何者なんですか?」

「僕は竜王の弟子…です」

「私は魔神の子孫です…」

「うーん、すごいのか良く分からないけど…」


 するとある事にセシルは気づく。プカプカと浮いているのだ。気がついて降りる。


「ええーっ」

「ええーっ」

「ええーっ」


 また3人同時に叫んだ。ヨウが今度は1人で叫ぶ


「いったいあなた達は何なのよー!」


 ヨウの家に叫び声が響いていた…

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