キスクに向かって
センの村の宿屋を出て、カル達は歩いて行く。目指すは西のキスクの街だ。空には今日も太陽が輝いている。快晴だ。3人で村を出て街道を行く。余り人の通りは無かった。
「ヨウさんの服ってとても可愛いよね。東国の女性は皆そういう服を着ているの?」
セシルがヨウに尋ねる。
「いえ、これは神職の者、つまり神に仕える巫女の服装です。巫女は大体この服装をしています」
「ヨウさんはどんな神様に仕えているのですか?」
「はい、私は竜神様の巫女です」
カルは竜神様と言ったヨウの言葉を聞き逃さなかった。
「え、竜神様?ああ、やっぱり東国では竜を神と崇める習慣があるんですね!東国の竜はどのような感じなのでしょう?」
「え、ええ…」
「やっぱり竜は荒ぶる神さまなんでしょうか?それとも水に関係する水神様かな…西の方ではドラゴンと呼ばれて割と悪イメージを持たれていて、場合に…」
バシっとセシルがかるの頭をひっぱたく。
「やめろ、このドラオタ!」
「痛っ!」
「ヨウさん困ってるでしょうが、全くドラゴンの事になると目の色変わるんだから」
「あ、ごめん、つい」
カルは頬を掻きながら謝る。そんな2人を見て、ヨウが微笑みながら話す。
「ふふっ、カルさん面白いですね」
「いやー、はは」
頭を掻きながらカルが言った。
「私はオロチ様に仕える巫女です」
「ああ、オーリーさんかなるほど」
「…オーリー、さん?」
「カル、会った事あるの?」
「うん、村の祠を調べてくれたのがオーリーさんだよ」
「サンドラさんの協力?」
「うん、東国の地脈の調査もしていたみたいだね」
「あ、あのカル様、オロチ様にお会いになった事があるのですか?」
「うん、話しました。とても紳士的な感じの方でした」
「…」
ヨウは絶句している。
「どうしたのヨウさん?」
「大丈夫?」
カルとセシルが固まっているヨウを心配して声をかける。
「あ、いえ、私の仕える竜神様を友達みたいに話してらっしゃるので…カル様はいったい…」
「ヨウさんはオーリーさんに会った事は無いの?」
「はい、神様にお会いするなんて、勿論ありません」
「そうか、僕はちょっとおかしいかな?」
「あんた、今頃気づいたの?」
「ええ、ひどいよセシル」
「大体あんたは誰に修行の相手してもらったと思ってるの?神様の子とドラゴンの王でしょ?それだけで十分異常なのよ、わかる?」
「セシルだって教わったじゃないか」
「ま、まあそうだけど」
「な、なんだかお2人ともすごい、方なのですね…」
「そんな事は無いです。心配しないで下さい」
「そうね、ちょっと変わった環境にいただけかな?」
「は、はあ…」
そんな話をしながら、時は過ぎやがて日も高く昇っている。
「この辺で少し休もうか?」
「そうね、お腹も空いてきたし」
「はい」
3人は木陰で食事をとる。センの村で食料を買って来たのでそれを食べる事にした。
「ヨウさんは竜の巫女なのに、何故旅を?」
「あ、私も気になってた」
カルとセシルがヨウに尋ねた。
「私は薬の勉強をしたかったのです。東国にある知識だけでは補えないものを、西方の知識と合わせて薬を作ると補えるのです。より効果の高いものが出来ます」
「でも、女性が1人で旅をするのは危険なのでは?」
「うん、私も1人だと心細いな」
「うふ、心配してくれてありがとうございます。でもこう見えて私結構強いんですよ」
カルは闘気の同調を試みる。ヨウの闘気はかなり大きいのがわかった。
「なるほど、わかりました。ヨウさんは強いですね」
「あんた、わかるの?」
「ああ、ヨウさんは武術を学んでいるのですか?」
「はい、東国と言うより、私の一族に伝わる武術をマスターしています。見ていて下さい」
そう言ってヨウは集中する。一瞬、気が高まり腕に集まっていく。
「えいっ!」
パキッと音がして枝が折れた。ヨウの闘気で折ったらしい。闘気を放出し、物理的に攻撃する技だった。
「すごい!」
「ほぁーっ」
「はしたない真似を」
2人はヨウと話をして、 護衛を雇ったりするのは無駄ないざこざを防ぐ為で、普段は1人でも問題無いということがわかった。薬の知識を勉強し、東国に広める事が目的だと聞いた。
「ヨウさんはキスクに住んでいるのですか?」
「はい、部屋を借りています」
「僕達も冒険者になるんだから、部屋を借りたりした方がいいのかな?」
「そうね、え、私カルと一緒に住むの?」
「その方が安上がりだし、いいんじゃないかな?」
「私はいいけど、カルはどうなの?」
「何、何か問題あるかな?」
「若い男女が一緒なんだし、ねぇ?」
「うーん、色々手間があった方がいいと思うし、1人より2人の方が効率的だよね」
「このドラオタ!まったくあんたはバカね!もう知らない」
「ええっ、な、何で?」
「ふん!」
そんな2人を見てヨウは笑っている。
休憩を終えてまた歩き始めた。
街に向かい、何日か経過する。野宿をし、また歩き続けた。途中食料を調達する時、ヨウの知識が非常に役に立った。この植物はこんな場所に自生しているとか、このキノコは食べられるか、これを食べるにはこういう調理法が良いとか、旅をする上で役に立つ情報を教わった。
明日には街に着く。カルはやっと冒険者になれるの思うと、嬉しかった。火の周りでセシルとヨウが眠ってた。その様子を見ながら空を見上げると、空には星が輝いていた。明日もいい天気になる、とカルは思った…




