旅の仲間
朝早く目覚めたカルは、荷物の確認を済ませてガーランドを手に取る。父のローブを羽織って家を出る準備を終えた。
「母さん、それでは行って来ます。しばらく会えないけど、心配しないで。何かあれば直ぐに戻って来ます」
「うん、こっちは心配しなくて大丈夫よ。行ってらっしゃい」
「はい、行って来ます!」
そんな会話をカレンと交わし、意気揚々と家を出る。セシルも丁度出て来たところだった。
「カル、丁度いいタイミングね」
「ああ、そうだねセシル」
「アンナおばさん体調大丈夫?」
「平気よ、今度帰って来る頃には弟か妹がいるのね」
「そうか、何だか楽しみだね」
「うん!」
2人はそんな会話をしながら村を出て行く。途中村人達に激励の言葉をもらったりしながら歩いて行く。
季節は春から夏に変わり始める5月だった。まだまだ肌寒い日もあるが、軽装で問題ない陽気が続いている。旅立ちに相応しい、気持ちの良い天気だった。
セシルがカルに話しかける。
「ねえカル、街まではどの位かかるの?」
「そうだね、このまま歩いて行けば2週間ほどで着くよ。途中センの村で休んだとして、まあやっぱり2週間見ておけば着くんじゃないかな?」
「途中野宿もしなくちゃならないね」
「うん、それも冒険者の日常だね」
「ふふふ、こんな可愛い女の子と野宿なんて、カルもドキドキしてるんじゃない?」
「うん?そうだね、食料調達したり、安全な場所を探したり。あ、火もおこさないとだね!ドキドキするな」
「食料、火…」
「他に何か用意するものあるかな?」
「知らないわよ!カルのバカ!」
「ええっ、な、何で?」
セシルは怒鳴ってトコトコと先を歩いて行ってしまった。カルは頬を掻きながら、セシルが何で怒ったのか考えていた…。
いつの間にか機嫌の直っているセシルと、カルは街道を西の方に歩き続けていた。日も高くなり、お腹も空いてくる。
「セシル、そろそろこの辺で一休みしようか?」
「うん、そうね休もう」
そう言ってセシルは家から持参して来たパンや果物を差し出した。
「はい、これ」
「あ、いいの?ありがとう」
2人は木陰で休憩し、食事を取る。少し休んでまた歩き出した。
「センの村までは後4日くらいかかるよ、急いでいる訳ではないけど、食料も調達しながら行かないとだね」
「そうね、この辺りには食べられる野草やキノコも豊富だし、少しずつ手に入れていこう」
そうやって2人は、食料を調達しながら歩き、野宿をして、やっとセンの村までやって来た。
「やっと着いたね、キンクウよりも大きい村ね」
「うん、ここは宿屋や酒場もあるから今日は寝床で寝れそうだね」
「とりあえず、宿屋に向かおう」
「わかったわ」
2人は宿屋に向かう。一泊銅貨1人3枚との事だった。2人は別々の部屋を頼み、風呂に浸かり、旅の疲れを落とす。しばらくして食事に行く為、酒場に向かった。酒場には常連客と思われる客が数人と、何故か東国の服装を見に纏った、小柄な女性が1人いた。
カルとセシルは鶏肉と野菜のスープと肉の料理をたのんだ。料理を食べ始め、話をしていると。誰かが話しかけてきた。
「あの、申し訳ありません。冒険者の方ですか?」
良く見ると、東国の服装を着た女性だった。見た目は女性と言うより少女だった。小袖に緋袴、いわゆる巫女装束を着ている。小柄だが顔立ちははっきりしており、優しそうな眼差しを向けている。
カルが答える。
「僕達は冒険者になる為に、これから西の街に行く途中です」
「あの、宜しければ御一緒させて頂けないでしょうか?」
「 え?僕達とですか?」
「ちょっとあなた誰?」
「あ、申し遅れました。私は東国より参りました、ヨウ・アマミと申します。旅をしながら薬を売ったりしている者です」
「薬を売るって、薬師の方ですか?」
「はい、そうです。どうしても西のキスクの街に行かなくてはならないのです。1人ですので、護衛をお願いしようと声をお掛けしました」
「確かに僕達も西のキスクの街に行くつもりです。セシル、良ければ一緒に行かないか?ヨウさん困ってるみたいだし」
「そうね、ヨウさん泊まるところはあるの?」
「はい、その先の宿屋に泊まります」
ヨウは偶然にもカル達と同じ宿屋だった。
「僕達と同じところですね、これも何かの縁です一緒に行きましょう」
「そうね、私達で良ければ」
「本当ですか?助かります、ありがとうございます」
「僕はカル・エイバース15歳です」
「セシル・グレースよ、同じく15歳」
「よろしくお願いします」
こうして3人で食事をとり、色々な事を話した。ヨウは東国の神職だと言う。東国の薬と西方の薬を調合すると、より効果の高い薬が出来、高く売れるとの事だった。この辺りで取れる薬草などを探しに旅をして来たらしい。
「ヨウさんは今おいくつですか?」
セシルが聞く。
「はい、私はこう見えて18歳です」
「ええー?僕達よりも年上なんですね、驚きました…」
「東国の者は若く見られるようですね」
「でもヨウさん、ここまで1人で来たの?」
「いえ、商人の方に連れて来てもらいました。こちらの用事が済んだもので、誰か西に向かう方がいればご一緒したいと思ってました」
「でも僕達で大丈夫ですか?」
「はい、あなた方は驚くほど腕が立ちそうですので」
「え、そんな事わかるの?」
「私は人と変わった力があるんです。魔法とも違うのですが、生まれ持った力です」
「初めて聞きました」
「どんな力なの?」
「はい、人の気というか、エネルギーのようなものが見えます。カルさんには途轍もない程の力が見えます。セシルさんは魔力の強さが見えます」
「すごいものですね」
「私はこの力故に神職になったのです」
そんな話をしていたら結構な時間が経っていた。3人は酒場を、後にし、宿屋に向かう。それぞれの部屋に戻り明日の準備をする。落ち着いた頃には夜も更けていた。
カルはガーランドを手にベッドに入った。月が綺麗に見えている。ガーランドにおやすみと言って目を閉じる、直ぐに眠りに落ちて行く。返事をしたようにガーランドは輝いたが、カルにはもう見えなかった…




