ガーランドの事
竜の口から帰って来たカルとセシルは、街に行く準備を始めている。出発は明日の朝だ。最小限の荷物だけ持って行く事にしてある。実は昨日の帰り、お師匠様が軍資金と言って、金貨を50枚もくれたのだった。この辺りでは金貨なんて殆ど見ることは無い。銀貨や銅貨で大体足りてしまうからだ。大きな街に行ったら装備を整えるとしよう。
そうやってカルはいそいそと準備をしていると、カレンに呼ばれた。
「母さん、何?」
「カル、これを持っていきなさい」
「これはお父さんが使っていた物よ」
そう言って深緑色のローブを渡す。
「お父さんの?すごい、嬉しいよ母さん!」
カルは早速羽織ってみる。
「カルには少し大きめだけど、大丈夫でしょう」
「何だか父さんと一緒に旅ができるみたいだね」
「そうね、良かったわ」
カルは嬉しくて、着たまま用意を続けた。
そして、その日の夜、カルは明日が待ち遠しいのか、相棒のガーランドと一緒にベッドに入った。やがて眠りに落ち、しばらくすると、寝苦しく寝床が窮屈に感じ、眼を覚ます。
「ごめんなさい、カル、起こしてしまいましたか?」
カルは寝ぼけながら答える。
「いや、大丈夫…って、ええ?君、誰?」
裸の少女がベッドにいる。髪は綺麗な緑色をして、細身の美しい少女だった。しかも服を着ていない…。
「カル、ずっと一緒だったじゃないか。今更何言ってるんだい?」
「ずっと一緒って…」
「僕は君の相棒だよ。忘れてしまったのかい?」
カルはまさかとは思ったが、聞いてみる。
「もしかして、君はガーランド?」
「そうだよ、思い出してくれた?ありがとう」
ガーランドと名乗る少女は、嬉しそうにカルに抱きついてきた。全裸である。カルは思わす目を伏せたが、どうしても気になってしまい、チラッと見てしまった。
「何を恥ずかしがっているのさ?僕達ずっと一緒に戦って来たのに」
全身を思わず見てしまったカルだが、この少女のスタイルの良さと美しさは認識できた。
「いやいやいや、裸はまずい。何か着て…」
「うん?あ、カル、僕の裸が気になるのかい?面倒臭いけど、君がそう言うなら….」
ガーランドは光を帯び、緑色の服を着た状態になった。少女だが、男の子のような格好だ。
「ふぅー、でもびっくりしたよ。ガーランド、君は人の姿にもなれるのかい?」
「うん、毎回出来る訳じゃ無いんだ。月の影響なのかな?」
「月の影響?」
「今日みたいな、満月の夜には僕の魔力が高まるのさ。そんな時は人になったり出来る。君が側にいないと無理だろうけどね」
「僕が側に?」
「君も判ると思うけど、君と僕の相性はすごくいいんだ、波長が合うのだろう。そして君の波長と月の影響で僕は人に変わる」
「そっか、でも君と話せるなんて嬉しいよ」
「ああ、僕もさ。あの部屋で僕を見つけてくれてありがとう」
「君は月の槍みたいなものなのかな?」
「 ちょっと違うな。僕を作ったのは精霊だよ」
「精霊族?すごいな、見たことはないけど」
「はは、そうかい?もう随分昔の話だけどね」
そう言ってガーランドは自分がどうやって作られたかを話してくれた。
……精霊族の王が、自分の息子にプレゼントする為に作られたらしかった。息子は大事にしていたのだが、跡取り争いに巻き込まれて、殺されてしまった。そしてガーランドには特色があり、持つ人によっては素晴らしい武器になるが、合わないと本当に使い辛く、飾りにしかならないようだ。いつしか結界にガーランドが使われ、それを見つけた竜族が魔石と引き換えに持って帰り、サンドラの元に渡ったとのことだった。
「じゃ、僕は君に選ばれたのかい?」
カルがガーランドに聞く。
「うーん、運命みたいなものかも知れないな」
「そうか、運命か」
「でもありがとう、僕は君に会えて本当に感謝している。これからも僕を使いこなしてくれ、また機会があったら話そう…」
ガーランドはすうっと消えていき、元の槍に戻った。
「ああ、ガーランドこれからもよろしく…」
明日は街に行く、冒険者になる為に。そんなことを考えながらカルは再びベッドに入った。ガーランドをずっと手に持ったままだった…




