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セシルの事




 カルは昨日言われた通り、飛ぶ修行をする為に竜の口の地下、巨大な部屋にやって来た。実は何故か、何故かセシルも一緒に来てしまった。冒険者になる為に修行したいとの事だった。余りに強く食い下がるので、カルも諦めて一緒に来た。だか、部屋の手前でグリムに止められ、セシルは待っている。


「…という訳で一緒に来てしまいました」

「まあ、良かろう。セシルとやらも連れて来るが良い」

「うふふ、カルちゃんのガールフレンド?」

「というか、幼馴染です、はい」

「あれあれ、赤くなってますよカルちゃん」

「スーゥテラさん、冷かさないでください!」


  動揺したのか、声が上ずってしまったカル。


「あははっ、何、スーゥテラって?あはっ…お腹痛い」


 ステラは爆笑している。


 カルは顔を赤くしてセシルを呼びに行った。


 扉を開けてカルとセシルが入って来る。


「初めまして、セシル・グレースです。今日はよろしくお願いします」


 緊張した面持ちでセシルが挨拶した。


「セシルちゃん、初めまして…じゃなくて、昨日会ったかしら?私はステラ、よろしく。そんなに緊張しないで」

「我はサンドラじゃ、よしなにセシル」


 カルは心配そうにセシルに話す。

「セシル、君が考えてる程甘いもんじゃないよ。大丈夫?」

「だ、大丈夫よ。覚悟は出来てる」

「ふぅっ、どうなっても知らないよ」


 サンドラがセシルをじっと見て話す。

「セシルとやら、お主、妙な感じがするのう?ついて来るが良い」

「は、はい…」


 すると、サンドラは魔方陣を呼び出す。


「この中に入ってみよ」

「はい…」


 セシルが魔方陣に入ってしばらくすると、不思議な事に虹色に輝く。

「やはりそうであったか」

「お師匠様、これは?」

「うむ、この者は魔法の素質が高いようじゃな。主の祖先は、もしや魔族、いや、魔神かも知れぬ」

「ええーっ」

「ええーっ」

「ええーっ」


 セシルとカルとステラが同時に叫ぶ。

 サンドラは続ける。


「別に珍しい事ではないぞ、数百数千年遡れば神族が人との間に子を成す事もあろう。ステラならわかりそうじゃが」

「あ、そうね…パパは人との間に子供作ってるわ。最も神の子扱いだけど…」

「うむ、我もその気になれば人との間に子を作れるかも知れぬ」

「え?お嬢、子供欲しいの?」

「馬鹿者、例えばの話じゃ」

「それで、セシルの祖先は魔神と仰いましたが、魔神とはどのような存在なのですか?」

「うむ、神ではあるが聖なる力を持たぬ者、そんな感じじゃの。じゃがどの魔神とはわからぬ。もう存在しないかも知れぬしのう」

「生きてるかも知れないと?」

「うむ、じゃが、この反応を見る限り、魔法のエキスパートの魔神じゃな」


 そんな話を聞いていたセシルがサンドラに尋ねる。

「あ、あの、魔神の血を引いている私は、悪い存在なのでしょうか?」

「そういう訳ではないのじゃ、神は聖なる力を用いるものじゃが、中には他の属性の神が存在する。例えば火の神や水の神などがそうじゃ。そういった神は、聖なる力よりも、自身の属性が強い事が多い。そういった神を魔神と呼ぶのじゃ。聖なる力よりも他の属性が強い神と言えるかのう」

「は、はあ…何となく分かりました」

「でも、お嬢、万能の属性の神様ならわかりやすいんじゃない?」

「ふむ、そうじゃのう…セシル、お主何か信仰している神はあるのか?」

「そう言えば、昔聞いたのですが、おばあちゃんは南方の出身で羽の生えた蛇を神様と言っていたらしいと…」

「何と、わかったわい。なるほどのう、お主は大した神の子孫じゃな。南方のククルカンと呼ばれる神じゃ」

「そうなのですか…?」

「セシルよお主は類稀なる才能を持っておる。鍛えればかなりのものになるじゃろう」

「あ、ありがとうございます」

 セシルが嬉しいのか、顔を赤らめて言った。

「我が弟子にはそういった才能は無かったのう…じゃが此奴は努力する才能は他の者を凌駕しておるわい」

「ありがとうございます」

「うむ、共に励むが良いぞ」


 それから時の間での修行が始まる。

  カルはドラゴン・フォースを纏い、闘気で翼を作る訓練をしている。セシルは一通りの魔法の基礎を教わっている。


 いつも通りに時の間の中で12ヶ月が過ぎる頃、カルは飛べる様になり、セシルの魔法もかなり上達した。

 そして巨大な部屋に戻って来た。

 セシルは深々と頭を下げお礼を言う。

「本当に、ありがとうございました」

「うむ、辛い修行に良く耐えた、何かあったらまた来るが良い」

「セシルちゃん、教えた事忘れないで」

「はい、サンドラさんステラさん、本当にありがとうございました!」

「お師匠様、無理を言って申し訳ありませんでした」

「カル、また必ず来るのじゃぞ」

「お師匠様、僕は、ドラゴンの弟子です。いつまでもそのつもりでいます。必ずまた来ます」

「うむ、ではまた会おう」

「カルちゃん、セシルちゃん、またねー」


 カルとセシルは扉を開けて出て行く。グリムが無表情で立っている。


「グリムさん、しばらくお別れです。一緒に戦った事、絶対に忘れません。ありがとうございました」

「カル・エイバース、セシル・グレース確認した…カル、私も忘れない、元気で」


 そう言ってセシルと戻って行く。祠に着くとセシルがカルに話す。


「それにしてもグリムさん、だったっけ?も綺麗だよね?」

「うん、そうだね。美人さんだよ」

「ふーん、カルはグリムさんみたいな人がいいの?」

「うーん、僕はステラさんの笑顔と、お師匠様の知識と、グリムさんの能力が好きかな?」

「何で私が入ってないのよ!」

「えー、だってセシルは違うじゃない?」

「本当にあんたってバカね!もうドラオタ!」


 セシルが怒ってスタスタ帰って行く。本当はセシルの怒ったところと言いたかったけど、言っても絶対怒るだろうな、とカルは思いながらセシルの後を追いかけて行った…

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