急転そして出陣!
カルが実際訓練を始めてから、10日が経過した。実際の時間では10年以上修行をしているのと同じだった。今では、ステラに勝てないまでも、ついて行く事は充分に出来ている。特にガーランドを手にしてからのカルの上達ぶりには、舌を巻くものがあった。攻防一体となり、ステラから見ても攻めあぐねる場合が多くなった。
そんな中、キンクウの村で異常な事態が発生した。ザインの呪いの効果が、シンの体調を圧迫し、今は立つのがやっとの状態になっている。呪いゆえに、回復薬や魔法もまるで効果が無い。カルはシンの体調やセシルを心配し、家を訪れていた。
「おはようございます、シンさん大丈夫ですか?」
「ゴホッ、ゴホッ…グゥッフ」
「…お父さん、お父さん…」
部屋の奥からセシルの悲しそうな声が聞こえてきた。
セシルの母親、アンナがカルに気づいた。
「カルちゃん、せっかく来てくれたのに…シンは余り良くないのよ…」
アンナの顔には、疲労と悲しみが見てとれた。
「わかりました、僕は帰ります。薬を置いていきますね。セシルによろしくお伝えください」
「ごめんね、カルちゃん…」
「いえ、それじゃ失礼します」
カルは自分の無力さが悔しかった。どうしたらいいのだろうか…そんな事を考えながら、今日も竜の口の地下に向かう。
扉の前のグリムと挨拶し、慌ただしく部屋に入って行く。
「お師匠様!お師匠様!」
「何じゃ!騒がしい」
「呪いを、呪いを解く方法は無いんですか?このままだとシンさんが、セシルが…うっうっ、うううっ」
カルはひざまづいて泣き崩れる。サンドラがさっとカルに寄り添う。
「カルよ、そうか。呪いの末期症状になったか…おそらくその呪いは魔法呪術式じゃな?術者を倒す事でしか、呪いを解く事ができぬ。タチの悪い呪いじゃ」
「何とか、何とかならないのでしょうか?僕は、僕はあんな辛そうなセシルを…見たくありません!」
「カルよ…」
ステラが話す。
「こちらから攻めるのはどう?少し前倒しになるけど、カルちゃんなら闘えると思うわ」
サンドラがステラに話す。
「うむ、早急に対応せねばなるまい。オロチに連絡をしてみよう」
そう言ってその場を離れ、サンドラは魔法でオロチに語りかける。
「僕は、必ずザインを倒します…」
「カルちゃん…」
サンドラが戻って来る。
「カルよ、どうやらザインとやらは、東の森を根城にしておるらしい。しかし、配下も当然おるじゃろう。それでも行くか?」
「…はい、もちろん行きます!」
「うむ、覚悟は決めたのじゃな?ステラも行くか?」
「ええ、私も行くわよ。後グリムちゃん連れて行っても?」
「ああ、構わん」
「お師匠様、ステラさん、ありがとうございます」
「うむ、カルの為だけじゃなく、地脈を荒らす者は放っては置けぬからのう。魔族は魔物も含めて、数百から数千はおるじゃろう?大丈夫か?」
「お嬢、私を誰だと思ってるの?女戦士の長、神の子ステラよ」
ステラはサンドラにウインクする。
「僕はドラゴンの弟子!カル・エイバースです!」
サンドラはカルを見つめ頷く。
「良し、我が弟子よ!魔族を倒して来るが良い」
「はい!」
カルは覚悟を決めた顔をしている。ここに来たばかりの頃の顔では無い。男の顔があった。カルはガーランドを取り出し、ヒュヒュヒュっと振り回して構える。ガーランドはカルの気持ちに反応するように大きく輝いた…




