闘気を纏う!
翌日、カルとステラは時の間で修行中だった。
「カルちゃん、頑張って」
カルは、必死に全身に力を込めて、闘気を発動させる訓練をしている。
しかし、なかなか闘気は発生しない…
カルは汗だくで、苦しそうな表情をしている。
「ググググググっ!」
長時間にわたり、全身に力を込め続ける事は、体力を著しく消耗させる。
カルは突然、バタリとうつ伏せに倒れてしまった。
「あらあら、まだまだねぇ」
そう言って、ステラはカルの元に近寄り、上半身を抱き抱え、いつもの神秘の霊薬を、カルに飲ませる。
カルはすぐに復活した。ステラを見上げ、
「もう一度!」
と叫び、再び全身に力を込め続ける。
「うん、頑張れ!全身に力を込めても、頭は冷静に!体中にエネルギーを浸透させるイメージよ!」
「はい!」
カルは諦めずに、続ける。
カルは何度も倒れ、また立ち上がる。
何度かやっていくうち、不思議な感覚を覚えた。
全身に力を込めているが、頭の中が高揚感で満たされて行くような感覚…
何かが体の中で弾けそうになる。
ぷつっと緊張の糸が切れたように、カルはまた倒れてしまった。
「あん、惜しかったわね、今日はこれくらいかな」
そう言ってステラはカルを抱き抱え、連れて行く。
時の間には、寝具も食料も用意されている。寝台にカルを寝かせた。
「うーん、ちょっと時間がかかりそうねぇ」
ステラは、カルの側にしゃがみ、疲れ果てて眠っているカルの頬を撫でる。弟を心配する、姉のようだった。
時の間で3ヶ月が過ぎた頃、カルの体に異変が起きた。
いつもの高揚感とともに、何かが体の中で爆ぜる。
ポワッと体中に火が着いたような感覚がする。
カルの体中から、途轍もないエネルギーが発生している。
「やった!カルちゃん、出来たよ!」
ステラは嬉しそうにカルに叫ぶ。
数秒だった、しかしカルは闘気を発生させる事が出来た。
カルはガクリと膝をつく。
ステラが駆け寄り、カルの肩に手を置く。
「カルちゃん、やったね!少しだけど出来たよ」
いつもの笑顔でカルに語りかけた。
「い、今のが、そうですか…?」
「うんうん、そう。闘気」
「や、やった…」
カルはそう答えると、気を失った。その顔には満足そうな表情が見えた。
時の間で6ヶ月が経った。
カルの闘気は持続出来るようになっている。しかし、まだ数分が限界だった。
10ヶ月が経った。
カルは闘気を纏ったまま、数十分は持続出来るようになった。闘気が出なくなった後も、倒れなくなった。
12ヶ月が経った。
数時間は耐えられるようになる。
「うん、まあこんなところかな」
「はい、ありがとうございました」
「じゃあ、戻りましょう!」
「はい!」
いつもの巨大な部屋に戻って来た。実際の時間は1時間ちょっとしか経っていない。
「おお、我が弟子よ。強くなっておるな!」
サンドラだった。
カルは駆け寄り、サンドラに話しかける。
「お師匠様!少しだけ闘気を纏えるようになりました。これもステラさんとお師匠様のおかげです!」
「うむ、次回からは我も参加しよう」
「えっ!?やったー!」
カルは本当に嬉しそうだ。
嬉しそうに見ているサンドラだが、その裏に影があるのをステラは見抜いていた。
「それじゃ、お師匠様!ステラさん!また明日!」
「はい、気をつけて」
「うむ、明日もしっかり修行すのだぞ!」
「はい、失礼します」
カルは立ち去って行った。
残ったサンドラとステラは、深刻な表情を浮かべている。ステラがサンドラに話しかける。
「カルちゃんの村に何かあるの?」
「ふぅっ、主には気づかれておったか」
溜息をついてステラに話した。
「魔石のこと?」
「うむ、魔石だけじゃなく、魔族も絡んでおるの」
「何が起こっているの?」
「オロチによると、東国では、地脈の異常が大量に発生しておるようじゃ。どうやら、東国の魔王を名乗る魔族が悪さをしているらしい。我がこんな状態で無ければ、もう少し手もあるのじゃがのう…」
「そう、私も手伝うわよ」
「うむ、その時は主の手も借りよう」
「それで、魔石は?」
「あの村の魔石は、特に強力な魔石での、あの村には、この辺りでも有数の巨大な地脈が流れておる。もし、それが暴走したら、その被害は想像すら出来ん」
「そんなに強力なの?」
「厄災、飢饉、魔物の大量発生…何でもありじゃ」
「それは、放っておけないわね…」
「まあ、あの通り小さな村故、人の被害はそれ程でもなかろう。しかし、魔物が大量発生すると軽視は出来ぬ。やがて、大きな街にも流れ、甚大な被害になるじゃろう」
「それで、対応は?」
「一番良いのは、カルを育て、守らせる事じゃが…」
「カルちゃんなら、大丈夫だと思うわ」
「しかし、時間が問題じゃ。後3週間程で、魔力を使いこなせるように出来るじゃろうか?」
「出来るだけの事はするわ。私もついてるし」
「こうして考えると、カルを弟子にしたのは、運命かもしれぬ。過酷なものじゃがの」
「カルちゃんは強いわよ。お嬢が思っている以上に」
「そうか…」
巨大な部屋に静けさが戻った。静かに時が過ぎて行った…




