修行の始まりその2
カルはセシルと一緒に帰宅途中だった。祠に行ったのが、お昼よりだいぶ前だった。今は日が暮れようとしていた。セシルは、ずっと祠で待っていたのだろうか?
「セシルはずっと待っててくれたの?」
セシルは少し悲しそうに答える。
「うん…帰って、また直ぐ来た…」
「そう、心配かけちゃったね、ごめん…」
「うん…」
そんな会話をしながら、トボトボと帰って来た。
セシルの家に着く。セシルはカルの方を向いて、
「カル…いなくなったら、嫌だよ…」
そう言ってきた。カルは笑顔を見せて、
「大丈夫、そんなことはない。僕はセシルもシンさんも守る!」
と力強く言った。カルが言うと、セシルの家から、シンが現れる。
「おう、カル坊、何処行ってたんだ?まったくおまえってやつは…。でもよ、ありがとうな、俺らを心配してくれてるみたいだな。セシル悲しませんなよ」
「シンさん、大丈夫ですか?」
カルは、シンを心配そうに見つめ、聞いた。
「なーに、まだどうって事はねえや。いつもどおりだよ。」
シンは笑顔で話す。でも、少し悲しそうにカルは感じた。
「それでは、また、シンさん。セシル」
「おう、またな!母ちゃんに心配かけるなよ」
「はい!」
シンとセシルが家に入って行く。カルも自宅に帰って来た。
「ただいま、母さん」
「あ、カルお帰り…お前はどこに行ってたの?朝から帰って来ないから心配したじゃないか、まったく」
カレンにペシッと頭を叩かれた。
「あいたっ」
「セシルちゃんが一緒だったのでしょう?セシルちゃんだけじゃなく、私にもどこに行くか、ちゃんと伝える事、いい?」
「はい、ごめんなさい…」
「よし、今日は片付けはお前がやりなさい」
「はい、わかりました!」
「うむ、よろしい。それじゃ、ご飯にしよう」
そんな会話をしながら、セシルが、母さんに伝えてくれたんだと思い、心の中でセシルに感謝した。
……翌朝
カレンとセシルにまた出かける事を伝えたカルは、竜の洞窟にやって来た。セシルは、とても心配そうな顔をしていた。でも、大丈夫と伝えて来た。
今日から修行が始まる。期待と不安を感じながらやって来た。昨日ステラに会った場所に、初めて見る女性がいた。
「おはようございます。サンドラさんとステラさんに会いに来ました。カル・エイバースです」
その女性は、無表情にカルをジロリと見下ろす。
「カル・エイバース…確認した、通れ」
とだけ伝え、後は無関心だった。
女性は、首までの白い髪、抜けるような白い肌、切れ長の目、まさにクールビューティー。スタイルは細身で、黒いタイツのようなパンツに、シルバーのブレストプレートを装着していた。腕にはステラのような小手をつけている。何故か額に「GLM01」という文字が書いてあった。無表情である。
「どうも…」
カルは軽く答えて扉に向かう。女性はずっと無表情だった。
扉を開けると、ステラが待っていた。
「カルちゃん、よく来たわねー」
と言って、抱きついてきた。
「お、おはようございます。ステラさん」
ステラは、離れてカルに答える。
「おはよう、カルちゃん」
「早速修行始めますか?」
「そうね、その前にちょっと説明するけど、いい?」
「はい、お願いします」
カルは、ペコリと頭を下げる。
「うーん、まず今日は時の間に行きます。時の間って言うのは、そこに行ってる間、時間が経過が遅ーいの、わかる?」
「…?つまり、時間がゆっくり進むって事ですか?」
「うふ、つまりそういう事。そこにいる間はずっと時がゆっくり流れるのよ。だから、何時間修行しても、余り時間が経ってないの。そうね、1時間が1年くらいかな?」
「えーっ?僕はそこで修行をするのでしょうか?」
「そういう事!だから、大変だけど、1日鍛えれば、数年は鍛えたのと同じくらいの効果があるの」
「1日で数年…」
「今日は最初なので、そうね、ひたすら突きでもやって貰おうかしら?」
「ひたすら突きですか…」
「ちょっと見てて」
そう言ってステラは少し距離をとる。
構えて、一瞬、風圧がブワッと来た。でも、何も見えない…
「今、10回突きを出したの…見えた?」
「いえ、全く…」
「うーん、ここまでは出来なくていいけど、半分の5回くらい出せるようになりましょうね」
「は、はあ…」
ステラさんめちゃくちゃ強いんだ…。
天然って思っててごめんなさい!
「じゃ、早速時の間に行くわよ」
「はい、お願いします」
…辿り着いた「時の間」は、そんなに広い空間では無かった。特に何があると言う訳では無く、ただの部屋のような感じだ。
「じゃあ、私と一緒にやるわよ!」
「はい、お願いします!」
2人ならんで、足を肩幅に開き、腰を少し落とす。
右、左、右、左…………………
延々と繰り返す。カルは30分程で限界になってしまった。しかし、ステラは何もやって無かったように、笑顔でいる。
「カルちゃん、限界?もう少しだけ頑張って!」
「は、はい…」
軽く1時間ほど、ひたすら突きを打つ…
カルは突然、バタリと倒れた。それを見て、ステラが神秘の霊薬を飲ませる。カルは急に元気になった。
「はい、カルちゃんまた頑張って。神秘の霊薬はいっぱいあるから心配しないでね」
それから、食事を挟み、ずっと突きを続けた…
カルは、4回倒れた。その度に神秘の霊薬の世話になる。その後もずっと突きだけを、延々と続けて行く。
突然、ステラが言った
「はい、今日はここまでね!」
「は、はい、ありがとう…ござい、まし…」
カルは、最後まで言い切る前に気絶してしまった。
目覚めると、ステラが側にいて、カルを見つめている。
「あ、カルちゃん起きたね、はいまた突きね!」
「は、はい…」
「大丈夫よ、まだ普通の時間なら、せいぜい何秒かくらいしか経ってないから
「はい…」
再び、ずっと、突きだけを続けて行く…
時の間で、10日が過ぎ、1か月が過ぎ、半年が過ぎようとしていた。
その頃から、カルは一回も倒れなくなった
更に時は過ぎる…
10ヶ月過ぎた頃、カルの突きの速度が変わった。突きが見えない程の速さだ。
更に時は過ぎ…
1年が過ぎた頃、複数の突きが同時に出せるようになった。
「はーい、カルちゃん、突きはここで終わりよ。良く頑張りました!」
「ありがとうございます。ステラさん!」
「じゃ、元の場所に戻りましょう」
「はい」
カルは元の世界に戻って来た。あまり実感が無い…
僕は強くなっているのだろうか?
「カルちゃん、ここで突きをやってみて。全力よ!」
「はい、それでは…」
カルは突きを放つ!
しゅっ…!
ステラが、それを見て笑顔で言う。
「カルちゃん、すごい!6回打ててる。おめでとう!」
「あ、ありがとうございます!
カルは、強くなっていた、だが修行は始まりに過ぎない。これからが本番だった…




