36『輸送依頼達成』
さあ、年末が近付いて、と言うか明日で今年も終わりです
「よく来た、異人の冒険者よ。わしがここのギルドマスター【アズール】だ」
「ジンです。よろしくお願いします」
「うむ、では早速例の魔物を操ると言う魔道具を見せてくれ」
案内された執務室は2階の奥にあった。室内には資料と思われる紙が積み重なった大きな机と、ソファーに酷似した革製の椅子が低めの机を挟んで向かい合わせに設置してある。
その部屋で俺を待っていたのはアズールさんと言うローブを着た白髪のお爺さんだ、立派な髭を蓄え背筋をピンと伸ばし両足でしっかり立っている。貫禄があるとはこんな人に言うべきだと素直に思った。
俺とアズールさんは椅子に座り、テーブルを挟んで向かい合う形で話を始めた。
早速言われたままにポーチから、ラプトル達に付けられていた魔道具を1つ取りだし低い方の机の上に置いた。ギルドマスターはそれを手に取り暫く眺めると呟いた。
「見た目はただの装飾品のようじゃが、魔力の流れを感じるの、流石に詳しい事はここでは分からんが。さて、確かに確認した、これは複数あるとの話じゃったの、それらをこの袋に入れて貰えるかの?」
「分かりました」
手渡された袋にポーチから取り出した魔道具を詰めていく。魔道具は破損したのが6、無事なのが12、それを余計な破損が出ない様に袋の中に並べ、袋をギルドマスターに渡す。
ギルドマスターは袋を受け取るとローブのポケットから小さな袋を取りだし机に置いた。
「確かに受け取ったぞい、これはその報酬『転送リング』じゃ、確認を」
俺はその言葉に頷き袋をを手に取る、袋その物はアインで売ってる物とそう変わらないな。まぁ、大事なのは中身だ、そ~っと袋を縛っている縄を解き、中身を取り出す。
入っていたのは、変哲のない金属製の指輪、よく見てみると指輪の内側に何か書いてあるが・・・残念ながら俺には読めない。
さて、鑑定だ。
【転送リング】
『指定の場所から道具を取り出せる指輪
世界の反対側からでも取り出せる万能装備の1つ
ただし、空間連結を行わなければ効果は発動しない』
間違いなく転送リングのようだ、ただ、この空間連結とはなんだ? ちょうど目の前にそれを知っていそうな人がいるし、聞いてみよう。
「確かに転送リングを受け取りました、それと、この空間連結とはどうすれば良いのでしょうか?」
「なに、文字では難しく見えるがやることは単純じゃ、道具を出し入れしたい場所に丸1日リングを置いておくだけ、それだけで連結は完了するぞ、その指輪なら小さな部屋1つ分位までなら連結出来る筈じゃ」
「アイテムボックスの場合は?」
「ボックスに入れておくだけじゃ、もちろんこれも丸1日じゃ」
「分かりました、ありがとうございます」
「これくらいどうと言う事は無い、年寄りには知識と知恵を授ける程度の役割ぐらいが丁度いいんじゃよ」
ホッホッホッ、と笑いながら自分の髭を数回撫でたギルドマスターは立ちあがりゆっくり方に執務机に戻り、座りながら話を続けた。
「ところで、王都への道中、変わったことを聞いたり起きたりしなかったかのう? 例えば……そうじゃな、ランクの高い魔物に遭遇した、とか」
「ランクが高いと言うとエッグイーターですかね、王都の側で騎士団が討伐する所を目撃しました、それとマウケンの村の近くでも会いました、こっちは卵をあげたら山をおりていきましたけど」
「ほう、エッグイーターか、あれは卵が関わらなければおとなしい魔物なんじゃが、しかしマウケンの近くか、う~む……他には何か無いかのう」
「そうですね、あっ、フォバーグで北の森の巨虫が狂暴になってるって話を聞きましたね」
「巨虫の凶暴化、そちらも厄介な事じゃな、ふむ、他にはあるかの?」
「え~っと、ちょっと森でやらかしまして、その、馬車が蜘蛛と百足に襲われて、それでその……馬車がボロボロに」
「それは運が無かったのう、じゃが馬車の方は問題ない、オーガンは“転移出来るから”と1度も使おうとせんかった、ただ座して朽ちるよりは幾分とよいわい、馬車も自分の作られた本来の役目を果たし満足していよう」
「そう、ですか?」
それで良いのか、俺には判断できない、それよりも弁償とか言われたらどうしようか、馬車っていくら位するの物かな? きっと高いんだろうなぁ、借金とか出来るのかな?
「お主もしや、弁償か何かを心配しておるのか?」
あれ!? 心を読まれた? もしかして顔に出てたか? どうしよう、まぁ、こう言う時は正直に話したほうが良いよね?
「えっと、その……はい、その通りです」
「安心せい、異人と言えどお主は駆け出し冒険者、弁償なんて言わん、もし負い目があるなら多目にギルドの依頼を受けてくれれば問題はない、先に言っておくが無理せん程度でな」
おぉー、それは有り難い。それなら喜んで受けましょう。
「ありがとうございます」
「気にするな、どうせ金はアインから出るでの、あれはあそこの備品ゆえ」
「そうですか」
それならアインに戻って依頼を受けた方がいい気が、う~ん、そうだなぁ、鎖を取りに戻ったときに考えよう。
「さて、少々長く話してしまったのう、わしもそろそろ仕事に戻るでの、お主は王都を堪能するといい、まぁ、今は難しいじゃろうがな」
難しい? やっぱり何か起こっていると言うことか? 今後の為にも聞いておかねば。
「もし良かったら、長話ついでに何が起きてるか伺っても?」
「王都におればその内聞くであろうが、まあいいじゃろう。なに、年に何度かあるのじゃがな、街で死人が出ての、今は犯人探しの真っ最中なんじゃ。いつもなら直ぐに捕まるんじゃが、今回は少々長引いていてのう、衛兵はピリピリしておるし、柄の悪い若い冒険者も疑われてイライラしておる、お主は今日来たばかりじゃから疑われるなんて事は無いとは思うが、怪しい事はせんようにな」
死人、つまりは殺人か、いつ被害が起こったかは知らないけれど、衛兵さん達の反応を見る限り被害者は1人って訳じゃ無さそうだな。ギルドマスターもこれ以上話してくれる気配が無いし、ここは素直に引こう。
「ご忠告ありがとうございます、それでは失礼します」
「うむ、精進しなさい若者よ」
俺はギルドマスターの言葉を背に受け部屋を出た。
さて、次は向かいにある牧場だ。物騒な話も聞いてしまったし、急いでグレイス達と合流しよう。
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グレイス達に装備させたリングは借り物だ、故にガガ達同様アインファームに返す為にギルドに預けた。
その為、俺の従魔達は皆一様に小さくなってしまった。グレイスとシロツキにいたっては眷族を強制的に返す事になって申し訳ないが、替えを用意するまで辛抱してもらおう。
小さくなったグレイス達を引き連れ(内2羽は肩に乗せて)早速ファームに向かった、そこで先ほどまで身に付けていたリングと同じ効果をもった物を発見。しかし、
「1つ10万zl……た、たけぇなぁ」
手軽に手を出せる値段では無かった。
くっ、またお金集めに邁進する理由が出来てしまったか、ショーケースの中のリングを眺めているグレイス達には悪いが今日の所は帰ろう。
「皆帰るよ」
「わう!?」「きゅ!?」
買わないの!? と言いたげに声を上げるグレイスとシロツキ、シロツキにいたっては上体を起こし前足でリングを指さしてもいる。すまない、俺にはそれを買えるほどの余裕が無いのだ。
そのあとなかなかショーケースの前から2体が動かず説得を試みるも効果が無く、仕方なくグレイス達を無理矢理抱き抱え店を出た、そして、マイルームに到着するまで2体は腕の中で暴れ続けた。
マイルームに戻ると体が本来の大きさに戻ったので部屋にグレイス達を放す、すると2体は早速眷族を召喚し部屋の隅で丸くなった、それはまるで我が子を守るように。
仕方ないじゃないか!? お金が無いんだから! と言っても2体には何処吹く風で全く反応を示さない。
流石に見かねたのか、ゴウカ達も説得に協力してくれたが無駄だった。
6時を過ぎてしまったので、ゴウカ達に後は任せて俺はログアウトした。王都最初の目標はグレイス達のご機嫌とりになってしまった。……早くお金貯めてリングを買ってないといけないなぁ。
はぁ~、何処かに一攫千金の手段が落ちて無いものか。
これで第2章は終わりです。
本来ならここで年末の挨拶でもしたいところではありますが
来年を迎える前に後2回更新する予定です
とりあえず1回目は0時になります それでは!




