35『到着! 王都【ガラティン】』
門の向こうは見える限りではアインと大差はない、ただ入ってから見渡すと違いが見えてくる。
まず広い、門前の広場でさえアインの2倍はあり、道の隅に空っぽの馬車が規則正しく並べられている。流石に馬小屋は近くにないみたいだけど、これはファームが近くにあるのかもしれないな、見える範囲には見当たらないけど。
街の造りはアインとそう変わらない、しかし建物がアインの物より一段高い、つまりそれだけ人が住んでいると言うことだろう。
さて、いつまでも見ている場合じゃない、まずは冒険者ギルドに行かないと、とりあえず近くの衛兵さんにでも聞いてみるか。
「すいません、冒険者ギルドは何処にあるでしょうか?」
「道ならあそこに立て札に地図があるからそこで確認してくれ」
そう言うとスタスタと門の方に行ってしまった、ここの衛兵さんは皆あんな感じなのか? とりあえず教えてもらった事に関しては感謝を告げておこう。
「ありがとうございまーす!」
しかし、振り返ってもくれなかった、……まあ、することはしたし、地図を見に行くか。
地図が描かれた立て札は広場の中央にあった、『ガラティンにようこそ』って大きく書いてたから、ただのお迎えの看板だと思ってたよ。さてさて、
どうやらこの地図は【ガラティン・ウェストエリア】と呼ばれるエリアの地図のようだ、ウェスト、西って事は、他に東、北、南のエリアもあるって事だな。まぁ、今それはいいや、え~と、冒険者ギルドはこの場所から……右に曲がった方だな、おっ、ギルドの向かいには牧場があるみたいだな、名前は【ガラティンファーム】。
新入りの鳥達が結界の効果で小さくなってしまったし、この子達用のリングも用意しないと行けないからギルドの帰りにでも寄るとしよう。さて、そろそろ向かうとしよう。地図を俺同様に見ていたクロウとアヤメさんにその旨を伝えると。
「必要な部分は書き出したし私は行けるわよ」
「もう少し待って欲しいッス、あと少しで書き上がるッスから」
どうやら2人は地図を書き写していたようだ、まあ広そうだし無いよりあった方が良さそうだ。……紙もペンもない俺にはどうしようもないけど。
間もなくクロウが書きあげて馬車に戻ってきたので、改めてギルドに向けて出発! したのだが、
「なんか人が少なくない?」
「雨、だからじゃないか?」
「それにしたって、さっきからすれ違う人達が鎧を着けた騎士か軽装の冒険者っぽい人しか見かけないのはおかしくない? 雨でも仕事をしている人位いる筈でしょ?」
「確かに、レキの言うことももっとも、で、あるならば」
「何かが王都で起こってる、と?」
「まぁ、そう言う事だろうな」
王都で問題、ね。勇者系主人公のRPGでは良く聞く話だけど、今の俺にはそれに関わる余裕等ない、そもそも俺はRPGの勇者じゃないしな。そう言うのは余裕がある人に任せるとしよう。まぁ、気にならないと言えばそうじゃないけど、関わるならもっと余裕が出来た時だな。
他の皆も互いに相談しているが、俺の耳に届いた話はネリネさん達春夏秋冬の会話だ。
「私は関わらないで先を急ぐのが最善だと思います。何故なら私達には情報が何も無いからです。ギルドなら情報が得られる可能性が高いですから、もし、関わるとしてもギルドに着いてからの方が良いかと」
「お~、余計な事をしていつも迷惑がられるネリネがまともな事を言ってる、どうしたの? 熱でもあるの?」
「アヤメさん、その物言いは失礼です、確かにあの虫に襲われた原因は私にあると思われますが、そう何度も問題を起こした記憶はーー」
「虫退治用の薬品を家中に配置して同時起動、大量に出た煙を火事に間違われて消防に連絡されたの誰だっけ?」
「その煙を吸って~、病院に搬送されたのはだ~れ?」
「その事で同種の薬品の所持と使用を禁止されたのは誰ですか!?」
うわ~、リアルでもやらかしてたのか、ユキムラ君が強く言えるって事は相当だったみたいだな。
「……私です、私ですが、あれは小学生の頃の話でーー」
「いつかは関係ないわ! 大事なのはまたやらかしたって事よ! ゲームだからって思って油断したのは失敗ね! 今度から臭いが出たり煙が出る類いのアイテムを持っちゃ駄目だからね!」
「そんな!? ビウムさんそれはあんまりです! 1人で動く時はどうするんですか!?」
「とりあえず私か、カンナ、ユキムラ君辺りに買う事を伝えなさい、先に預けて受け取りに行くでも構わないけど、どっちが良い?」
「それはーー」
「そこまで! そう言う事は後でパーティー内で決めてくれ」
イアンが皆の話を止めた、まだ続きそうな雰囲気だったし良かったと俺は思う。更にイアンは続ける。
「とりあえずギルドに着くまでは関わらない、それとギルドに着いたらユニオンを解散、その後は元々のパーティーで活動を再開、王都の問題に関わるならその後で、とりあえずそれで良いか?」
「分かったわ、話は後でねネリネ」
「……分かりました」
「ジンとユキムラもそれで良いか?」
「俺は問題ない」
「僕も大丈夫です」
「よし、それで後どれくらいでギルドに着きそうだ」
「もう、目の前だよ」
既に前方にはギルドの紋章が描かれた立て札が見えている、立て札には『ようこそ! 冒険者ギルドへ!』の文章と矢印も書いてあり迷う事は無さそうだ。
立て札を越え矢印の方を見ると、そこには冒険者ギルドの紋章が描かれた建物があった、アインのギルドより広く高い、ギルドの前には馬のいない馬車が門同様に並べられている、とにかく近付いてみよう。
すると、こちらに気付いた職員と思われる男性が近付いて来た。
「ようこそいらっしゃいました、今回の用件は何でしょうか?」
「アインから荷物の輸送依頼で来ました、それと馬車は何処に停めればいいですか?」
「でしたら、とりあえずあちらの方へ、それと依頼内容を確認するためにカードの提出をお願いします」
カードを渡すと職員は建物に戻っていった。そして俺は建物の隅に馬車を停める、アインのギルドにはここのような広場が無いからこうはいかないな。
停めて間もなく男性が戻ってきた。そして、
「確認が完了しました、ようこそジンさん、ギルドマスターがお待ちです」
「えっ!? ギルドマスターが?」
「はい、荷物が“機密”扱いになっておりましたので、マスターが直接受け取る形になります」
「そう、ですか、分かりました、とりあえず受付に向かえばいいですか?」
「いえ、私がこのまま執務室へお送りします」
「では、お願いします、おっと、従魔達は何処に預ければ?」
アインでは受付までは従魔も入る事が出来たが、奥には入れて貰えなかった。だからアインのギルドマスターと話をしていた時は外で待って貰っていたのだ。こっちではどうなのか聞いておかないと皆が直前まで付いて来る事になってしまう。
「ギルドの裏手に預かり所があるのでそこに預ける事になります、手配はこちらがしますのでそのまま付いてきて下さい」
「分かりました」
御者台から降りて、従魔達と共に男性の後を付いて行こうとすると、
「ジン、俺達はここで失礼するぜ」
イアンが後ろからそう告げた。まぁ、そう言う話だったしね。
「分かった、王都までありがとう」
「気にするな、こっちも助かったしな、また機会があったら一緒に冒険しようぜ」
「ああ! その時はよろしく」
イアンは俺の言葉を聞くとジロウ達を連れてギルドを離れて行った、聞こえた会話から転移門に向かうようだ。目的は転移門の登録とチュートリアルのクリアのようだ。そして、ビウムさん達も、
「私達ももう行くわね!」
「そうですか、え~と、皆さんもご苦労様でした」
「イアンさん達とは違う対応ね、まぁ、こっちは押し掛けた側だし仕方ない、か」
「迷惑もかけちゃったしね~、ねぇ~ネリネちゃん」
「もういいじゃないですか!? それに同じ失敗はもうしませんわ、それでは皆さん行きましょう」
そう言ってネリネさんが離れていき、ビウムさん達も後に続いた。
ふむ、これでまた1人に戻ってしまったな。いや、正確には従魔達がいるから1人と6体だな。
そして、
「僕も姉さん達と行きます、お世話になりました」
「こっちこそ、ネリネさんがあんな感じで困ることも多いだろうが頑張ってな」
「はい!」
ユキムラ君はそう言ってネリネさん達の後を追っていった。彼は姉と違って真っ直ぐだな~、できればあのまま成長して欲しい物だ。
「お話は済みましたか?」
「ええ、それでは案内をお願いします」
「はい、ではご案内します、こちらへどうぞ」
促されるまま職員の後ろを付いていく。さて、どんな人が待っているのかな。




