28『フォバーグ』
ストックきれた。
来週までになんとか出来るように頑張ります
馬車での道中、俺は従魔達と戯れた。
正確には体を撫でてやったり食事をやったりしていた。もちろん幼虫もだ。
グレイスが眷族を連れて馬車と並走したら、シロツキも負けじと走り出したりして体を動かしていた。シロツキの眷族が追い付けなくてグレイスが回収しに行く、なんて姿もあったな。
グレイスとスクエールが肉を奪い合ったり――ちなみにこれは横から肉をくすねようとしたスクエールが悪い――、休憩中に御者台に居た幼虫を見たネリネさんが矢を射とうをしたりした――体を張って止めたけどあれは危なかった、あと少し狙いが上だったら【アイン】に戻る所だった――が、概ね平和だったと言えるだろう。
そんな感じで、雛が成長したのを確認して出発したあの日から1日と少し、ログインしていた時間としては10時間程で村――門番曰くここは町――に到着した。
この村の名は【フォバーグ】。この村では従魔を連れて中に入れないため、王都に向かう出口近くにある牧場に馬車と一緒に預ける事になった。従魔じゃない幼虫も一緒に。
管理している人が言うには、町の近くに入って来てしまった虫は極力刺激せずに自然に帰ってもらうのが通例らしい。良かったな幼虫、追い出されなくて。
ちなみに町というのは自称らしい、【アイン】では村って説明受けたし、村が正式だろう。なんで町なんて名乗ってるんだろう? ま、別にいいか。
さて改めて、今俺が何をしているかと言うと、
「素材の売却をお願いします」
素材屋で手に入れた素材を売っている。対応したのは、
「あ~ら~、ジャイ・アントをこんなに!? 凄いじゃない貴方~、それとこれは……何かの鱗かしら? この辺りじゃお目にかかれない物ね」
姉御と呼ばれている、図体の大きな男の人だった。
「は~い、確かにお預かりしたわ~。お金は明日貰いに来てね~ん」
「は、はい、それでは失礼します」
「またね~ん」
出来れば明日は違う人だったらいいな~。
そう思いながら店を出て、同じく素材を売りに来たアンク君達と合流する。
「ジンさんの担当の人、凄かったですね」
「あぁ、今度から列が空いてるって理由で並ばない事にするよ」
「え~と、今回のはレアケースだと思いますよ」
「だったら、良いんだけどね」
今度からはどんな人が担当するかも確認しよう、ちょっとああいう人は、俺には刺激が強すぎる。
一旦、心を落ち着けよう。ふ~~、……よし!
「さあ! 次は中央辺りの転移結晶に行こう」
「「はい」」
『転移結晶』、それは転移門とよく似た性質を持った巨大な石の塊で、魔物を近付け難くする能力と転移を行う事が出来る石だ。
転移結晶があるところに村や町などが出来るのは、必然と言っていいそうだ。それでも襲ってくる魔物はいるため必ず壁で囲うみたいだけどね。
転移結晶と転移門、この2つの最大の違いは転移能力の性能だ。
転移門はお金を一定額払う事で、他の門や結晶に移動することが出来るが、転移結晶はそれが出来ない。
ではなぜ転移結晶なのか? それは出口としての能力だけは有しているからだ。
そして、それの起動方法は、
「手で触れるだけとはまたえらく簡単だよな、よし、これで完了っと」
触れると結晶から虹色の光が溢れ体に収まる、これで完了だそうだ。ちなみに門の方は近くに設置されている端末に触れるか、門をくぐればOKだってさ。
「さて、これで明日まですることは無くなったわけだが、二人は何かしたいことはあるか?」
「僕は武器は見てみたいですね」
「僕は薬草ですね、この森が産地の物があるかもですし」
「じゃあ、とりあえず市場に行こう、情報収集もかねてね」
「良いですね、また良いものが見つかると良いな~」
「武器は期待できないかな? でも、武器の材料になりそうな物はあるかもしれないですね」
「よし! 次は市場だ、確か村の東側だったな」
「違いますジンさん、村じゃなくて町です」
「おっと、そうだった」
間違えると村に、いや町に住んでる高齢の方々が睨んでくるんだった。気を付けないと。
「それじゃあ改めて、町の東側に向かって出発だ!」
「「はい!」」
【フォバーグ】は、大きく4つに区切られた町だ。
東側には市場をはじめとした商店が並び賑わいを見せている。王都に向かう為の門もこちら側にある。
南は宿屋が多く立ち並ぶ宿場町、牧場なんかもこっち。
西と北は住民達の住居、西は人が住み北は町の政をする施設があるそうで、そちらは関係者以外立ち入り禁止。
観光地なんて存在しないから見る物なんて市場位、あっ、1つあったな。町の北側にある巨大な木、あれが虫除けの材料なんだそうだ。まあ、近くで見れないから遠くから眺めるだけしかできないけど。
さて、その東側の市場の様子は、
「【マウケン】に比べれば賑わってるかな」
「そうですね、町の住人とは思えない人もチラホラと見えますし」
町の住民は皆、緑を中心とした服を着ているのに対し、お店の客は鎧を身に付けた冒険者と思われる人と、ここでは場違いと言えるほどの黒いスーツを着た人が居た。執事、又は使用人と呼ばれる人かな?
「あの人達も王都に行くんですかね?」
「さあ? もしかしたらアインの方かもな、それじゃ、一通り見てみようか」
「「はーい」」
ユキムラ君達と別れ店を見てまわるが、今の俺では役立つ物は無さそうだ。
店先に置いてある物の鑑定結果がこれだ。
【木材】
『何かの木から切り取った木材』
【薪】
『木材を加工して作られた燃料』
【木炭】
『木材を燃やし作った燃料』
【葉の仮面】
『葉を編んで作られた仮面』
今の所、火を使うような場面には出くわしていないので必要性を感じられない燃料と、持っていても使い道のない木材、仮面は……顔を隠すような事をした記憶はないし、着けたら目立ちそうだからパス。
他は生活用品が並んでおり、俺たち異人には必要は無いものばかり、あっ、でもこれなんかはお土産に良いかも。
【人形】
『木を削って作られた人の形をした人形』
【カマキリの人形】
『木をカマキリの形に削って作られた人形』
【バタフライの人形】
『木をバタフライの形に削って作られた人形』
この人形シリーズは引っかける部分を作れば立派なキーホルダーになるだろう。精巧な作りだしどこかのだれかさんは嫌がるかもね。買わないよ、手持ちが少ないからね。
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店を一通り見てユキムラ君達と合流を果たした。アンク君は良いものが見つからなかったそうだが、ユキムラ君は、しっかりと見つけてきた。
「見つけましたよ! 新しい薬の材料を!」
「おー、また見つけたのか」
「良いなユッキーは、僕は全然だったよ」
「大丈夫ですよ、きっと王都には良い物がありますよ、あ~! 早く調合がしたいな~」
「あと2日位で王都に着く筈だから、それまで我慢だよユキムラ君」
「はーい」
これで一応の用件は終わったな、それじゃ、
「そろそろ解散するか」
「えっ? ジンさんは宿に行かないんですか?」
と、ユキムラ君は聞いて来るが、さすがにお金が無いから馬車に泊まる、とは1人の大人として情けない。一応ここはゲームの中ではあるが、そういう事は気にしてしまう。
だから、一応それっぽい理由を作っておいた。
「俺は従魔達との絆を深めに行くよ、幼虫がなかなかテイム出来ないから、なんとかテイムまでこぎつけたいんだ」
この理由ならなんとかなるだろう。さあ! どうよ?
「あんなに仲良くみえるのにまだダメなんですか?」
「ダメなんだよ、何が悪いのか分からないから試行錯誤の最中だよ」
「そうですか頑張って下さい、それと姉さんの事は気にしないで下さい、虫関連だと誰の意見も聞かないので」
「分かった。それじゃあ行くよ」
「はい! また明日もよろしくお願いします」
「お願いします」
「おう! 任せとけ」
なんとか誤魔化せたようだ。
それじゃ早速馬車に戻って従魔達と戯れよう。
幼虫、テイム出来ると良いなぁ。




