29『別れ』
なんとか書き上がりました
「はーい、代金の支払いはこれで完了よ~」
「ア、アリガトウゴザイマス」
昨日素材屋に売却した素材のお金をもらった、そして残念な事にまたしてもあの男性だ。
つい片言の様に話してしまったのは大目に見てほしい。いやだって急に顔近付くけてくるんだよ!? 俺にはちょっと……無理があったんだ。本当にごめんなさい。
ただ、相手は気にしていないらしく、直ぐに顔を引っ込め、
「ウフ、また良い物を手に入れたら売りに来てね~」
と言って送り出してもらった。多分もう来ないと思うけどね。
手に入ったお金を使い市場食料を購入していると、興味深い看板を見つけた。
「昆虫達の大好物ミツミツゼリー?」
看板の側には手のひらサイズの容器に入った透明な液体がある。鑑定っと、
【ミツミツゼリー】
『護木から抽出した蜜をゼリー状に加工した物
巨大な昆虫達の好物の1つ』
護木ってのはあの虫除けの木の正式名かな? つまりあの木は虫除けと虫寄せ、2つの能力を持ってるのか?
「いらっしゃい! 冒険者さん1個買ってくかい?」
「う~ん、虫達が寄ってきそうだから止めとこうかな、あっ、待てよ」
幼虫は食べるかな? でも幼虫って確か蜜を食べるタイプの虫じゃなかったような、う~ん。
考えながら店先の商品をあらためて見てみると、ゼリー以外にも色々揃っていた。その内1つに良さそうな物を発見した。
「この【ミツミツリーフ】を、そうだな、5枚下さい」
「あいよ、ミツミツリーフ5枚だな、1500zlになるよ、カードはこっちの台に置いてくんな」
店主のおじさんの指示通りに指定された台にギルドカードを置く、所持金が減ったのを確認、売買成立だ。
「ほれ、持っていきな」
渡されたミツミツリーフを鑑定してからポーチに入れる。鑑定結果は、
【ミツミツリーフ】
『ミツミツゼリーに浸して作られた葉
草食の昆虫が好む食品』
これを決め手に幼虫をテイム出来ないかな~、出来ちゃったら定期的にここ買いに来なくちゃ行けないけど、その時はその時考えよう。しかし、
「大丈夫なんですか? その、町中でミツミツゼリーなんて売って」
「外から来る人はこれを見ると大体同じことを聞くな、そして俺はいつもこう言うのさ、大丈夫だ問題ない、ってね」
いや、その返事は不安しか呼ばないよ、俺としては。
「そ、その根拠は?」
「この町はず~っと昔からあの木に守られてきた、ただ、あの木にも弱点はある、一部の虫達にはあの木の力が効かないのさ、その事に頭を抱えてきたご先祖様達はある日気がついたのさ、あの木の蜜が虫達の好物だって事にな、きっかけは伝わっちゃいないが、そりゃ驚いた事だろうよ、なんせ虫を寄せ付けない木の蜜が虫達の好物だったんだからな。ご先祖様達は蜜を虫達の長に献上してこの町を守る契約を交わしたって話だぜ」
「長?」
「【インセクトクイーン】って種類の虫らしい、容姿なんかは分からんが人と会話が出来るそうだぜ、んでだ、蜜を好む虫と草を好む虫の中で戦闘能力があるやつはこの町を囲む様に縄張りを持ち、町を守る代わりに月1回このミツミツゼリーとその加工品を報酬として渡す事になったんだと、だからこの辺りでは人を襲う虫とは遭遇しないんだ、ちなみにここに並んでいる物は質が悪かったのか食い残された物だ、おっと安心しろ店に卸されるのは口すらつけなかったやつだからよ、ガッハッハ!!」
それは安心出来るのか? いや、虫が食い残しを気にするとは思えないけど、
「そうだ、ここだけの話を聞きたくないか?」
おじさんは声を小さくしてそんな事を聞いてきた。そりゃ聞きたいさ、情報はどれだけあっても良いからな、……整理できるか別として。俺は頷く事でそれに応じた。
「最近北の虫達の様子がおかしい」
「おかしい、というと?」
「本来人を襲わない虫達が採取に向かった奴等を襲ったそうだ」
「何かその虫達の嫌がる事をしたのでは?」
そりゃ虫だってされたくないこと位あるだろうし、人が知らず知らずそれをやってしまう事もあるだろうさ。
だけどおじさんは、それを否定する。
「それはない、襲って来たのは普段木の上にいる幼虫種で、それが地面を履い猛然と向かって来たんだってよ」
「幼虫の大きさは?」
「この辺で幼虫といえば人3人分位だな」
3人分の大きさの幼虫が猛然と、それは、虫が平気でも恐怖物だな。となると、
「偶然幼虫の進行方向にいたとか?」
「ぶつかると思って避けた奴等を狙う様に方向を変えて町の近くまで襲ってきたそうだぜ」
「ん~、そこまで行くと俺にはもう否定要因が思い当たらないな」
「だろう? だから町を出るなら注意しなよ、もしかしたら出くわすかも知れんからな」
「分かった、情報ありがとう、俺は行くよ」
「おう! また町に来たらよろしくな!」
おじさんに別れを告げ馬車に戻る。俺達が向かうのは東、虫に襲われたのは北、もし襲われたら運が悪いと割りきり討伐しようかね。
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「旨いか?」
「シュ~ルル~♪」
ご機嫌で返事をする幼虫はミツミツリーフをたいらげていく。これでテイム出来るようになれば完ぺきなんだけど、どうなるかな? ちなみにミツミツリーフはシロツキ達には不評だった、あくまでも昆虫向けの食品と言うことなんだろうな。
幼虫が食べ終わる頃、ネリネさんが御者台までやって来た。その顔はとても晴れやかな笑顔だ、だけど何故だろうか? なんだかとてつもなく嫌な予感がする。
「ジンさん! これを馬車に取り付けても良いですか!? いえ、是非とも付けて頂きたいのですが!」
そう言って取り出したのは穴が幾つも空いた筒のような物、ランプの類いか? 一応聞いておこう。
「これ、何ですか?」
「フフフ、これはですね~、【巨虫除けのお香】ですよ!」
そう言いながら、勢いよく筒の蓋を開ける。黒かった穴の先が見えるようになり微かに良い香りが広がった。そして、
「シューーーーーー!?」
「あっ! 幼虫が!?」
幼虫が叫び声を上げながら森の中に走って行き姿が消えた。
ちょっと!? ネリネさん何やらかしてくれてるの!? 俺は慌てて幼虫の後を追って駆け出した。
「ジンさーん、これ付けても良いですよねー? 付けときますよー?」
後ろからネリネさんがそんな事を言ってくる、しかし、返事してたら何処かに行ってしまう。
とにかく今は幼虫だ、あれは後回し。頼む見つかってくれ!
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幼虫を追い森の中に来たはいいが、よくよく考えると姿を完全に消されたら、グレイスの鼻でも俺の【擬似魔眼】でも見付ける事は困難、だったら誘き出すか? あんなに勢いよく逃げたのに誘き出すとか出来るわけないよな~。
そんなことを考えていたら後ろから何かが近付く音が聞こえてきた、敵襲か!?
「ウォン」
「キュー」
違った。後ろからやって来たのは俺の従魔達、急に駆け出した俺を心配してくれたのだろう。実に可愛らしい仲間達だ。
これなら数に物を言わせる所謂人海戦術が使える、が新参のストレインとスクエールが心配だ。まだ戦ったことがない彼等が幼虫ではなく敵勢の巨虫に見つかったらひとたまりも、う~ん、チーム分けとか出来ないかな?
「これから皆で幼虫を探す、グレイス、ゴウカ、ストレインはあっちを探して、残りの皆はそっち、見付けたら大きな声を出して皆を呼んで」
それぞれ別の方向を指差して指示を出してみた。
確かに指示の通りの方向に皆向かって行ったのだが、皆俺から一定範囲より外に行かない、グレイスの分身の時は上手くいったのだが、ダメか。仕方ない、とりあえずこのまま探そう。
見つかってくれればいいのだが。
またネリネさんのヘイトが上がってるんだろな
それでは!




