ヘラクレスカンパニーでの初仕事 (2)
そして、昼休憩を終えた進は、禰音と共に街の巡回へと行く事となった。
ヒーローの一員として、街で事件が起きていないか確認するのだ。
進は自分のデスクにて、禰音から仕事の内容を聞いている。
「さて、午後はヒーロー活動への第一歩『巡回業務』となります!
今回見回って貰うエリアは、サブカルの街『電煌区』です。
初日ですので、Aランクヒーローでもある私がお手本を見せます。
ヒーローとしての姿を、しっかりと目に焼き付けてくださいね。」
「はい、承知しました。私も誠心誠意、学ばせて頂きます。」
こうして、進と禰音は会社のビルを出て、
ヘラクレスカンパニーのスタッフが運転する車で電煌区へと向かった。
──ヒノカ国首都・電煌区
電煌区は様々な飲食店やアニメ・ゲームのグッズ専門店、
そして電子部品の取り扱いで名を馳せている地区である。
色とりどりの広告に溢れるビル街は、
今日も老若男女問わず、色々な人で賑わっていた。
電煌区に着いた進と禰音、そしてスタッフは、
早速街の中を歩きながらという形で、仕事の話をする事となった。
「佐藤さん、今回は私と共に2時間程電煌区の巡回を行って頂きます。
とは言っても、佐藤さんは周りで不審な人物がいないかを見たり、
私が怪人を倒した際の後始末をして頂けましたら大丈夫です。」
「はい、承知しました。」
禰音の話が終わり、電煌区内を見て回る進と禰音たち。
今日は特に大きな事件もなく、巡回も終盤となった時──
──突如として、喧しい笑い声が響いて来た。
その笑い声を聞いて、禰音が真っ先に駆け付ける。
「この喧しい声は……恐らく怪人が暴れているんだわ。
佐藤さん、須田さん!無理はしなくて良いけど、
ダッシュで現場まで向かうわよ!」
(無理をせずダッシュって、何だか矛盾している様な……
……後、車を運転されていた方は須田さんと言うのですね。)
進は内心でどうでも良い事を考えながら、笑い声の元へと向かう。
そして進たちが大通りに辿り着くと、
そこにはバナナの着ぐるみを着た謎の男が暴れていた。
その男は首から提げたポシェットから、
バナナの皮を出してまき散らしている。何という嫌がらせだろうか。
周囲では、バナナの皮で滑りかけている人が多数発生している。
「バーナバナバナ!俺様の名前は怪人バナナ男!
バナナが好きすぎる余り、怪人手術でバナナの力を手に入れたバナ!
この街は輝いていて気に入らないから、
バナナ色に染めて何か嫌な気分にさせてやるバナ!」
どうやら、この怪人の名前は「怪人バナナ男」というらしい。
進は内心で「……何と安直なネーミングでしょうか。」と思った。
進が呆れている横で、禰音はシリアスな顔でバナナ男を睨みつける。
「……はぁ、やっぱりこの手の迷惑怪人は、年中出るものね。
──ヘラクレスカンパニーよ。貴方の悪行、しかと見せて貰ったわ。
バナナの皮を捨てて、街が汚れたり人が転んだらどうするの!?
貴方にはこの私、鳴神禰音が、社会のマナーを叩き込むわよ!」
禰音がそう言って格闘技の構えを取ると、彼女の腕から稲光が湧き出る。
呼吸を整えて、勢い良く立ち向かう──と思われたその時。
進がダッシュでバナナ男の元へ向かい、
普通にグーパンチで顔面を殴り付けた。
バナナ男は「バナァッ……!?」と言いながら、吹っ飛んで気絶した。
その信じがたい光景に、思わず一瞬足を止める民衆。
そして、あんぐりとした表情で固まる禰音と須田。
しかし、バナナ男を倒した進は、その周囲の様子も気に留めることなく、
禰音の方へと向き直って聞いた。
「……申し訳ございません。
あのバナナの方は、明らかに悪い事をしておりましたので。
迅速に止めた方が良いと考え、つい手が動いてしまいました。」
禰音は進の淡々とした報告に毒気を抜かれつつも、
何とか調子を取り戻して、進に向けてツッコミを入れた。
「いや……私の出番……じゃなかった……
一人で怪人に立ち向かうなんて、何を考えているのですか!
今回は何とか倒せたので良いですけど、
一歩間違えていたら、貴方が危険だったのかも知れないのよ!
……全く、社会人の基本は報連相!これは覚えておく事!」
「はい、申し訳ございません。以後は気をつけます。」
進は禰音に手間を掛けさせたと考え、深く謝罪する。
しかし言動とは裏腹に、禰音は進の活躍を悪く思ってはいなかった。
(佐藤さんはズレていて無鉄砲だから、見ていて正直ヒヤヒヤするわ。
でも、面接の時に感じた彼の良さは、今のを見て本物だと分かった。
楽しみね……彼がヒーローとして成長していくのを見るのが。)
その後、バナナ男はヘラクレスカンパニーの近隣にある、
会社所有の収容施設へと移送されたという。
こうして一悶着はありつつも、
進はヘラクレスカンパニーでの初日を終える事ができた。
因みに、進は再び須田さんの車で会社に戻った後、
練習の時と同じく、報告書を豪華に仕上げて提出した。
それには禰音もツッコミを忘れて、苦笑したのであった。
「……全く、佐藤さんはある意味堅物だわ。
でも、そんな堅物なら嫌いじゃないわ。頑張りなさいね。」
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