第8話「ヘラクレスカンパニーでの初仕事 (1)」
この度は軽い体調不良により、
約束の時間よりも投稿が遅刻してしまう形となりました。
楽しみにして頂いている皆様には大変申し訳ございません。
今日は急遽、2本立てでの投稿予定となりましたので、
後ほど続きのお話を投稿させて頂きます。
──ヒノカ首都・進の住むマンションの一室
ヘラクレスカンパニーでの面接から1週間余り経った後、
進はPCの電子メールを開き、選考結果の確認をしていた。
ヘラクレスカンパニーから来たメールには、
事務員兼Cランクヒーローとしての採用決定の旨が書かれていた。
(……まさか内定を頂けるとは……嬉しい限りです。)
(ヒーロー業界の大手でしたので、正直ダメ元ではありましたが、
やはり面接対策をやっておいて良かったと実感します。)
同じく、進と共にヒーロー試験に臨んだ虎次も、
『Musubi』のメッセージによれば、Bランクとして合格したらしい。
(……何はともあれ、私も虎次さんも内定を頂けて良かったです。)
(さて、今の会社に別れを告げる準備もしておきませんとね。)
こうして、進は現在勤めている会社にて事務の引継ぎを行い、
1ヶ月程残りの仕事や有休の消化をした後、感謝を告げて退職した。
そして、ヘラクレスカンパニー入社日の当日、
進はグレーのポロシャツと、紐付きのジーンズに身を包んでいた。
(……正直、ヘラクレスカンパニーが私服OKだったのは有難いです。)
(今までの会社や面接では、規則上スーツを着ていましたが、
色々と窮屈でしたので、やはりスーツは少々嫌いでしたね。)
そう考えながら進は電車に乗り、ヘラクレスカンパニーへと向かう。
ヘラクレスカンパニーのビルは、面接の時にも見ているが、
黒い外壁とカブトムシのロゴマークが目立つ立派なものであった。
進がヘラクレスカンパニー1階の受付に辿り着き、チャイムを鳴らすと、
面接官を担当していた女性・鳴神禰音が応対に出てきた。
「おはようございます、進さん。こうして会うのは1ヶ月ぶりね。
今日から我が社のスタッフとして、貴方を歓迎するわ。」
「はい、おはようございます。鳴神様。
こちらこそ、この様な大企業で働けることを光栄に思います。」
進は禰音の案内の下、オフィススペースまで移動する。
その道中、進はせわしなく歩くスーツ姿のスタッフや、
老若男女入り混じった、屈強なヒーロー達とすれ違った。
しかし、ヒーローと思しき者の中には、
進の格好を見て笑う者も少数いた。
(見ろよ、あいつはこの会社を只の事務と思っているらしいぜ。)
(ああ、私服でこの会社に来るとは……世の中舐めてんなw)
尤も、禰音の姿を見ると、彼らは直ぐに口を閉じて立ち去ったが。
そして、進は6階にあるオフィススペースへと辿り着く。
オフィススペースでは、スーツに身を包んだスタッフや、
様々な格好のヒーローが、デスクでパソコンと睨めっこしていたり、
書類のやり取りをしていた。
進はヒーローと思しき人々まで、会社の型に嵌っている様子を見て、
少し面白いと感じていたが、飽くまでも笑いを堪えていた。
(……成る程ですね。華やかな異能や強大な力を持つヒーローでも、
ここでは一人の会社員として働いている……微笑ましい事です。)
進が社内の様子を眺めていると、禰音に会議室へと呼ばれたので、
職場の観察もそこそこにして、会議室へと向かった。
会議室に入ると早速、会社のオリエンテーションが始まった。
禰音が進に資料を渡し、真面目な顔で解説を行う。
「──佐藤進さん。貴方には今日から、
ヘラクレスカンパニーの事務職として働いて貰います。
担当して頂く業務は、主にヒーローの活動報告のデジタル化、
備品の管理、現場でのヒーローの補助及び事後処理、
その他社内の諸々のデータ入力が主となります。
一応、直ぐにこれらの業務をやって頂くわけではないので、
そこのところは安心してください。」
(……ヒーローの世界も、意外と業態が決まっているのですね。)
進は禰音の話を聞きつつ、内心くすりと笑っていた。
「そしてヒーローの皆様は、事務を兼業している方もいますが、
基本的には報告書を提出する時以外は来ない方も多いです。
進さんは事務スタッフですので、出社の義務はありますが、
手続さえ行えばテレワークに切り替える事も可能です。
但し、場合により緊急の招集がある事はご留意ください。」
「はい、承知しました。」
禰音は会社のオリエンテーションを終えると、
早速仕事の説明へと入り出した。
「さて、今日佐藤さんに担当して頂く業務は、
午前が報告書のデジタル化訓練、午後が街の巡回の練習となります。
当然ながら初日ですので、私がルールをお話いたします。」
こうして、デスクへと案内された進は、
パソコンの準備を素早く済ませ、練習用のワークシートを開く。
(ヒーローの活動報告書は、場所や怪人の詳細、
使用した備品や周辺の損害など、さぞやる事が多い筈……
……まあ、これも誰かを助けるための仕事の第一歩、です。)
進は身構えながら練習に臨むも、前職での事務作業の経験から、
案外あっさりと練習をこなしてしまった。
しかし、暇を持て余した進の中で、事務職の魂が騒いでしまう。
(……よく見ると、この報告書は少しばかりシンプルですね。
一応、見やすいように加工しておきましょうか。)
それから1時間後、進はワークシートの練習を終え、禰音に報告する。
そして、禰音が進の練習の進捗を見にやって来た。
そこで禰音が目にしたのは──
──お洒落なテキストと色とりどりの文字、
そしてマクロと進お手製のロゴが盛り込まれたシートであった。
禰音が思わず引いた顔で、進に問い掛ける。
「……ちょっと進さん、このファイルは何なのですか?」
「はい、申し訳ございません。ヒーロー会社の活動報告書という事で、
これぐらいビジュアルにも拘らないといけないと思いました。」
進のズレた発言に対し、思わず禰音がツッコミを交えて怒る。
「いや、これは練習用ファイルよ!?スキルが凄いのは分かったけど、
報連相もせずに無駄に労力を費やす事をしないの!
……はぁ、まあ良いわ。兎に角……午後は街の巡回よ。」




