第38話「出酢泥井最終決戦」
虎の子である最終兵器『PMM』が斃されても尚、不敵に笑う恐山。
禰音と虎次は、進の殲滅撃を見たばかりで内心落ち着いていなかったが、
何とか体面を保ち、恐山に降参するように言い返す。
「恐山さん、そこまでです。貴方の言う最終兵器『PMM』は、
ご覧の通り粉々となっていますよ。今更何をするつもりですか?」
「そうっすよ!今の『ぴーえむえむ』どう見てもスクラップ!
進のアニキにぶっ飛ばされたくなければ、さっさと降参するっす!」
しかし恐山は、ふてぶてしい笑みを崩さず、彼らに向かって言う。
「ふむ……お前達は分かっていないようだな。
私は一応『出酢泥井』という組織の長だ。長たるもの、
作戦の失敗を考えて仕込みの一つや二つは行うものさ。
そして進君。今、君が倒したPMMの破片……これには膨大な力が宿っている。」
恐山はそう言うと、PMMが砕け散った場所へと歩き出し、
床からPMMの破片を拾い上げる。
破片からは、青白い血液と思しき液体が滴っていた。
「……序でに話しておこう。私は只のおじさんではない。
『出酢泥井を束ねる者』として、少しではあるが怪人手術を受けているのだよ。
つまりは、ある程度は怪人の力にも適応できる、という事さ。」
恐山はそう言い終えると、何とPMMの破片に食らいつき、咀嚼して飲み込んだ。
(ブチッ……バリボリ……ゴクッ!!)
これを見たヒーロー達は、思わずドン引きしてしまう。
「うぇ……こんな床に落ちた得体のしれない物を食べるの……?
流石に衛生観念に反するんじゃない……??」
「あはは……怪人には何を言っても無駄だよ姉さん。」
そんなヒーロー達を尻目に、PMMの破片を食べ終えた恐山。
すると、彼の肉体はメキメキと膨張し始め、
やがて上半身のスーツが破れる。全身の肌は青白く光るものとなっていた。
「……待たせたな、諸君。私こそが出酢泥井を束ねる世界の支配者、
『パーフェクト・マニュアル・シング』こと『PMT』である。」
その姿を見たヒーロー5人は、異様さから全員が警戒態勢に入る。
「まず……君達ヘラクレスカンパニーには感謝しておこう。
君達がうちのクルーと戦ってくれたおかげで、
我ら出酢泥井の怪人に必要な戦闘データを取る事が出来た。
君達にはその礼として……我が野望の礎となるが良い。」
恐山、もといPMTはそう言うと、手の平を突き出した。
すると、手の平が光ったかと思うと、光線が飛び出していった。
(ビュンッ……ボゴォォン……!!)
やがて、光線は壁の後ろへとぶつかり、大爆発を起こす。
李夢はそれを見て、恐山の変貌振りに少し懸念を抱いていた。
(……速い。既に怪人であったとはいえ、あのビーム砲は速い方だね。
PMMの破片を取り込んだだけで、あんなに凄まじい変化が…?)
そんな李夢の一瞬の隙を突き、PMTはもう片方の手からビームを放つ。
ビームは李夢の方へと向かっていった。
「……ッ!」
李夢も咄嗟に手の平を向け、ベクトルを発生させてビームの軌道を逸らす。
それを見たPMTは感心しつつも、すぐさま次の攻撃に移ろうとする。
「ふむ……実に素晴らしい反応速度だよ、李夢君。
だが、次は全てを破壊する一撃だ。どこへ行こうとも逃げられない。」
PMTはそう言うと、両手を頭上に掲げて、光り輝く球を作り出す。
他のヒーロー達がどう動くかを考えていた中、突如として一人の男が動いた。
そう、佐藤進である。
「──これは、いけませんね。人や建物が破壊されてしまう。
こうなれば──本気の1割を解放します。」
進はこう呟くと、猛スピードで駆け出し、
ステージ上で力を溜めるPMTの下へと向かう。
彼は部屋を凄まじい速さで駆け、PMTのいるステージへとジャンプして上がった。
そして、PMTの頭上の球が大きくなった瞬間──進は、PMTの眼前に辿り着いていた。
「PMT──否、恐山強介。貴方の所業は多くの方の命を顧みないものです。
よって、ヘラクレスカンパニー社則第13条により、貴方をここで排除します。」
その言葉と共に、進の右腕から勢いよく拳が振るわれる。
「──1割パンチ。」
次の瞬間、進の鉄拳がPMT──恐山強介の顔面へと捻じ込まれる。
(ドグォォオッ……!!)
「……おごっふ!?」
──その奇妙な断末魔と共に、恐山はステージの壁に叩き付けられる!
(……バッシャアアアン!!)
ステージの壁に叩き付けられた恐山──もといPMTは、
原型を留めずに壁のシミとなってしまった。
(………………)
「……は?」
李夢でさえも後手に回らせた怪人のボスの、呆気ない最期。
これには他のヒーロー達や、隅で震えていた倉次も、
思わず目を丸くして見据えるしかなかったのであった。
一方の進は、目を伏せながらも静かに言い放った。
「──任務、完了。これにて出酢泥井は店仕舞いです。」
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