第3話「鉄腕ヒーロー葦原虎次」
(──ふと、思う事があるのです。)
(人生、このまま惰性で生きていて良いのだろうか、と…。)
ヒノカ国の首都に住まう会社員・佐藤進はこの日、
自身の今の生活について、ふと振り返っていた。
(私は過去、勉強と運動に打ち込んでいましたが、
やりたいことが見つからず、惰性でIT事務の会社に入りました。)
(そして会社に入っても、会社が終われば真っすぐ家に帰り、
一人で運動やゲームに勤しむ生活…偶に怪人は倒していますが。)
(…本当に満足な生活でしょうか。)
(おまけに私はお話が苦手で、友達なんて望めませんからね。
いっその事、キャリアアップを目指して転職すべきか…。)
進は自身の将来を憂い、どうすれば納得の行く人生を送れるかを考えた。
(まあ、「今のヒノカはITが高い需要を誇る」と就活サイトで見ましたし、
取り敢えずは、ソフトウェアの案件がある受託開発にしましょう。)
こうして進は、パソコンから就活サイトを開き、
受託開発のSEの求人に応募した。
そしてWeb面談を経て数日後、進の面接の日がやって来た。
この日の面接会場はヒノカ首都・紅唐区にあるビルであった。
進はスーツを着て、電車で面接会場へと向かっていた。
(面接なんて久し振りですね…果たして、上手く話せるでしょうか。)
しかし、そんな進の心配をよそに、紅唐区ではとある事件が起きていた。
◆
和を重んじる郷土品と料理、そして現代都市が融合した町・紅唐区。
そんな紅唐区の空にて、突如としてモーターの如き羽音が鳴り響く!
(ブゥゥーン、ブルブルブゥーン!!)
「怪人だー!」「逃げろ逃げろー!」「押すな押すなー!!」
「おほほほほほ!さあ、このカリラ様の前にひれ伏すが良いど~!」
上空では、カリラと名乗る怪人が縦横無尽に駆け回りながら、
騒音と唾をまき散らして、人々を困らせていた。
その姿は、ゴリラの肉体に蚊の頭部と羽を持つ、
何とも形容しがたい…というか、正直直視したくないものであった。
「どうざます、このバイクをも超えた凶悪な羽音!
そして、ゴリラの肉体が織り成す…圧倒的パゥワァー…!!」
カリラはそう言うと、建物や街灯の周りを飛び回り、
次々にパンチし、容易くヒビを入れていく。
落ちてくる瓦礫。逃げ惑う住民たち。紅唐区は阿鼻叫喚となった。
「さあヒーロー、来るが良いざーます!
あたすがおめーらを倒して、最強の怪人であると証明するざます!」
──その時、凛とした青年の声が響いたのであった。
「そこまでっすよ、キメラ怪人。」
カリラが声のする方を見ると、金と黒の混ざった髪色をした青年がいた。
手にはバットを持っており、虎の描かれたスカジャンが眩しい。
「…何ざます、ヒーローじゃないチャラ男に用はないわよん。」
鬱陶しそうに返すカリラに対し、青年も一歩も引かず言い放つ。
「こっちは用が有るんすよ。勝手に人様の街を荒してんじゃねぇっす。
取り敢えず、お前はこの葦原虎次が仕留めるっすよ。」
虎次と名乗る青年はそう言うと、バットを片手にカリラに突撃──
──すると見せかけて、何と右手を振りかぶり、
勢い良くバットを投げ飛ばした!バットは勢い良く真正面に飛んでいく!
(ギュンッ!ビシィッ!!)
虎次の攻撃に意表を突かれたカリラは、
飛んできたバットを躱し切れず、バットが脇腹を掠めてしまう。
(…チッ、油断したざます。羽が揺れて直ぐに飛べないざます。)
(賭けが上手く行ったっすね…バットを振ると見せかけて、
ブン投げて相手の動きを止める…これで隙が出来たっすよ。)
その隙を逃さず、虎次はカリラの懐へと駆け寄りながら、
右腕のスカジャンの袖を捲る。
スカジャンの袖の下からは、何と改造された機械の腕が出てきた。
「男のロマン、お前にも教えてやるっすよ。」
虎次はそう言うと腕を伸ばし、右の手の平を広げてカリラに突き付ける!
「ブラストキャノン!」
(ボッ…ドッゴォォンッ!!)
虎次の叫びと共に、手の平の砲身から凄まじい熱線が放たれる。
カリラは「しまっ…」という台詞と共に、爆発へと巻き込まれた。




