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第21話「進と李夢、遂に出会う」

進の眼前に立ちはだかる李夢。

Aランクとしての静かな圧力が、周囲に波及する。


しかし、李夢の口から出た言葉は意外なものであった。


「……姉さん、じゃなかった。禰音さんが迷惑を掛けていないかい?」


(……ん?)


進からすれば、李夢の反応は予想とは違っていたものであったのだ。


彼は嘗て、ヒーローにして上司である女性・禰音の研修を受けていた際に、

勝手に怪人を殴りに突撃したという負い目がある。


その彼女の関係者ともなれば、

自分は恨まれても不思議ではない、と進は考えていた。


そんな進を余所に、李夢は話を続ける。


「いや、禰音さんは会社だと文句無しの良い上司なんだけどね……。


その分、家だと洗濯物をそこら辺に投げ捨てたり、


ちゃっかり僕をおだてて、家事をさせたり……


意外と横着でだらしない一面があるんだ。


そんな感じだから、会社でも迷惑を掛けていないかなー……と思って。」


それを聞いた進は「少し公私混同では?」と思いつつも、

李夢に向かい一礼する。


「成る程……色々と話したいことはありますが、謝るのは寧ろ私の方です。


まずは私が今まで、社会人並びにヒーローとして至らぬ故に、


禰音様に手間を掛けさせました事を、深くお詫びいたします。


そして、虫の良い話ではあるかも知れませんが、


『過ちには仕事で報いて返す』という事が、


社会人として一番の責任であると、私は捉えております。」


彼は何と謙虚にも、真っ先に自らの非礼を詫びた上、

仕事での礼儀についても心得ているではないか。


(……え?いや謙虚過ぎない?僕が謝る筈だったんだけどな。)


「……えー……確かに失敗は失敗だけど、今それ言っちゃう?


別に、過去の失敗は反省していれば良いんじゃないのかな?


新人なら、誰だって失敗の一つはするものだし……。」


そんな変な感じのやり取りが有ったものの、

李夢は進に仕事の内容を伝える。


「……まあ、さっきの話はそれとして、


取り敢えず佐藤さんには、禰音さんから預かった紙の書類を、


スプレッドシートにデータ化して欲しいんだ。


君の実力のテスト、だと思ってやってみてくれるかい?」


李夢はそう言うと、小脇に抱えていた書類の束を進のデスクに置く。

書類の中身は、ヒーローの報告書であった。


紙の束の厚さを見るに、A4用紙50枚分はありそうな文量だ。


進が書類と睨めっこをする様子を見て、李夢は静かに考えていた。


(……残りの一日で終えるには、少し厳しめな仕事かな?


でも、彼の事務職のスキルを見るならば、シンプルにこれが一番……。)


しかし李夢の予想に反し、進は手際良く、

スプレッドシート内のフォーマットに文章を打ち込んでいく。


特に、ショートカットキーをフルに活用しており、

その速さと手捌きは、まるでピアノの狂騒曲のようであった。


結局、進は本来ならば帰りの時間まで掛けて終わらせるべき仕事を、

予定よりも数時間早く終わらせてしまったのだ。


それを見た李夢は少し驚きつつも、直ぐに平静を装う。


「……早いね、流石に禰音さんが太鼓判を押すだけの理由はあるよ。


事務員としては合格だと思うけど、君の実力を知っておきたい。


だから、今日は僕が任務に連れて行くよ。」



◆


こうして進と李夢は、スタッフの運転する車で巡回業務へと向かう。

社内では李夢が、任務の内容を進に説明する。


「……今日は早速で悪いけど、電煌区の外れにある、


怪人組織『魔釣』のアジトへと突入をするんだ。


突入と言っても、佐藤さんは後ろから僕の戦い振りを見て学んで欲しい。」


李夢は新人である進を気遣っていたつもりであった。

しかし、進は怪人をみすみす見過す事は出来ず、思わず言葉を返した。


「お言葉ですが、私はただ見ている訳にはいきません。


その怪人退治の任務は、私にも手伝わせて頂けますでしょうか。」


「……佐藤さん、今話を聞いていなかったの?


ここで君に万が一の事があれば、取り返しが付かないかも知れないんだよ?


だから、戦闘は僕に任せて、君は……」


李夢は当然抗議するも、進は一歩も引き下がらなかった。


「……李夢様、申し訳ございませんが、


私は事務員ではありますが、ヒーローという肩書も背負っているのです。


一度引き受けた仕事は、責任を持って行うのが筋であると考えています。


それに……私は一応、宇出さんにも勝ちはしています。


ですので……どうか考え直していただけますでしょうか。」


進は李夢に対し、誠心誠意向き合って物申しをした。


その言葉に対し、一瞬李夢は渋る様子を見せる。


しかし、進の力を見る機会である事、

そして何よりも、進が今までの戦いを生き延びている事から、

最終的には李夢の方が折れて、進の戦闘への参加を認めた。


「……はぁ、そこまで言うなら仕方ないね。


……絶対に、自分の命は自分で守ってよ?」


「無理を言って申し訳ございません。


それでは……どうかよろしくお願いします。」


こうして進と李夢は、初の共同任務に向かうのであった。

この度は日を跨いでの投稿となってしまい、大変申し訳ございません!

次回の話も、今日中に投稿させていただく予定です!


今回のエピソードはいかがでしたでしょうか。

もしも「この小説が面白い!」「これからの展開が気になる」という方がいましたら、

ページ最下部から★での評価や、ブックマークをして頂けましたら有難く思います。

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