第20話「つっこみ屋と佐藤進」
──李夢が犬守区にて、ノート男の対処に当たっていた同日。
先日、進はBランクヒーローである宇出太志と闘い、
対話(?)の末に、彼に仁義を取り戻させることに成功した。
……それはそれとして、
宇出に今までの行いに対する罰はきっちりと宣告したのだが。
しかし進は、その勝利に驕る事はなく、
今日も今日とて事務作業へと集中していた。
(──人生とは常に学びの連続。
何時までも一つの成功に胡坐を掻いてはいけませんのでね。)
そんな進であったが、昼休みにスマホでゲームのサイトを見ていた時、
一人の男性が進の席に訪れたのであった。
「貴方が、佐藤進はんですか……?」
「はい、そうです。それで、私にどの様な御用でしょうか。」
進が声のする方を振り返ると、そこには金色のスーツに身を通し、
背中にハリセンを担いだ男性が立っていた。
「ああ……お休み中の所、申し訳ございませんな。
わては『つっこみ屋』というモンでして……
ぼちぼちCランクヒーローをやらせて貰ってますねん。」
「そうですか……それで、
わざわざ休みの時間に報告書を届けに来られたのでしょうか?」
進が応対すると、つっこみ屋は少し緊張した面持ちで、こう返した。
「いや……違いますねん。今日は書類ではなく……その……
……宇出太志…宇出先輩の事ですわ。」
「……ああ、私が先日、コロシアムで戦ったBランクの方ですね。
もしかして、貴方は彼のファンでしたでしょうか。
一応、宇出様は今までに規約違反の行為をされておりました故、
私が試合という形で責任を取る事を約束させましたが……
……もしもお気分を害されたならば、謝罪いたします。」
進は、自分が宇出を叩きのめした事で、
つっこみ屋の気分を害したのではないかと心配していた。
しかし、つっこみ屋の反応は真逆であった。
「そ、そんな、進はんが謝る必要はあらへんで!
寧ろ逆、宇出はんを叩きのめしてくれて、有難うですわ!」
「……と、言いますと?」
「宇出先輩……あの方は、ヒーローを始めたばかりで、
右往左往していたわてに、親切にヒーローのやり方を教えてくれたり、
食事にも誘うてくれましたねん。ですが……
……最近は周りへの人使いが荒くなったり、
こないだはわてにも『先立つ物』と称して、お金をせがんできたんです。
宇出はんの事は尊敬していましたが、最近の彼は何かヒーローやあらへん……
そんなモヤモヤが、心の奥底で引っ掛かっていたんですわ。」
「……成る程……確かに、尊敬されている方が、
裏で悪事に手を染めていたとなれば、さぞお辛かった事でしょう。」
進は少し寂しげな面持ちで語るつっこみ屋に対し、同情の視線を寄せる。
そんなつっこみ屋であったが、少し晴れやかな笑みになって言った。
「──ほな訳で、わいは心のどこかで、
『あの方は、一度痛い目を見て行いを分かった方が良い』、
とも思っていたのかも知れません。
それが、宇出先輩が改心されるという結果になりますとは……
進はん、心の閊えが取れた気がしますわ。本当に感謝いたします。」
「はい……私なんかの活躍が助けになったのであれば、
それ以上の嬉しい言葉はございません。どういたしまして。」
宇出の悩みが消えた事で、つっこみ屋は意気揚々と部屋を出る。
「ほな、おおきに!進はん!また何時か、細やかなモンではありますが、
お礼の品を持って帰ってきますわ。少し待っとってください!」
つっこみ屋はそう言い残し、オフィスエリアを去っていった。
進はその背中を見て、手前味噌と思いながらも、
自分の力が人の心を救えたことを、少し誇らしげに思うのであった。
そして昼休憩が終わり、進は仕事に戻っていった。
進は午後の業務に向けて、パソコンの前にきっちりと待機していた。
(さて……午後もきりきりと働きませんと。
今日はどんな仕事が出て来るのでしょうか……。)
進が仕事の事を考えながら席に座っていると、
オフィスエリアの扉が開き、誰かが入ってきた。
ふと進が扉の方を見ると、黒いシャツとパンツが眩しい、
中性的な美青年が立っていた。
Aランクヒーロー・鳴神李夢の登場だ。
李夢は進の方へと近づくなり、早速話しかけてきた。
「……あー、初めまして、だね?
君の事は禰音さんから聞いているよ、佐藤進さん。
僕の名前は鳴神李夢……君の上司、禰音さんの弟さ。
一応、僕もAランクヒーローをやらせて貰っているよ。」
一難去ってまた一難?果たして、進と李夢のこれからや如何に!
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