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第17話「進、リングで燃えろ」

──ヘラクレスカンパニーB1F・地下コロシアム入口前


ヒーロー会社であるヘラクレスカンパニーには、

1Fや地下階にトレーニングエリア、そしてコロシアムが配置されている。


特に地下コロシアムは、日夜ヒーロー同士の実践訓練に使用されており、

予約が取り辛いと評判になっていたりする。


その日、進は会社から借りた専用のジャージに身を包み、

Bランクヒーローの広告塔・宇出太志とドアの前で向かい合っていた。


表情を変えずに立つ進を見て、宇出が煽りの言葉を掛ける。


「ハッハ!遂に対決の時が来たじゃないか、佐藤進。


お互い、精々悔いの残らない試合にしようじゃないか!


尤も、事務員上がりのお前では、俺に勝つこと等不可能だがなぁ!」


その言葉に対し、進も静かに、しかし力強く言い返す。


「宇出さん……私もそれなりに鍛えてきたつもりです。


この3日間、ジムに通い詰めた他、ボクシングのコツを動画で見たり、


今までに通っていた空手の極意を復習したりしてきました。


ですので、『精々私も活躍できるように頑張らせて頂きます。』」


「……ケッ、そんな風に余裕をこいていられるのも今の内だぜ。


お前は俺の『フトショット』の餌食になるんだからな……」


こうして、進と宇出は互いにバチバチとした雰囲気の中、

コロシアムへの扉を潜り抜ける。


扉を越えると、部屋の中央には豪勢なリングマットが配置されていた。


周囲では多数のライトがコロシアムを照らしており、

マットの外側の席では、多くのギャラリーが進と宇出の方を見つめていた。


ギャラリーの席には、禰音と虎次、そしてスタッフの須田さんらが座っている。


虎次は、進に宇出の果たし状が渡されてからの3日間の会話で、

進との話で宇出との試合を知っていたのだ。


進の姿を見た禰音と虎次は、彼へと激励の言葉を浴びせかける。


「進!あんなマナー違反のリーゼント、さっさと畳んじゃって!!」


「アニキならどんな相手でもイチコロっすよ!」


一方の宇出にも、ギャラリーから応援する者がいた。

拝金主義を掲げる幹部達と、チンピラ染みたヒーロー達である。


「何がヒーローだ、あの佐藤とかいうヒョロガリは!


宇出さん、あんな奴、一瞬でぶっ飛ばしちゃってくださいよ!」


「宇出君、君の力を以て、あの若者に立場を教えてやりなさい。


我が広告塔に挑むという事が、どういう事かをね。」


ギャラリーからの声援を受けて、ドヤ顔をしながらリングに上がる宇出。

一方の進は、ギャラリーへと一礼しつつも、凛とした佇まいでリングに上がった。


──交錯する進と宇出の視線。


「佐藤進……お前はこの宇出太志のキャリアになって貰うぜ?」


「そうですか……兎に角、楽しい試合にしましょう。」


リングに名状しがたい髪型のレフェリーが入り込み、カウントを取る。


そしてゼロの合図と共に、先に宇出が右手でパンチを仕掛ける!


「オラァ!これは挨拶代わりだぜぇ!?」


対する進は、それを右に躱し、最小限の動きで様子見のパンチを繰り出す。


しかし進のパンチは、日ごろの訓練により、

本気を出さずともその威力は十分なものであった。


宇出は最初、進の一撃を侮っていたが、

次の瞬間には本能的に速さと圧を察し、慌てて後ろに飛び退く。


(……何だ、今の佐藤のパンチは!何となくだが……


当たっていたら、やばい気がしたぞ……ヒョロガリの癖に、


一体どうなっていやがる!?)


宇出は一瞬狼狽えつつも、直ぐに気を取り直す。

「この隠れた強敵を下せば、自分にも箔が付く」と考え、

本気を出し始めたのであった。


(様子見は無しだ……ここは一気に仕留めてやる!)


宇出はこう思案すると、素早いステップと共にパンチを繰り出し、

進を追い立てていく。


一方の進は、宇出の拳がかすりつつも、

ステップや腕でのガードを駆使して、何とか凌いでいる。


そんな進を見て、宇出は彼を煽り倒す。


「ハッハ!さっきは凄いパンチを見せたかと思えば、


俺が少し本気を見せれば逃げ惑うだけか!


そんな体たらくでは俺の事は倒せないぞ!


ホラホラ!少しは勇気を出して掛かって来いよ!」


宇出は笑いながら、進に対してラッシュを仕掛けていく。


進は徐々に追い詰められている──ように見えていたが、

実は、宇出の動きをつぶさに観察していたのだ。


(……防御こそが最大の攻撃。


相手の動きを見て、ここぞという時に最大の一手を狙うのです。)


一方の宇出は、進が日和って防御に徹していると思い込み、

止めの大技を繰り出さんと、深呼吸を行う。


(……これで終わりだ、佐藤進……!


俺の『フトショット』の威力、その身で味わうが良い!)


進は宇出の拳を、両腕を縦向きにして合わせる事でガードしていた。

その進の元に、宇出の渾身の右ブローが迫る!


しかし次の瞬間、進はそれを予期していたかのように、

右へピョンと躱したかと思うと、次の瞬間にはアッパーの構えを取っていた。


「一割パンチです」


そう進が言うと、彼の右拳が軽く振り上げられる。

そしてその拳は、宇出の鳩尾を捉えた。


(ドグォオッ!!)


進にとっては何気ない拳であったが、宇出にとっては圧倒的な一撃であった。


「マックラッ……!?」


宇出は奇妙な断末魔を上げながら、宙を舞い吹っ飛んでいく。

そして、どこかで見た漫画みたいな左側臥位になりながら、マットへと沈んだ。


その思わぬ幕切れに、ギャラリーたちは唖然となる。

虎次も禰音も、口をあんぐりと開けて固まっていた。


一方の進は、少し何とも言えない顔をしながら、頭を掻いていた。


「……少し、やり過ぎてしまいましたでしょうか?」


こうして、進と宇出の対決は、一方的な結果で幕を閉じたのであった。

──進、圧倒的勝利!


今回のエピソードはいかがでしたでしょうか。

もしも「この小説が面白い!」「これからの展開が気になる」という方がいましたら、

ページ最下部から★での評価や、ブックマークをして頂けましたら有難く思います。

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