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異世界と混ざった現実世界でデスゲームとスキルライフを満喫する!~原生林に飲み込まれたキャンプ場からお送りします~  作者: 黄玉八重


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EP006[慣れて来た新生活]

 初日から中三日が過ぎ、そして五日目を迎えた。

 今は早朝の時間帯。杉浦(すぎうら)大地(だいち)は朝食と昼食分の肉を確保する為にラージラビットを追っていた。

 ドッスドッスドッス。

「微妙にすばしっこくて届きそうで届かないの何なんだよ……」

 愚痴を溢しながらウサギを追う杉浦の後方には杉浦に付き合って早起きした三枝(さえぐさ)妙子(たえこ)がのんびり朝の散歩を楽しんでいた。そもそもウサギにナイフが食い込んでいくシーンなど見たくはないので後をゆっくり追う割には視線は美しい湖畔に向いていた。妙子の隣では同じく散歩を楽しむチャーチグリムのストレルカの姿もあった。


「すぅ~~~。ふっ!」

 ノンアクティブであり追えば逃げるラージラビットの首筋に杉浦の持ち物である万能サバイバルナイフの切っ先が深く刺さった。バタバタと暴れる大きなウサギの抵抗で腹部を数度蹴られながらも身体を抑え込んでいる内にラージラビットの遺体は煙と消え1㎏のウサギ肉塊が地面に転がった。

 上手くナイフ刺すことが出来たのは偏に【短剣術】のスキルのおかげだ。覚悟が決まったとしても角度や握りが悪いと下手に傷つけるだけでウサギが苦しむ時間が延びるだけなのだ。二日目の朝にストレルカの護衛の下、杉浦が苦しめてしまったラージラビットが死んだ瞬間にスキル取得が頭に浮かんだのはウサギに取っても杉浦に取っても幸いだった。


 無事にウサギ肉塊を確保した杉浦はこれまた新たに取得した【自在倉】に肉塊を放り投げると一息吐いてから妙子の元へ歩み寄った。

「大地君、お疲れ様」

「まだ慣れないから本当に疲れますよ。ストレルカも付き合ってくれてありがとう」

「わん!」

 新世界での新生活が始まってからというもの各々が出来る事で互いを支えフォローする事で生活の向上を目指す運びとなったのは必然だった。

 その中で杉浦はスキル関連の研究と開発を担当する事となる。その一環として目に見える自在倉の取得を目指した際に妙子の協力を要請したのだ。スキル取得の条件として考えられるのは。

 ①初回ラクラク取得ボーナスの利用。

 ②正しい手順に従ってスキルの条件を満たす事。または実際に使用する事。


 各々の取得時の情景から②の使用する事に重点をおいた杉浦は妙子に手を添えてもらいながら杉浦の手を用いて自在倉を開けてもらう事にしたのだ。杉浦の提案に妙子は二つ返事で了承して彼を背後から抱き締める様に両手を握る。

「お妙さん……当たってる……」

「大地君がしてほしいって言ったんじゃん!」

 背中に当たる確実な双丘の膨らみに照れる杉浦を一喝した男前な妙子は気にする素振りすら見せずに杉浦の指先を重ね合わせた上で自在倉を発動させると、杉浦の指先にも何かを掴み引き裂く感覚が返って来る。


【スキル:自在倉を取得しました】


 おぉ!厚めのスライム皮を引き裂く様な感覚に従うだけで目の前に亜空間が口を開き、脳内に取得のお知らせも浮かび上がった事で実験は成功した。同じく千代は妙子が、駒原には杉浦が手解きをする事で全員が自在倉のスキルを取得することが出来たので各々重い荷物を持ち運ぶ必要性が無くなった事で移動が身軽となり色々と便利になった。

 ただ、目に見えずサポートも難しい杉浦の【視覚拡張】などはイメージも固め辛く取得は後回しとする事が決まったのだ。

 その他にも今後は大工の真似事が必要と考えた杉浦の試行錯誤の結果、複数のスキルを取得することに成功した。


 * * * * *

【スキル】

 ◆自在倉Lev.2 ……熟練度56/1000 SP:0

 ◇内包マスタリー≪袋口Lev.5/容量Lev.1/下級魔法袋作製≫


 ◆短剣術Lev.1 ……熟練度813/1000 SP:0

 ◇内包マスタリー≪短剣の心得Lev.2/短剣機動Lev.2/下級戦闘センス≫


 ◆彫刻Lev.1 ……熟練度557/1000 SP:0

 ◇内包マスタリー≪彫木Lev.3/彫石Lev.1/下級付与術≫


 ◆加工Lev.1 ……熟練度320/1000 SP:0

 ◇内包マスタリー≪木工Lev.3/石工Lev.1/下級切断センス≫

 * * * * *


 数日程度のキャンプ生活は苦でもなかった杉浦と違い、女性陣はすでに少しやつれた様に初日の元気は無くなっていた。皆のママでもある食料事情を担っている三枝千代(さえぐさちしろ)は普段のゆるふわな気配が薄くなりキャンプ場での睡眠を満足に取れていないのか徐々に疲れが溜まり始めていた。

 また、やはりお風呂が無い。水浴びも出来ない環境で汚れや汗がどうしても完全に拭えず精神的にも負担が掛かっているとの事で早急な対策を杉浦に訴えてきた。もちろん淑女として、また年上として直接的には言わないけれど匂わせる言葉尻があったり娘の妙子が察して杉浦に耳打ちする場面もあったので緊急性は理解しているつもりだった。


 初日からの希望や改善点は各々不満を持つ点をメモに記載していく事で優先順位や環境改善に向けての意見交換を日々行ってきた。

 そして、生活環境改善に必要な事はやはりスキルの取得だと意見を一致させた全員で欲しいスキルを一覧にして取得方法の研究にも移行している。

 当然普段の生活に必要な役割分担の作業もあるのでうまく調整しながら、また取得済みのスキルから考えた取得条件についてもある程度の取得事情は見えてきた。


 最終的な目標は大工業を取得して女性陣が希望している施設を建てる事としているが、材料だけではなく道具も必要なのが地味に問題だった。ノコギリなどの一般的な道具は駒原が持っていた為すでに借りている。その他彫刻刀も持っていたので同じく借りることが出来た。が、電気を必要とする道具は当然使用できないし、チェーンソウは燃料残量が迫って来るのであまり積極的に使いたくはない。

 などなど一つをクリアすれば次の問題が芋づる式に出て来るので女性陣がダウンするまでの期間引き延ばす為にも杉浦は三枝家に献身的に声を掛け進んで手伝いを行う事となった。


 杉浦以外の新生活についても少し説明すると、キャンプ場のオーナーである駒原(こまはら)昭吉郎(しょうきちろう)は倉の整理を進めつつ杉浦に技術的または道具的なアドバイザーの立場に立っている。彼自身も本宅が潰れている為倉での生活をしており、睡眠の質が落ちた事は同様に愚痴を溢していた。

 次に妙子だが、自在倉を有効に使用して熟練度稼ぎと杉浦宅&三枝宅に毎日通って使えそうな物を回収してもらっている。行き来は瓦礫が多く大変で懸念していたのだが、その点は杉浦が契約したチャーチグリムのストレルカが足役を担う事で解決した。ストレルカはスキルで身体の大きさを変えることが出来る為、大きくなったストレルカに妙子が跨って移動することで足場の悪さを解決したのだ。流石に鐙や鞍を付けているわけではないので駆ける事は出来ないけれど、それでも移動疲れを軽減する事が出来たので荷物集めを頑張ってもらっている。


 続いて妙子の母、千代だが予定通り畑仕事に従事してもらっている。また、野草採取も行ってもらい朝昼晩のご飯の用意も一任されているので皆頭が上がらない。千代が駒原から借りた鍬で地面を耕すとすぐに解れて柔らかい土へと変化する。杉浦が鑑定眼で違いを確かめても固い地面が畑向きの土に変化している事は確認済みだ。

 種変換は元となる種に貴賎なく、木の実から確保した種が春野菜の種に変換されるシーンを杉浦は目撃した。そして土に植えて水をやり、翌日。芽が出るのだ。豊穣スキル凄い……。


「ご飯分のお肉は確保したし、今日もやりましょうか」

 妙子が杉浦が作製した下手くそな木短剣を握り呟く。妙子も只の暇つぶしで早起きして杉浦の狩りに付いて来たわけでは無かった。同様の手段でウサギを狩った妙子も【短剣術】を取得しており、自衛の為にスキルレベルを上げる手段として朝と夕方に稽古をしているのだ。


「じゃあ、千代さんが起きてくるまでやりますか」

 杉浦も妙子と同じ木短剣を手に構え、軽い動作で打ち合いを始める。

 スキルの熟練度の上昇は使用する事が必要となっていて、杉浦の【視覚拡張】や妙子の【自在倉】は基本的に常に使用している部類なので1分に1上昇していくのだが、今回上昇させたい【短剣術】はナイフや木短剣を握って意識しないと熟練度は上がらず成長が遅い。

 もちろん普段使い以外に戦闘を意識したナイフの使い方などを知らない杉浦たちだが、内包マスタリーの【短剣の心得】が握り方や急所への攻撃タイミングを教えてくれるし【短剣機動】がナイフ等を使用している間の身体の動かし方を教えてくれるので新体操も驚きのバック転も二人は決めることが出来る。


 面白いのは通常の握りと逆手握りは別の攻撃方法や身体運用となるので互いに攻撃役防御役の交代と握りも変更しながら軽い打ち合いと最後は型稽古でどちらかが背後から押さえ込み短木剣を急所に添える事でひと試合が終わる。回復薬も回復魔法も入手していない状態で本物の刃物を持っての訓練をする勇気は流石に無いので、地道に朝の狩りの後は30分~1時間くらいの訓練時間を設ける事にしている。

 4人の中で駒原は初老で痛風持ち。戦闘は期待出来ないし護衛のフジも只の大きいウサギ。戦闘要員というよりはマスコットなのだ。妙子の母である千代も戦えない歳ではないが、キャンプ場メンバーの食糧事情を支える重要人物にはキャンプ場で悠々と畑仕事に精を出してもらいたい。

 そうなると外回りや新天地開拓などで戦闘の機会も有りそうな若い杉浦と妙子が矢面に立つべきだろうと相談した結果、スキルの熟練度上げの時間も確保しつつ色々と頑張ろうという運びとなった。杉浦がキャンプ場周辺の魔物の分布や地図作製に外回りする際は妙子が防衛要因としてキャンプ場に残り、逆に妙子が街方面へ資材確保に行く際は杉浦がキャンプ場に残って彫木や木工のレベル上げに勤しむ。


 しばらく熟練度上げに勤しむ二人がその手を止めたのは、朝御飯完成を知らせるストレルカのひと鳴きが聞こえた時だった。

「はぁ、はぁ。やっぱりお風呂に早く入りたいわねぇ……」

 妙子の言葉には杉浦も同意だが風呂だけが不足しているわけでは無い。

「トイレも氷室もキッチンも浄水器も必要だって。目下トイレはスライムが見つかり次第の予定で穴を掘る技術も管理人さんと相談中ですよ。もうちょっと待ってください」

「わかってるわよ。大地君ばかりに任せちゃって悪いけど、人手が必要なら手伝うから遠慮なく言ってね」

 息を荒くして倒れていた妙子は杉浦の計画を聞きながら差し伸べられた手を握り起き上がる。

 何気なく聞いた予定だったが妙子からしてみれば「あれ?甘え過ぎか?」と思わざるを得ない程に忙しそうだ。確かに時間が有れば木材を片手にナイフか彫刻刀で地道に熟練度稼ぎもしている姿をよく見ていた。彼が頑張っている間に自分は多めのお湯を用意して湯あみをしているのだから申し訳なさもひとしおだ。胸の一つや二つくらいはご褒美に揉ませてあげようか?


「何ボケっとしてるんですか? 早くご飯食べましょうよ」

 妙子が妙な事を考えているとは露知らず、杉浦は妙子をその場に残してさっさと歩き始めていた。

「ちょっと!エスコートくらい出来ないとモテないわよ!」

「明日をも知れぬ状況で色恋考えて行動出来ないですって……。早く来てくださいよ、お母上の元までエスコート致しますので」

 生意気なっ!と妙子は肩パンチを繰り出しながらも先ほどの色っぽい考えはどこへやら……。意識は朝御飯に移っていた。

読み終わり『続きが気になる』『面白かった』など思われましたらぜひ、

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よろしくお願いします。

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