17-5話 反省
ユウキの禁欲生活二日目の夜。
勇者一行はいつもと同じように次の町へと向かう道を歩いていき、夕暮れ時にいつもと同じように家を建てて休んでいた。
だが、寝る直前という時間帯のリビングでテーブルに付いている者が二人……ユウキとクロエルだった。
お互い対面となって座っている二人であったが、二人とも黙っており、静かく重たい空気となるリビング。
二人とも黙っているとは言ってもそれぞれ態度は違う。
ユウキの方は何か悪さをしてしまった子犬のようにシュンとして俯いているのに対し、クロエルの方はその子犬の飼い主のようににらみを利かせていた。
そしてその沈黙を最初に破ったのはクロエルの『はぁ……』と、とても重たいため息だった。
「ねぇ、なんで夜に呼び出したかってわかってる?」
「……はい……」
「正直私さ、ユッキーがふーみんに気に入られようと色々頑張っているのはなんとなく感じていたし、そういった頑張る姿勢はいいな、って思っていたからユッキーのことを見直していたんだよ?」
「ありがとうございます……」
「なのにさぁ……一日も我慢できないってどういうこと?」
「……」
「今だから言うけど、正直ユッキーが一週間のオナ禁宣言した時に『ユッキーのことだからどうせ3日で我慢できなくなるんだろうなー』、って思ってたんだよね。でもさぁ……実際はそれを圧倒的に下回っていましたってどうなのよ?」
「マジですんません」
昨日の時点ではあまり無粋なことを言う気はなかったクロエルだったが、流石にあれだけ自信満々で高らかにオナ禁宣言をしたのに、結局一日も我慢できなかった彼女に圧をかけている。
そして、流石に我慢ができていないという自覚があるのか、クロエルの目を真っすぐ見ることができずに、ただただ俯くユウキ。
普段は彼をいじめる側ではあるが、何も言い返せない屈辱を受けても尚、黙っているしかないみたいだった。
「っていうかさ、ユッキーって本当にエロい気持ちを抑える気あるの? 本気でそう思っているならオナニーなんてしないと思うんだけど」
「い、いや……ふーちゃんに嫌われたくないし、抑えようとはしているのよ」
「でも結局オナってるじゃん」
「違うの! 昨日はしょうがなかったの!」
「何がしょうがないのよ。昨日オナ禁するってドヤ顔で宣言したくせに言い訳するの?」
「聞いて! クロは知らないと思うけど、昨日ふーちゃんがスライムに襲われた時にふーちゃんの服の中にスライムがはいっちゃって、私が服の中のスライムを取ることにお願いされたの。寝ているときにその時のことを思い出しちゃって……」
「……そういえば昨日ふーみんに殴られたみたいだけど、何をしたのよ?」
「昨日の寝る前には気づいてなかったんだけどさ、よくよく思い返してみたらふーちゃんの服の中に手を入れた時にスライムと勘違いしてふーちゃんのお胸を触っちゃってたみたいなのよ……」
「はぁ!? 何やってんの!?」
「も、もちろんわざとじゃないのよ! ただ……夜にベッドで寝っ転がっていると、ふーちゃんに対する罪悪感と共に、あの時の感触をもう一回味わいたいなー、ってふと思っちゃったの。そんで試しに自分の胸を触ってみたんだけど、私とふーちゃんのじゃ大きさや弾力とかが違うし、全然ちがう感触だったのよね。でも触り方とか変えてみたらあの時の感覚が蘇るかなー、って自分の胸を揉み続けていたの。しばらくそんなことをしててふと思ったんだけどさぁ……ふーちゃんのお胸を触った手で自分の胸を触ってるこの状況ってお胸の間接キスじゃね? って気づいちゃったのよ。そしたら、もう後は止まらなかったわね! あぁ……! 私のお胸とふーちゃんのお胸が濃厚接触……! って思うとめちゃめちゃ興奮して、あそこがバーニングしちゃって――」
「絶っっっっ対反省してないでしょ、あんた。何、昨日の一人遊びの詳細を長々話しているのよ。聞かされるこっちの身にもなりなさいよ」
さっきまでションボリしていたのに急にテンション上げてオナニーの詳細をペラペラしゃべりだすユウキを制するクロエル。
そんな彼は反省の色が見えないユウキにイライラすると同時に、なんで私はこの変態の恋愛を手伝うって約束しちゃったんだろう……と少し後悔の気持ちが芽生えてきていた。
だが、クロエルがユウキの相手にうんざりしてきたそのタイミングに、『ガチャリ』と、リビングの扉をあける音がした。
「あら? ユウさんとクロさんまだ起きていたのですね。もう夜も遅いですよ?」
入ってきたのはパジャマ姿のシスティア。
恐らくトイレか何かで部屋から出てきたら、リビングの方で電気がついていたのを見て気になって入ってきたのだろう。
思わぬ割り込みが入ってきたところではあるが、そんなシスティアの参加にユウキはぱぁっと表情が明るくなり、彼女の元へ走って抱き着いて行った。
「シスゥゥゥゥゥゥゥゥ! 来てくれてありがとぉぉぉぉぉ!」
「わわっ! ユウさんどうしたのですか?」
「聞いてよシスぅ……クロがね、私のことを正論でいじめてくるのぉ……」
「え、えぇ……? それはいじめてると言うのですか?」
システィアの胸に顔をうずめるユウキ。
ひたすら正論で厳しい言葉を投げかけるクロエルと違う優しいシスティアに甘えようとしているみたいだ。
そしてシスティアの胸に顔をうずめていたユウキは急に何かを思いついたかのように顔を上げ、システィアの顔を見つめてきた。
「そうだ! シス! お願いがあるんだけど聞いてくれない!?」
「お願いですか? ユウさんの頼み事とあればできる限りのことはやりますよ」
必死に請い願うユウキに向かってニコリと笑いかけるシスティア。
その笑顔は純粋な好意からの優しい笑顔。
元聖職者であることから困っている人は見捨てない彼女の性格が見ることができる。
ただ、ユウキが何かに困っていることに察してはいるのだろうが、まさかその原因がオナ禁ができなかったことに対してだなんて知らない無垢な表情だ
そしてそんな彼女にユウキはとあるお願い事をすることに。
「お願いだから私と一緒にオナ禁して! 三日間!」
「さりげなく短くするな」
どさくさに紛れて一週間から三日に期間変更したユウキを見逃さないクロエル。
とはいえ、一週間どころか一日すら我慢できなかった彼女にとってはちょうどいい期間なのかもしれない。
ただ、そう思われる程辛抱できない人間だと認知されるのはどうかと思う所ではあるが……
そして、そんなお願いをされたシスティアはというと、一瞬何を言われたのか分かっていなかったみたいだが、数秒たってから『えぇ!?』と驚いた表情をしていた。
「そ、そんなこと言われましても……私だってオナニーは日課ですので……できれば自由に発散したいというか……」
なるべく聞き入れると言ったものの、一日のお楽しみを禁止することをお願いされてしまい困惑するシスティア。
神聖な修道院で聖職者とは思えないほど罰当たりなオナニーをしていた彼女は勿論毎日オナニーは欠かさない……いや、欠かせないこと。
それを禁じられてしまうことは恩人のユウキのお願いとはいえためらってしまうらしい。
「そこをなんとか! 一人だと正直我慢できる気がしないの! 誰かと一緒にやるなら我慢できる気がするから!」
システィアにお願いをためらわれてしまったユウキは、なりふり構わずに床に頭をつけて土下座。
オナ禁仲間欲しさに土下座をするその姿は、とても勇者と呼ばれている者とは思えないほど不格好なものであった。
「ちょ……! 頭を下げないでくださいよぉ……わ、わかりました……ユウさんにそこまでされちゃうと弱いです。私も頑張ってみます」
「ありがとう!! 一緒に頑張るわよ!!」
ユウキに土下座までされてしまい、そこまでされてしまっては断り辛くなったシスティアは
渋々引き受けることに。
そしてユウキは引き受けてくれたシスティアの手を取って涙を流しながら彼女に感謝している。
なんだか女の友情を交わしているようにも見えるが、実際は一緒にオナ禁しようとしているだけなのだからなんだかとても馬鹿馬鹿しい。
「もう私部屋に戻っていい?」
そしてそんな馬鹿な光景をひたすら見せられたクロエルの方はというと、これ以上この痴女達との友情を目にしていたら頭がおかしくなりそうになると思ったのか、死んだ魚のような目をしながら自分の部屋へと戻っていくことに。
そしてクロエルが部屋を出て行ったのを始め、ユウキとシスティアも自分の部屋へ戻っていき、ユウキのエロ禁生活二日目の夜が終わったのだった。
♢♢♢♢♢
そして翌日の朝。
「無理でした」
「右に同じく」
まだ文が起きていない時間のリビングでテーブルに着いたユウキとシスティアは昨日の夜のオナ禁の結果報告をクロエルにするが、結局シてしまったと自白。
だが、オナ禁失敗したのになぜか清々しい表情をしている二人。
その表情から全く反省していないことが丸わかりであった。
最近忙しくて更新遅くてすみません
仕事中に色々ネタは思いつくのですが、いかんせん執筆の時間がたらなくて……
次の更新はなるべく早めにやりたいと思っています!





