16-4話 もみもみ
「落ち着きなさい、エナ」
いきなり席を立って息を荒げたエナのやるせない怒りを主人であるマオが治めようとする。
その言葉でハッとしたのか、エナは少し落ち着きを取り戻してゆっくりと席に座り込む。
しかしその座る姿はさっきの元気いっぱいのエナの姿ではなくすこししょんぼりとした姿だった。
「絶対おかしいっすよ……これだけ毎日牛乳飲んでいるのに全く成長しないなんて……しかもウチの姉ちゃんはめっちゃボインなんすよ……」
「あぁ……あなたのお姉ちゃんはその……胸が大きいわね」
「こんなの遺伝子の理不尽っすよ……」
「なんだかんだで貴女も悩みがあるのね」
どうやらエナには実の姉がいるらしいが、マオの反応からしてもその姉はエナと違って胸は大きいらしい。
身近であろう姉と比べて胸のサイズが全く違うことからエナは胸に対して異常なほど胸に対して執着しているみたいだ。
「どうしたらおっぱい大きくなるんすか!? 教えてくださいっすよ!! ユウさんやシスさんは何をしたらそんなに大きくなったんすか!?」
もう胸が貧弱なことを隠そうともしなくなったエナは恥もなく巨乳のユウキとシスティアに巨乳の秘訣を尋ねる。
頼りの牛乳も全く効果が見えずにこれ以上バストアップの方法がなくなった彼女は自分で考えるよりも巨乳の人に聞くのが手っ取り早いと考えたのだろう。
しかし聞かれたユウキとシスティアはというと、『うーん……』と腕を組んだり、顎に手を当てて考え込む。
「そんなこと言われてもねぇ……特に何もしてないのよね、勝手に育ったというか」
「そ、そうですよね……私も大きくなりたくてなったわけでもないですし……」
エナに聞かれたものの、胸を大きくする秘訣なんて心当たりがないと顔を合わせて言う巨乳勢二人。
まぁ、確かに胸が大きくなるかどうかなんて個人差によるものが大きい気はするところだ。
「大体おっぱい大きいのだって結構大変なのよ? 私、結構魔物狩りで外を走りまわったりしていたけど、ちゃんとした防具つけてないと揺れて痛いし、それに変に男から視線が集まって凄く不快な気分になるからどっちかっていうと私は邪魔に感じるのよね~」
「そうですよねぇ、普通に生活しているだけで重いですよね。寝る時とかも仰向けで寝づらくないですか?」
「あぁ、わかるわ」
豊満な胸を持つ二人はエナの前で胸が大きいことによる障害を話す二人は持つ者ならではの巨乳談義を交し合う。
二人にとっては胸なんか大きくなってもいいことないよ? と言っているつもりなのだろうが、そんな巨乳あるあるを一つも理解できない持たざる者であるエナは顔を引きつらせていた。
「うわぁ……で、出たー……無自覚系巨乳自慢だぁ……」
「む、無自覚系巨乳自慢ってなんですか?」
「そうやって巨乳は無自覚に貧乳を傷つけるように自慢するんだぁ……おっぱいが大きくなると目線の高さまでデカくなって貧乳達を見下すんすよね……」
「み、見下してなんていないですよぉ……」
胸が大きい人ならではの悩みの呟きは、貧乳サイドのエナからしたら『なんて贅沢な悩みなんだ!』と眉間に皺を寄せざるを得ない呟き。
不満を寄せられているユウキとシスティアであったが、持つ者である彼女達だってエナの気持ちがわからないのだろう。
しかし、なんとかエナを慰めたい気持ちになったシスティアは巨乳に対する怒ったり、自分の胸の寂しさに涙したりする
「でもエナさん、 胸がなくてもエナさんは可愛いですよ? そんなに胸ばかり気にしなくてもあなたはとても素敵な人だとと思います」
「シスさん……」
恐らく彼女の本心でもあるのだろうが、先ほどエナに慰めてもらった恩もあり、ニコリとエナに優しく笑いかけている。
エナもそんな彼女の優しさを受けて少しは自分のコンプレックスが和らいだ……
と思いきや、エナはむしろ眉間の皺をさらに寄せてシスティアの方をにらんでいた。
「んなこと言われてもうれしくないんすよ!! 私はやっぱりおっぱい大きくしたいんすよ!!」
「え、えぇ!?」
慰められたはずなのに何故か吸に声を荒げてキレだすエナ。
どうやら相当胸の成長に執着しているみたいで、変に慰めると火に油を注ぐことになるみたいだ。
再び声を荒げたエナは急に席を立って隣にいるシスティアの背後に回ってきた。
「大体なんなんすか! シスさんのこのおっぱいは!? なんで私より身長低いのにこんなに立派なものを……! さっきからイライラするんすよ!」
「あ……ちょ……!え、エナさん! ひゃん……!」
いきなりエナはシスティアの胸をモミモミ。
不意打ち気味に胸をもまれたシスティアは変に甲高い声を上げながらも抵抗をすることなくエナに胸を揉まれ続けている。
か細い声で『や、やめて……』と口では言っているものの、どことなくその表情は嬉しそう。
「ちょ……でかっ!! なんすかこれ!? 5cmくらい私にくださいっすよ!!」
「ん……! あ、あげられるならあげたいですけど……」
「はぁ? なんすかそれ!? ボイン自慢っすか!? これはお仕置きっす!!!」
「え、エナさん! それ以上激しくされちゃうと……! ひゃぁ!!」
さらに胸を揉む手の勢いが増したことによりシスティアはさらに甲高い声をあげてしまう。
さらにはその刺激に気分が高ぶっているのか胸を揉まれている彼女は蕩けるような顔になり、頬も赤くなっていく。
さらにはそんな扇情的なシスティアを脇で見ている文の顔も真っ赤だ。
「あ、もうこんな時間ね。そろそろ帰らなくちゃ」
システィアがエナにもみくちゃにされている中、マオは町の時計台に目を向けてそう呟いていた。
どうやら何か用事があるらしくてそろそろ魔王城に帰る時間が来たらしい。
「あ、マオちゃん何か用事があるの? もうお別れなんて寂しいな」
「ま、まぁ……なんだ……魔王としての仕事が……な」
文の質問に答えるものの、なんだか歯切れが悪いマオ。
態度からして、恐らく仕事ではないんだろうなー、と予想はつくものの追求するのも可哀想なので『そうなんだ、大変だね』と文は納得。
なんとかごまかせた……と、ちょっと安心したマオは魔王城へと変えるためにゆっくりと席を立った。
「それじゃあ私達はそろそろお暇させてもらうわね。エナ、帰るわよ」
「あ、もうこんな時間っすか。そろそろマオ様が毎週見ているアニメが始まるじか――」
「エナ!!」
「はいはい、すぐ行くっすよー。それじゃあ皆さん、またお会いしましょう!」
せっかく用事のことをぼやかしたのにまたまたエナに暴露されかけてしまったマオはエナを怒鳴るように呼んでそのまま歩いてどこかに消えてしまう。
エナもシスティアの胸をモミモミしていた手を放してマオの元へと駆けて去っていったしまった。
そして、もみくちゃにされていたシスティアはというとエナが手を離した途端にクタッと倒れこむように椅子にもたれ掛かる。
激しく刺激されたせいなのか息が荒げ、顔を赤らめてなんだか扇情的な表情をしている。
「はぁ……はぁ……」
「し、シス? 大丈夫? なんだかエナちゃんに凄いことされていたけど」
「は、はい……大丈夫です……ちょっと胸がなんだか気持ちよくなってしまいまして……下着の方も少し湿って――」
「あ、それ以上はいいです」
これ以上システィアを喋らせると下品な話題になってしまいそうだと感じて文がシスティアの発言を制す。
文に発言を止められたシスティアであったが、下品な言葉はやめたものの、うっとりした表情は変わらず小さくため息をついていた。
「はぁ……エナさん……とても素敵な方でしたね……」
「え?」
システィアは去っていく魔族二人の背中の方を見つめて小さく呟く。
どうやらエナに対して特別な感情を抱いてしまったらしく、赤くした頬をさらにポッと赤くするシスティア。
その表情が快感で興奮したからなのか、はたまた別の気持ちを抱いたからなのかは、本人のみぞ知るところであった。





