16-3話 牛乳とトマトジュース
「お待たせしました~ミルクとトマトジュースです」
「あ、どうもありがとうございますっす!」
システィアが顔を赤くして俯いていると横から店員が注文した飲み物を持ってきた。
店員はマオとエナの前にトマトジュースと牛乳を置いて小さく礼をすると再び戻っていった。
なんだか雰囲気がよくなってきたところではあるが、店員が割り込んできたことで話題が途切れてしまう。
「ククク……やっぱりこの血のように赤いジュースは最高ね」
「ぷはぁ! 一仕事終えたばかりで飲む牛乳はうまいっすね~」
魔族二人は受け取ったコップを口につけて傾け、頼んだ飲み物に喉を鳴らす。
買い物中何も飲んでいなかったのか、喉が渇いていたようで口角があがるほど美味しそうにゴクゴク。
「注文の時にはあんまりきにしなかったけど二人ともカフェでトマトジュースと牛乳だなんて変わっているね。普通だったらお茶やコーヒーや普通のジュースとか飲みそうだけど」
「確かにユッキーの言う通りだね。マオっちもエナりんもカフェで注文するくらいトマトジュースと牛乳好きなの?」
ユウキとクロエルが魔族二人の注文に対して質問。
彼女達の言う通り、二人の年頃の女の子がカフェでトマトジュースや牛乳を注文するものではないような気がする。
それなのに二人はカフェのメニューをまともに見ることもなくトマトジュースと牛乳を注文した。
確かに普通とは違うそのチョイスは少し気になるかもしれない。
「あぁ、私は成長のために牛乳飲んでるようなもんすね~、昔から大きくなるために牛乳は毎日欠かさず飲んでいるっすよ~」
「成長のために毎日飲むなんて偉いねー。私は牛乳飲むとお腹下しちゃうからあんまり飲めないんだよね」
「へー、そういう人もいるんすね。私はそんなことないので毎日飲んでいるっすよ」
牛乳を飲んでいる理由を得意げにエナはしゃべりだし、そのエナの言葉にクロエルも納得する。
マオに対する態度を見ているといいかげんに生きていそうな彼女ではあるが、結構健康には気を使っているらしい。
気の使い方をもう少し主人に向けてあげてもよいのではないかと思うところではあるが……
「マオもトマトジュースよく飲んでるよね~。私が魔王城に遊びに行ったときも結構飲んでいるのを見かける気がするけど、もしかしてマオもえっちゃんと同じで健康に気を遣ってるの?」
今度はユウキがマオに向かってトマトジュースを飲む理由について尋ねる。
確かにトマトジュースや野菜ジュースを飲む人は健康に気を遣っている人が飲むイメージがある。
しかし、その質問を受けたマオはエナと違い、理由を聞かれただけなのに少し目を泳がせて答えにくそうにしていた。
「え、えっとぉ……我の場合は貧血気味だからトマトジュースで血の代わりとして補給しているのだ」
「へー、貧血なんだ。鼻血よく出すところを見る気がするけど大丈夫?」
「う、うん」
トマトジュースを飲んでいる理由が貧血気味だからと言うマオを心配するユウキ。
貧血気味なのは恐らくユウキが魔王城に遊びに行った時もマオに抱き着いてマオの鼻血を出させまくっているからなのだろうが、まさか自分が原因だなんて思ってもいないのだろう。
というかそもそもトマトジュースによって貧血が治るとは思えないのだが?
ユウキ以外はそんな疑問を持っているものの、肝心の想いを寄せられている彼女がそのツッコミ所に引っかかていない様子。
「ユウさんと一緒にいると興奮しちゃって鼻血が出ちゃうんすよ。ね! マオ様」
「な……! ば、バカ! 何言ってるのよエナ!!」
マオがユウキに対して誤魔化した所でエナがニヤニヤしながら二人の会話に割り込んで、鼻血の理由について暴露。
ユウキが好きなことがバレてしまうかもしれないと思ってあえて言わなかったことをエナに言われてしまい、マオは焦った表情でエナを叱りつける。
しかし、時すでに遅し、ハッキリとユウキの耳にエナの言葉が入ってしまった。
「マオ……あなた、もしかして私のこと……」
神妙な顔をして抱きかかえているマオを見つめるユウキ。
マオがエナの発言を止めるのが遅かったからなのか、エナの言葉に何か思うところがあるみたいだ。
「あ……! い、いや……その……違うの! お姉ちゃん!」
マオの方はというとユウキに見つめられてしまっておろおろ。
心の中では『もしかしてお姉ちゃんが大好きなことがバレちゃった!?』とユウキに想いを悟られてしまったのではないかと思っているのか、困った様子で目はうるうるしている。
あまりの動揺に口調も素の状態に戻り、うっかりお姉ちゃん呼びになってしまっている。
「もぉ……そんなに私が遊びに来るのを楽しみにしてのぉ? 本当に可愛いんだからぁ~!」
神妙な顔をしてマオを見つめていたユウキは再び顔がゆるんでマオを強くギューッと抱きしめる。
その姿はさながら孫を愛でるおじいちゃんおばあちゃんかのように甘えた声でマオをナデナデ。
そしてナデナデされているマオはというと再びユウキとの濃厚接触により再び鼻から血がドバドバ。
せっかくトマトジュースで補給したところなのに。
「あー……マオ様、また鼻血っすか? 鼻血を拭く身にもなってくださいっすよ」
「う、うるさい! 大体ペラペラ私のことしゃべらないでよ! 前にも小説書いていることを他のメイドに話していたし、少しは黙っていなさい!」
「そんなにイライラしないでくださいっすよ~、カルシウム補給に牛乳飲むっすか?」
「それ貴女が頼んだものじゃない。というか私、牛乳あんまり好きじゃないからいらない」
「えーっ! 好き嫌いはダメっすよ、マオ様! 牛乳飲まないからちっちゃいままなんじゃないっすか?」
「小さい小さいってねぇ……! 私はまだまだ成長期なのよ! これからどんどん大きくなるんだから!」
「いやいや~それにしてもマオ様はちっちゃいっすよ~。私がマオ様の歳ぐらいの時にはもう2,30cmくらいは身長ありましたっすけどねぇ」
「くっ……! あ、貴女がノッポなだけよ!」
今度は身長に関する話題で喧嘩する魔族二人。
しかし、改めてこの二人を見ていると、とてもメイドとその主人の会話とは思えない。
主にメイドのエナが主人のマオに対して舐めた態度を取っているせいであろうが……
「でも確かにエナちゃんって背が高いよね。何cmくらいあるの?」
二人の喧嘩に割って入るように文がエナに質問。
するとマオの方を見てヘラヘラしていたエナは文の方を見て質問に答えようと『えーっとぉ……』と顎に指をあてて考え込む。
「最近は測っていないっすけど前測った時は168でしたっすよ」
「高いねー、私も身長低い方だから羨ましいなー」
「えへへー、フミさんもきっとその内伸びるっすよぉ」
文がエナの身長について聞いてみたけれど平均身長よりだいぶ大きいらしい。
しかもエナは同じく身長の高いユウキよりも細い身体のため、マオが言う通りノッポに見える。
「身長褒められるのも悪くないっすねー、でも流石にユウさんほどじゃないっすけどねー」
「誰がデカ女じゃ」
「そこまでは言ってないっす」
身長のことに触れられてユウキが少し声色低くエナの方をにらむ。
確かにユウキは他の女子とは格が違うレベルで身長が高い。
エナより少し高いことから恐らく170はあるだろう。
同年代の男子と比べても負けないくらいの身長の持ち主であり、女子としては高すぎる身長のことについては気にしているのかもしれない。
「というかさ、えっちゃんだって充分身長あるんだし、それ以上伸ばす必要なくない? なんでそんなに成長したいがために牛乳を飲むの?」
「そういえばエナって魔王城でも毎食わざわざ牛乳を持ってきてから食べているわよね? なんで牛乳だけ異様にこだわっているのかしら?」
「うっ……それは……」
ユウキとマオに詰め寄るように聞かれたエナはさっきまでの威勢は消え、急に喋らなくなってしまう。
質問をした2人は知りたくてエナに聞いただけなのだが、エナはあまえいそのことについて聞きたくない様子。
ただ、二人が単純に理由がわからずに質問をしている中、文にはエナが何故牛乳にこだわっているのか一つの理由が浮かんできた。
かつてとある目的があって自分も牛乳を飲んでいた時期があったからだ。
「もしかして……胸を大きくしたくて?」
「…………」
思い当たった理由をエナに聞いてみる文であったが、エナは質問に対して無言を貫く。
さっきまで積極的に会話に割り込んできていたのに急に何も言わなくなってしまった。しかし無言ということはどうやら図星みたいだ。
「…………悪いっすか」
「え?」
「おっぱい無いの気にして悪いっすか!!?」
急に黙ったかと思うと急に声を荒げて机を『ダンッ!』と叩くエナ。
さっきまでヘラヘラとした余裕の表情は消えて眉間に皺を寄せてしかめっ面になっている。
どうやら貧乳……いや、ペタンコという彼女の逆鱗に触れてしまったらしい。
私も子供の頃は毎日のように牛乳を飲んでいましたが今飲むとお腹下しちゃいますね
なんか日本人の多くは牛乳飲むとお腹壊しちゃうらしいっす





