11-1話 お腹空いた……
「あーやっと町についたぁ」
「やっと着いたのね……つ……疲れた……」
とある町についた4人は疲れ切っていた。
街に着いたはいいものの彼女達が着いたのはかなり遅い時間であり、辺りはもう真っ暗で町の街灯だけが辺りだけが4人を照らしている。
「お腹すいた……」
「私もです。もう日付が跨いでるのではないでしょうか……」
4人が何故こんな夜遅くまで歩いていたのか? というと、先日に文が鳥の魔物に誘拐されたこともあって町に着く予定がずれしまったのだが、そのおかげで元々買い貯めていた食料が底をついてしまったのだ。
一日何も食べずに過ごすという選択もあったが、空腹を満たすために4人はこんな夜遅くまで無理して町まで歩いてきたのだった。
「ごめんね、私が魔力使い切らなければお店が空いている内にこの町まで飛んで買い出しにこれたのに」
シュンとした態度で謝るクロエル。
先日この魔導師が空を飛べることが判明したため、いざとなったら彼が町まで食材を調達することもできた。
だが、今回はクロエルの魔力が足りずに断念するしかなく、4人全員歩いていたのだった。
「しょうがないですよ、今日はいつもより魔物が多かったですし」
「……私のせいでごめん……」
「べ、別にフミさんを責めてるわけじゃないですよ!」
そして、クロエルの魔力が足りなくなった理由は毎度のことであるが、文が魔物に襲われていたからだ。
昨日、鳥の魔物に襲われた時に魔力を全て使い切ってしまい、魔力がまだ回復しきっていないというのも原因の一つであったが、今日町に向かう途中に文が魔物に襲われたところ救うために魔法を放ち少ない魔力を消費してしまったためだった。
「なんとか町までこれたのは良かったけど、こんな時間まで空いている店なんてこの町だとファミレスくらいしかないみたいね」
「ファミレスかぁ、メニューが豊富だしいいんじゃない?」
「私、ファミレスって行ったことないです!是非行ってみたいです!」
携帯で店を探していたユウキが提案を出し、クロエルがその意見に賛成する。
また、システィアは初めて行くファミレスに心を躍らせていた。
だが、文はそんな3人と別のことを頭に浮かべていた。
(この世界にもファミレスってあるんだ……武器屋や防具屋みたいに私が知らないお店ばかりってわけじゃないのね……
本当……この世界って結構現代的……
漫画や小説でみたことある異世界の世界ってだいぶ中世くらいのイメージだけど……)
ファミレスという言葉自体は馴染みがあるが、まさか異世界にもあるなんて思っていなかった。
3人が話で盛り上がっている中、文だけは1人で考え込んでいた。
「ファミレスってさー、ファミリーレストランの略だけど言う程お客が家族ばっかじゃないわよね」
「そうなんですか? 私はてっきり家族で来るものかと思っていました」
「まー、確かに友達や彼氏彼女とかと来る人の方が多いかもねー、それに最近は1人で来る人も増えたみたいだし」
考え込んでいる文を置き去りにファミレスの話で盛り上がる3人。
一人だけ会話に入れていないことが寂しく感じた文も考え事をやめて会話の中に入ろうとする。
「はっはっは! まぁ、私とふーちゃんは近い内に結婚する仲だからファミリーみたいなもんだけどね!」
「いつそんな約束したのよ……」
「でも私達ってしばらく一緒に行動してて同居もしていますし、もう家族みたいなものですよね」
「うーん……言われてみれば、そこまで否定することでもないかなぁ」
ユウキの結婚発言を否定した文であったが、ファミリーと言われることは別に悪い気はしなかった。
変態達に囲まれて疲れを感じることも多々あるのは確かだが、なんだかんだ言って彼女達のことは嫌いではないしどちらかというと好きだ。
だが、ファミリーと言われてもまんざらでもなさそうな文を見てか、ユウキが調子に乗る。
「私達が家族だとしたらぁ、とりあえず私とふーちゃんが夫婦になるでしょぉ?」
「何がとりあえず⁉︎」
文が空腹ながら声を張り上げるがユウキはそれを無視して妄想の続きを語り出す。
「それでぇ、シスが私達の子供ってところかな」
「こんな大きな子供がいてたまるか」
「ママー!」
「ちょ!? 私はママじゃない!」
「おやおやふーちゃんのバブみにシスがおぎゃってるわね」
「バブみ!? おぎゃってる!? 何その単語!?」
訳の分からない単語の羅列に驚く文。
だが、なんとなくではあるが意味がわかってしまうのが少し嫌だった。
「ちなみにどちらがお父さんで、どちらがお母さんなのですか?」
「この話まだ続くの?」
システィアがユウキに尋ねる。
文がいい加減家族ごっこの話題にうんざりとしていたが二人はノリノリのようだ。
「どっちもお母さんよ!! 仮の呼び名だとしても我がファミリーに男の血を入れることは許さないわ!!」
どうやら架空の家族ですら彼女の中には男は存在しないらしい。
もはや熱の入れ方がごっこではない気もする。
「……じゃあ私はその家族には入れないの?」
そんな中、クロエルが寂しそうに尋ねる。
男である自分は仲間外されたと感じているのだろう。
「うーん……まぁ、ペットくらいなら雄でも許してあげるわ。じゃあクロは私達ファミリーが飼ってる犬ってことで」
「犬って……まぁいいわ、つまり愛らしい犬と同様で私も可愛いってことね!」
「あ、飲食店にペットは連れてこれなかったわね。私達はファミレスで食べてくるから外で待ってなさい」
「ごめんなさい、調子乗りました」
威勢よくいつものナルシストぶりを発揮したクロエルであったが、ご飯抜きに耐えられずすぐ謝罪。
腹ペコで仕方がないこの状況で晩飯抜きは耐えられるわけがない。
そして4人はお腹の虫を鳴らしながらファミレスへとむかっていった。
♢♢♢♢♢
「お、あれが目的地のファミレスね」
ユウキが指をさした方向にオレンジ色の外装の大きなお店が一件。
店の天井から一本の看板がぶら下がっており、店名であろう文字が刻まれていた。
何か見覚えのあるような気がした文であったが、気にせず3人の後をついて行って入店した。
カラーン
「いらっしゃいませー!」
店の扉を開くとベルが鳴り、その音を聞きつけた店員が来店の挨拶をしながらこちらへと向かってきた。
「何名様ですか?」
「4名で」
「かしこまりました。ではお席の方へご案内します」
「あ、すみません。ベビー用チェアってあります?」
勇者一行に背を向けて席へ案内しようとした店員だったが、先ほどの家族ごっこのネタを引っ張ったユウキが子供用椅子のありかを聞く。
「はい、それならあちらの方にありま……ベビー用ですか!?」
振り返って受けた質問にマニュアル通り答えようとした店員だったが、まさかの質問に聞き返してしまう。
先ほどの笑顔は消えて『こいつらマジか!?』と言いたそうな表情を浮かべている。
どうみても10代中盤の団体から赤ちゃん用の椅子を寄越せと言われたらそりゃあビックリするだろう。
明らかに動揺した店員を困らせないように文は店員に見えないように後ろから手をキュッとつねってこれ以上変なことを言わせないようにする。
「あああああああああ!! 痛い痛い痛い痛い痛い!!」
「お、お客様!? どうしたのですか!?」
だが、痛みのせいでユウキが唐突に叫び出したせいでさらに店員を困惑させる結果になってしまった。
「す、すみません! なんでもないので席に案内してもらっていいですか!?」
流石にこれ以上店員さんに迷惑をかけるわけにもいかないため、文が代わりに受け答えしてすぐに席へ案内してもらうように言う。
「そ、そうですか? で、ではお席の方へご案内します……」
店員は空いている席へと案内。
あまりにも怪しい客の相手をしたことにより、案内した際には困惑した表情だったが、そこは流石接客業の人間、取り乱していた態度を徐々に取り戻してきちんと仕事をこなしていた。
案内された4人用のテーブルに勇者一行は座り込み、一日中歩いて疲れた足を休ませる。
「ご注文が決まり次第そちらのベルから店員を呼んでください」
「わかりました。あ、とりあえずドリンクバー4人分お願いします」
「かしこまりました、あちらの方にドリンクバーがありますのでご利用下さい」
店員が指した方向を見るとコップと飲み物が豊富そうなドリンクバーがあった。
早速飲み物を取りに行こうとユウキとクロエルが席を立とうとしたが、
「あ、私が飲み物持ってきましょうか?」
と、システィアが提案を出してきた。
根が優しい彼女なりの気づかいなのか、初めてのファミレスでのドリンクバーが気になっているのかはわからないが、飲み物を持って来てくれるはありがたいことだった。
「そう? じゃあ私はなんでもいいからてきとーに選んで頂戴」
「あ、私もそれでお願い」
ユウキとクロエルはシスティアに飲み物を頼んでメニューを開いて何を頼もうかとメニューに目を向けていた。
「私も一緒に行くよ。シスはドリンクバー初めてなんでしょ? もし飲み物の出し方分からなかったらいけないし」
そして文はシスティアについていって一緒に飲み物を取りに行くことに。
「あ、確かにそうですね。お願いします。」
「じゃあ行こうか」
こうして二人はドリンクバーの方へと向かって歩いていく。
「わわっ、こんなに飲み物が選べるんですか?」
「そうだよ、色々あるねー」
「本当ですね……これだけあると悩んでしまいそうな……」
初めてのファミレス、ドリンクバーでテンションが上がっているシスティアは目をキラキラ輝かせている。
そんな彼女を少し可愛く思っていた文であったが、飲み物を選ぼうとドリンクバーの方へと目を向ける。
しかし、ここで想定していなかったことが起きた。
(あ、あれ? これ……書かれてる文字が日本語じゃない……)
そう、ドリンクバーでは飲み物の名前がそれぞれ書かれているが、そこに書かれていたのは明らかに日本語ではなかった。
いや、日本語ではないといってもアルファベットやハングル文字だったというわけでもなく、文が見たこともないような文字だったのだ。
(よく考えたらここは異世界なんだ……日本の言葉じゃないのは当たり前じゃない……)
この世界に来て今まで、たまたま文字を読むことはなかったので気づかなかった文ではあるが、その明らかに日本語でない文字に困惑していた。
だが、文字をジッと見ているとあることに気が付いた。
(あ、あれ? よ、読める! 紅茶、オレンジ、緑茶……日本の文字じゃないのに日本語で読める! なんで? こんな文字知らないはずなのに……)
何故読めたのかはわからない。
勝手に頭の中で日本語に変換されている……そんな不思議な感覚。
まるで食べると勝手に翻訳してくれるこんにゃくを食べたような感覚だった。
「フミさんどうしたんですか?」
「えっと……なんでもない……」
文が色々考え込んでいるとシスティアが話しかけてきたが、気にしないように文は言う。
ここで自身が感じている疑問をシスティアに投げても痛い奴だと思われるだけだと思った文はその疑問を自身の胸の中に押しとどめ、とりあえず飲み物を確保するためにオレンジと書かれているものを選び、ボタンを押して飲み物をついだ。
するとオレンジ色の液体がコップへと注がれて甘酸っぱい匂い、どうやら異世界でも変わらないオレンジジュースっぽい。
自分の飲み物をついだ文はクロエル用の飲み物をついでテーブルに戻ろうとした時、
「ん?シスのその飲み物って何?」
システィアが持っていた飲み物が気になって尋ねる。
彼女が持っていたのは緑の飲み物。
緑と言っても緑茶やメロンソーダのような緑ではない。
濃い真緑といったようなあまり食欲がそそられないような色だった。
「これですか? 青汁です」
「青汁? え? 好きなの?」
「いえ、苦いものはあまり……」
「じゃあ健康のため?」
「そういうわけでもないのですが……」
「はぁ? じゃあなんであえてそれを持ってきたの?」
「えっと……なんとなく……」
「なんとなく!?」
なんとなくで青汁をチョイスしたシスティアに驚きを隠せない文。
だが、彼女が選んだのであるなら文自身がどうこういう権利はない。
結局文は青汁を選んだ彼女に微妙な視線を送りながら一緒に元のテーブルへと戻った。
「ふーちゃん、シス飲み物ありがとー」
「あれ? シスチーのその飲み物何?」
テーブルに戻ると早速クロエルがシスティアの飲み物に聞いてきた。
「これは青汁です」
「「青汁? なんで?」」
「あ、ごめん。もうそのやり取りやったからいいよ」
ユウキとクロエルの二人が同時にシスティアに疑問をぶつけたが文が発言を制する。
さっきと同じやり取りをやっても全く面白くもないし疲れるだけだからだ。





