10-5話 女装っ子の乳首ってアウトですか?
「変な解説はいいから私を助けてえええええええ!!」
文を救出したはいいものの今度はクロエルが襲われてしまい、結局襲われている人が入れ替わっただけの状況でピンチであることには変わりない。
必死に助けを求めるクロエルであったが、助けを求められた勇者様はというと襲われている彼をただただ傍観しているだけだった。
「元々あんたのせいでこうなったようなものだし因果応報でしょ。せいぜいふーちゃんと同じ痛み(全裸)を味わいなさい」
「いや、ふーみんが攫われたのはたまたまで私は悪くな……って、ぎゃああああ!! それ、お気にのブラなのぉ! 返して!」
自分のせいではないと言い訳をするクロエルだったが、聞く耳を持たないユウキは彼を冷たく突き放す。
必死に助けを求める彼であったが、助けを求めている間にもどんどん衣服を奪われてしまい、もう上半身は裸になっていた。
「いやああああああ!! 流石にパンツはダメ! R18になっちゃう!!」
とうとう身にまとっているものはパンツだけとなり、そのパンツまで奪われそうになり悲鳴をあげるクロエル。
流石にこれ以上はマズイと必死に抵抗するが、非力な彼には魔物を追い払う能力などなく、ただただ逃げ回るしかなかった。
一方ユウキはそんな彼に背を向けて文を背負って魔物の巣から出ようとしていた。
「じゃあ、ふーちゃん行こっか。このままじゃ風邪ひいちゃうしね」
「いや、流石に助けてあげて! くーちゃんをこのままここに置いて行く気!?」
「えー……だってふーちゃんをこんな目に合わせたのあいつじゃん」
「別にくーちゃんは悪くないでしょ!? むしろ、あの子がゆーちゃんを呼ばなきゃ私は助からなかったよ!」
「んー……そこまで言うなら……」
助けたくはないけど愛しの文が言うのならしょうがないか……と言いたげな表情でユウキが呟く。
一応クロエルは彼女の仲間であるはずなのだが、本当にそうなのか疑いたくなるほど扱いが雑だ。
しかし、彼を助ける前にそのユウキがピンチに陥ろうとしていた。
「うわっ! 油断してたらこっちに来た!」
そのピンチとは、クロエルに群がっていた魔物達が今度はユウキの方へと向かってきたのだった。
餌となる服をほとんど食べつくされたクロエルに対して、ユウキの服はすべて無事なため当然なのかもしれない。
「きゃああああああ! ゆーちゃん! 魔物をこっちに寄せないで!」
「クソッ! 流石にふーちゃん背負いながらだと逃げるしかないわね! ふーちゃん! しっかり掴まってて!」
裸の文の大事な部分が見えないようにユウキは文を背負って魔物から逃走。
彼女からしたらこの数の魔物でも余裕で狩れる実力はあるのだが、流石に文を背負いながらだと剣もまともに振ることさえできない。
そんな状況に置かれた彼女は渋々魔物から逃げるしかなかった。
「し、占めた! 今の内に逃げる!」
そして魔物達がユウキの方へ向かっていったということは、逆にクロエルの方から魔物がどんどん離れていったということ。
その状況に便乗したクロエルは地面に落としていた自分の箒を拾って、再び空を飛んで逃げようと試みていた。
「あ! てめぇ! 何1人で逃げようとしてんの!?」
文を背負いながらユウキは、箒に跨って逃げようとするクロエルに気づいて彼を責め立てる。
そして、そんな彼を許さない、とばかりにユウキは魔物を引き連れながら彼の方へ走っていった。
「ちょっと!? 魔物を連れてこっちにこないで!」
「うるさい! 一人だけ助かろうなんて許さないわよ!」
まるで彼を道連れにするかのように猛スピードで彼の元へと向かっていくユウキと、彼女が追い付く前に箒を飛ばして逃げようとしていたクロエル。
必死に逃げようとして魔法で離陸したクロエルだったが……
「うわっ! ちょっと! 箒掴まないで!」
離陸するギリギリのタイミングで間一髪ユウキが間に合い、逃走用の箒を思いっきり掴まれてしまった。
絶対に逃がさないとばかりに強く固く握られたその手はユウキの執念がこもっているよう。
クロエルにとってはその手が死神の手のように見えていた。
「逃げるなら私達も連れて行きなさい! 女の子だけを置いていくなんて最低よ!」
「ちょっ……! さ、流石に3人は無理だって!」
クロエルにとってはユウキ1人分の体重でさえギリギリ飛べていた状況なのに、今はそのユウキに咥えて文の体重も加わっている。
なんとか巣を離れて崖から空を飛んでいく3人ではあったが、その体重はクロエルの魔力で支え切れるものではなく徐々に高度が落ちていく。
それでも全裸に剥かれたくないクロエルは必至で魔力を振り絞ってなんとか高度を保って空を飛んでいた。
「あ……」
少しの間空を飛んでいると急にクロエルから不穏なつぶやきが聞こえてきた。
明らかに何かがあったかのようなクロエルの呟きにユウキと文の二人は嫌な予感が走る。
そして残念ながらその予感は的中した。
「ご……ごめん……魔力切れた……」
「は?」
その瞬間、先ほどまで緩やかに落ちていくスピードが急激に加速していった。
もうすでに魔法によって自分達を空へと押し上げていた風はなく、自由落下によって感じる風しかなかった。
「きゃああああああああああああ!!!」
「うわあああああああ!」
「死ぬうううううううううううう!!!」
各々悲鳴をあげながら空を落下していく3人。
文はユウキの背中につかまったまま、クロエルは飛ばなくなった箒を掴んだままそれぞれ急降下していく。
そのまま落下していった3人は下にあった木の上に落ちていき、ガサガサッと葉っぱや枝が身体に当たっていく。
文を背負ったままのユウキは木の枝に当たりながら落ちていく中、瞬時の判断で太い木の枝を掴んでぶらさがることに成功し、なんとかことなきを得た。
流石は勇者様といったところである。
そして、ユウキの後ろで掴まっていた文もどうやら無事のようだ。
ぶらさがったユウキは後ろにいる文が無事そうなことに安心し、木の枝を握っていた手を離して地面に降り立った。
「ふーちゃん大丈夫?」
「う、うん……なんとか……」
「よかった……あれ? クロはどこ行った? 死んだ?」
「ちょっと! 物騒なこと言わないで!」
文さえ無事ならあとはどうでもいいといった態度のユウキ。
むしろ、死んでいてくれとすら思っていそうなほどだ。
「ゆ、ユッキー……助けて……」
2人がクロエルの居場所を探しているち、どこかからか彼の声が聞えてきた。
耳を澄ますとそれが上の方から聞こえてきたことがわかり、上を見ると木の枝の上にいるクロエルを発見。
どうやら運よく箒が木の枝に引っ掛かったみたいで地面に落ちずに済んだ様子だ。
しかし、今度は木の上から降りれなくなって困っている様子。
「そんくらいの高さだったら降りれるでしょ、自分で降りなさい」
「いや、私見ての通り裸なの! このまま木を伝って降りたら肌が擦れちゃうし、飛び降りたら怪我しちゃうかもしれないの!」
「ガタガタうるさいわねぇ……男の子でしょ? 傷がつくくらい我慢しなさいよ」
「嫌よ! もし見えるところに傷がついちゃったらSNSで自撮りあげられなくなるもん!」
「何なのよその理由……まぁいいわ、別にふーちゃんもあんたの事恨んでるわけじゃないし」
木に登り、片手でクロエルの手を掴み、彼が降りれるようにゆっくりと下ろしてあげる。
その光景はまさに木の上に上ったはいいものの降りれなくなった猫を助けてあげるような光景に似ているが、そんな微笑ましいものではない。
嫌いな男の手を握るのが嫌なユウキは終始嫌そうな表情をしており、助けられたクロエルはユウキが乱暴に手を掴んでくるので降りるまで『痛い痛い!』と連呼していた。
だが、これでようやく文、クロエルの両方を救出し、なんとか一息ついたところだ。
「うぅ……もう嫌だ……」
だが、魔物から助かった文はというとうずくまって元気がない様子。
どうやら度重なる自分のトラブルにメンタルがかなりやられているみたいだ。
いつもだったら裸の文にセクハラまがいの発言をしそうなユウキであったが、流石に自重してセクハラしたい気持ちを抑え込んでいた。
「ふ、ふーちゃん……とりあえず私のマント貸してあげるからこれ羽織っておきなよ」
「……うん……ありがとうゆーちゃん……」
さすがに裸の文をこのままにしてはおけないと自分がいつも羽織っているマントを脱いで文に手渡す。
マントなので本当に身体に纏って大事な部分を隠すことしかできないが、ないよりかはマシだ。
「あのー……ユッキー? 私も何か羽織るもの欲しいんだけど……」
自身のマントを文に渡したユウキを見てか、全裸の文ほどではないがパンツ一丁のクロエルが自分もなにか着るものが欲しいとねだる。
胸を手で隠しながら。
「我慢しろ。ていうか手ブラするのやめろ! 男なんだから堂々としてなさい!」
「いや……でも、ポロリなんかしたらR18になっちゃうし……」
「ならないわよ!?」
必死に隠そうとするクロエルの手を掴んで手ブラを辞めさせようとするユウキと嫌がるクロエル。
はたから見ると大きめの女の子が小さい女の子の乳首を無理やり露出させようとしているような光景にしか見えなかった。
♢♢♢♢♢
一方その頃システィアは、
「あのー……3人とも私のこと忘れていませんかね?」
1人残されて寂しそうに呟いていたが、それに対する返事は何も帰ってこなかった。





