10-4話 目も当てられぬその姿
「ちょっとクロ! こっち方面で本当にあってるんでしょうね!?」
「そ、そのはずなんだけど……」
「ほ、本当なんでしょうね!? さっきから全然ふーちゃんの気配ないんだけど……」
「うぅ……たしかに……いや、多分……こっちだったと……思う……」
「ちょっと! 何徐々に自信なくなっていってるのよ!? あんただけが頼りなんだからしっかりしなさい!」
文の行方を追って行ったユウキとクロエルの二人は箒に乗って上空にいた。
普段は男嫌いなユウキではあるが、現状、文が消えて行った方向は彼しか知らないため頼らざるをえない。
だが、頼りのクロエルも全く文の行方がつかめないことにどんどんと自信がなくなっていった。
「わ、私、あの子がいないと生きていく気力なくなるわよ! 本当にしっかりして!」
「うぅ……ふーみん、ごめんなさい……」
「謝んな! 謝るくらいなら死ぬ気で探しなさい!」
二人が飛び立ってからしばらく経ったのに文の消息を掴めないことに二人は焦りに焦っていた。
クロエルはすでに自分のせいで文が魔物に喰われてしまったのではないかと後悔の謝罪を述べ、ユウキはそんなクロエルを叱咤する。
しかし、強気に見える彼女もここまで文が見つからないとなると『もしや……』と最悪のケースを想像してしまう。
二人が絶望し、『もうダメだ……』と思いかけたその時だった。
「……食べないでくださいいいいいいいいいい!!」
少し離れた場所から甲高い悲鳴のような声が聞えてきた。
「……! 今の声……!」
「あっちからふーみんの声聞こえた!」
「そんなことは分かっているわよ! は、早く行きなさい!」
探し人の声が聞えてきたことにより二人の生気がわずかに戻る。
だが、まだ文が生きていることが判明しただけであり、安心はしきれない。
先ほどの声は明らかに悲鳴のようなもの、彼女の身に何かがあったのは間違いないからだ。
「遅くない!? もうちょっとスピード出せないの!?」
「急かさないで! これでも精一杯魔力振り絞ってるの!」
聞えてきた悲鳴をたよりに二人は声の元へと飛んでいく二人。
やがて二人は文を攫った魔物の巣がある岩山を空を登っていった。
「あ! あれだよ! ふーみんを攫った魔物!」
岩山をしばらく登っていった場所に見えた巣のようなもの中に先ほど見た魔物を指さすクロエル。
指をさした方向には先ほど文を攫った魔物とその魔物の雛達がいた。
「いやああああああ! 誰か助けてえええええええ!!」
そして魔物の群れの中から文の声。
だがしかし、声は聞こえるものの魔物が彼女に群がっているせいかその姿は確認できなかった。
生きてはいるのだろうが、無事なのかどうかはまだ確認できない。
「ふーちゃあああああん!! 大丈夫!?」
「ゆ、ゆーちゃん!? た、助けてぇ!!」
自身を呼ぶユウキの声に文は反応し、助けを求める。
その際に、魔物の雛達に埋もれていた彼女が雛達をかき分けて上がっていき、自身の姿を現した。
そこにいた文は目も当てられぬ姿へと化していた。……
なんと……鳥の雛達に埋もれていた彼女はほとんど裸に剥かれていたのだ。
「ぶはっ!」
思ってもいない眼福の光景に思わず吹き出してしまうユウキ。
何故彼女が無事だった上に裸に剥かれている状態なのかは不明である。
「ふ、ふーみん見えたの!?」
文の姿が確認できなかったクロエルも安否が気になり、下を向いて文の姿を確認しようとする。
「ちょ! お前は見るな!」
すると、ユウキは前にいるクロエルの目を両手で覆って目隠しをする。
男である彼に対して文の裸を見せないようにするためである。
「ちょちょちょ!! 何何何!? 前が見えない!!」
目隠しされたクロエルは急に視界が真っ暗になったことでパニック状態。
そして箒を操っている彼がパニックになったことで箒の軌道が急激にぶれて操縦はどんどん不安定に……
「うわっ! ちょっとクロ! ちゃんと操縦しなさい!」
「だから前が見えないのよ! 落ちる落ちる落ちる死ぬ死ぬ死ぬ!!」
「ちょ……落ち着け!」
「だったら手を離して!」
どんどん箒の高度が落ちていく中で箒の上の二人は言い争い。
ユウキの手を振りほどこうと頭を振るクロエルに対し、男に愛しの文の身体を見せたくないユウキも全く引く気がないようで手を離そうとしない。
二人が空中で争っている間もどんどんと高度が落ちていく。
そんなやり取りをしばらくしていると、やがてあと少しで地面に突っ込みそうなところまで落ちて行っていた。
「うわっ! 落ちる!」
現状目が見えないクロエルと違って地面が間近に迫っていることを理解したユウキは箒が地面に突っ込む前に自ら箒を降りて受け身を取って着地。
そして、箒に残ったクロエルは落ちる寸前に目隠しをしていたユウキの手が離れたことで視界が戻り、なんとか箒の態勢を整えてギリギリの所で着地し、なんとか二人とも無事に着地することに成功した。
「はぁ……! はぁ……! あ……あっぶなかったぁ…………ちょっとユッキー! なんで急に目隠しなんかするの! 危ないじゃない!」
「う、うるさい! あんたには見せられない光景だったのよ!」
「意味わかんない! こっちは死ぬかと思ったんだからね!」
着地した後にお互い怒声を張り上げる二人。
特にクロエルは本気で死ぬと思っていたためなのか、先ほどまでのおどおどした態度は消えて強気な態度でユウキを責めたてる。
だが、二人は忘れているがここは魔物の巣の中である。
巣に近づいてきた二人に気が付いた魔物達が二人の方へ向かって襲い掛かってきた。
「ぎゃああああああ!! こっちに魔物来た! なんとかしてユッキー!」
巣に侵入してきた者に警戒しているのか、はたまた餌が自らやってきたと思っているのかは不明だが、危険な状況だ。
先ほどまで空を飛ぶために魔力を思いっきり使っているせいで魔法を使えないのか、魔物の対処をユウキに丸投げするクロエル。
「うわあああああああ!! ふーちゃあああああああああん!! 今助けるからあああああああ!!」
だが、助けを求められたそんな彼女はというと彼の言葉を無視してすぐさま文の元へと全力疾走で駆けて行っていた。
「ちょ……! ま、待って! このままじゃ今度は私が食べられ……きゃあああああああああ!!」
ユウキが一目散にその場から離れたためか鳥達の目標はクロエル一点となり、辺りの鳥達はクロエルに群がっていく。
だが、そんなこと知ったこっちゃないとユウキはクロエルの方を振り返ることもなく文の元へとたどり着く。
そして、鳥の雛たちの中に埋もれている彼女を抱え込み、魔物と離れさせることに成功し、なんとか彼女の安全を確保することができた。
「ふーちゃん大丈夫!?」
「うぅぅぅ……もうお嫁にいけない……」
大事な部分を手で隠して蹲っている文であったが、丸見えの肌には目立った傷はない。
どうやら身体よりも精神的ダメージの方が深いようだ。
「いやああああああああ!!! ユッキー、私の方も助けて!」
しかし、文を助けたのは良かったものの今度はクロエルの方がピンチになっている様子。
襲われている彼の方を見ると文と同じように衣服がビリビリ破かれており、黒の上着の下に隠れていた白い柔肌が露わとなっている。
また、不思議なことに文と同様で服だけ破かれているようで身体の方は無事みたいだった。
「あの鳥何なの!? 本気で食べられるかと思ったら服だけ綺麗に食べられたんだけど……」
「あぁ……あれはハギトリって言ってね、繊維を餌にしている鳥型の魔物でね、肉食じゃないから人は食べないけど冒険者の衣服をよく餌にしている魔物なのよ」
「なにそのご都合モンスター!?」
服だけを食べるというエロ漫画にいそうなモンスターがいる世界に嫌気がさしてきた文であった。





