9-4話 ロリコン疑惑
「ちょっと私がゆーちゃん抑えるからシスとくーちゃんは手に持ってる物を奪って」
「わかりました」
「りょ」
「ちょぉ!? やめてぇ! これだけは勘弁してぇ!!」
ユウキが隠している何かを出させる方法、それは力づく。
今まで彼女に対する問題はすべて文の鉄拳で解決しているため今回もそのつもりのようだ。
そして、隠した何かを持って逃げようとしたユウキであったが、素早く反応した文に掴まれてしまい、すっかり動けなくなってしまう。
それでもなお手に持った何かを隠そうと必死に悪あがき。
「なんでそんなに嫌がるの? 絶対何か企んでるでしょ!」
「違うの! 確かにこれはエロ本じゃないけど見せられないのぉ!!」
エロ本ではないことは白状したものの、実際それが何なのかまでは吐かない。
ここまで必死に隠そうとするとなるとやはり気になるところ。
「じゃあユウさん申し訳ないですけど、これ、頂きますね」
「ああああああ!!」
しかし、文に動きを封じられてしまった彼女はあっさりと手に持っている物を奪われてしまう。
だが、その隠していたものをなんとか引きずり出したシスティアとクロエルだったが、それを見ても頭の上に『?』を浮かべていた。
何故かと言うと、それが本には間違いないのだが、表紙がないため何の本なのかがわからなかったためだ。
「何でしょうこれ? そもそも表紙がないですし薄いですし先ほどの漫画や小説ではないですよね?」
「アルバムじゃない? 私の予想としてはふーみんの盗撮写真が入っているに一票」
「あー、それはありそうですねぇ」
「ちょっと! あんた達、私を何だと思っているのよ!?」
確かにこの勇者様だったら盗撮くらい日常茶飯事やってそうなことではあるが、実際の所はわからない。
その謎を解くためにもシスティアとクロエルは中身を開いて真相を確かめることにした。
「……え? これって」
「こ、これは……」
すると、さっきまでニヤニヤしていた二人の表情が中身を見たことで急に消える。
そして、一変して眉間にシワを寄せて深刻な表情と化す。
「ふーみんの盗撮写真が入ってるのかなーって冗談で言ったけどさ…………もっと酷いやつだよ……これ……」
「ちょっと……これは、流石に……」
「え? 何? 何? すっごく気になるし怖いんだけど。見せてよ」
ユウキの動きを止めているためその本の中身を見れない文はクロエルにお願いして、本の中身を見えるように開かせる。
開かれた本を見るとその中はびっしりと写真が貼られており、どうやらクロエルの予想通りその本はアルバムだったみたい。
しかし、ただのアルバムではなかった。
それは……小さな子どもの写真が大量に飾られてあるアルバムだったのだ。
「ゆーちゃん……」
「ユウさん……」
「ロリコ……じゃなかった、ユッキー……」
先ほどまでユウキを拘束していた文でさえ、システィアとクロエルの元に駆けていき、犯罪者を見るかのような目でそれぞれ3人は彼女じっと見つめていた。
「ちょっと待って! なんで3人ともゴミを見るような眼で私を見てるの!?」
「ゆーちゃん……変態だとは思っていたけどこんな小さな子どもに欲情するなんて……」
「文さんのことを好き好き言っていましたから年下好きなのだろうとは思っていましたが……流石にこのレベルは……」
「ちょっと警察に引き渡した方がいいんじゃない? 実際に手を出す前にさ」
もう3人は完全にユウキを犯罪者予備軍扱いで、今にも警察に通報しそうな勢いだった。
しかし、そんな不名誉な扱いを受けたユウキが反論する。
「ちょっと待ってよ!? 3人とも勘違いしてるよ!」
「勘違いって何よ? 『私はロリコンじゃなくてペドだ!』とか言い出すんじゃないでしょうね?」
「何その言い訳!? 違うわよ! それ、小さい頃の私だから!」
「……え? これ、ゆーちゃんなの?」
「あ、本当だ。金髪だもんね、この子」
「……言われてみれば面影があるようにも感じますね」
改めて写真を見ると確かにユウキに似ており、ユウキの子供の頃の写真というのがわかる。
どうやらアルバムに入っている写真は全部彼女の子どもの頃の写真らしい。
しかし、それだと何故このアルバムを必死に隠そうとあそこまで抵抗したのかが分からない。
「じゃあ、なんでさっきこれを必死に隠そうとしたのさ?」
「いや、だって恥ずかしいじゃん。自分の子どもの頃の写真見られるなんて……」
「そこ恥ずかしがるくらいなら普段のセクハラじみた行動と発言を恥じて」
普段やっていることの方が恥ずかしいのに、そこを恥ずかしがるのか……と呆れる3人
だが、その一方で安心した。
この変態勇者様が普段からセクハラに走るような人格にロリコン属性まで加えられたらたまったものではないのだから。
「ふーん、ゆーちゃんの小さいころのアルバムだったなら別にいっか。みんな見よ」
「そうだねー、子どものころのアルバム見つけたのに見ないのは失礼だしねー」
「私もユウさんの小さいころには興味あります」
すでに先ほどの冷え切ったムードはなくなり、ワイワイしたムードが戻ってきていた。
そして、流れはすっかりユウキの小さいころの写真を見ようという流れに。
「いやいや! 恥ずかしいからあんまり見ないで欲しいんだけど!?」
「……? 恥ずかしいからこそ見られたくなるのではないでしょうか?」
「あなたと同じ感覚で考えないで頂戴」
見られて興奮するという理由で太もも丸出しの服を選んだシスティアに対し感覚の違いを指摘している内に文はアルバムを開いてじっくりと小さな勇者様を観察。
幼いころのユウキは多くの写真は満面の笑顔でカメラを向いている。
どれもとても可愛らしく微笑ましい光景だ。
「へー、ゆーちゃんの小さいころ可愛いなー。でも……こんなに可愛かったのに…………こんな変態になっちゃうなんて……」
「えへへ、なんか照れるな」
「褒めてない、嘆いてるの」
再びアルバムに目を向けてページをめくってみるが、めくってもめくってもどのページにはユウキの小さなころの写真ばかり。
その中にはおじいさんと訓練している写真も中にある。
まだ小さく未熟なせいか、訓練がうまくいかず悔しそうな様子が映っているものもいくつかある。
「へー、この頃はまだまだ普通の子どもで当たり前のように力なかったんですね。今はゴリラ並みですけどね」
「ご、ゴリラ? そこまでじゃないわよ!」
「そ、そうですか」
ゴリラ呼ばわりされて強く否定するユウキだが、今日、散々重い家具を一人で運んでいるのを目にしているため『そこを否定するのか……』とひそかに思ってしまうシスティア。
まぁ、わずかに女の子の心が残っているからなのか、流石にゴリラ呼ばわりは心外なのかもしれない。
「へー、ユッキーにも可愛い時代があったんだねー。ちょっと意外―」
「は? 馬鹿にしてんの? ぶち殺すわよ」
「なんで私だけ……」
二人と同様に率直な感想を述べただけなのにガチ切れされて理不尽な気分を感じていたクロエルを尻目に文はパラパラとアルバムのページをめくっていく。
アルバムをめくっていくとどのページも幼いころのユウキの写真が並んでいるのだが、その中でとある一枚に目が留まった。
(あれ? ゆーちゃん以外の女の子がいる写真がある……)
その写真というのは二人の女の子が映っている物。
一人は幼いころのユウキ。
太陽のような笑顔でカメラに向かってピースを取っている元気いっぱいの姿。
もう一人はユウキの背後に隠れて顔だけを出してカメラを覗いている別の女の子。
そんな二人が映っている写真だった。
文が知らない女の子は幼いユウキよりもだいぶ小さく、その頃のユウキが10歳くらいだとすると5,6歳くらいなのではないかと推測ができるほどの身長。
ただ、ユウキ以外の女の子だったからという理由だけが目に入った理由ではない。
目に入ったのはその女の子がかなり特徴的からなのだ。
その子はユウキの背後に隠れて頭しか見えなかったが、ユウキの明るい金色の髪と対称に薄暗い紫色の髪。
そして、何よりも頭に生えている角のようなものが何よりも大きな特徴的だったのだ。
「もう! こんなものずっと見てても面白くないでしょ!? かえして!」
「あ……」
文がジーっとアルバムの写真を見ているとユウキにパッと奪い取られてしまった。
あまり自分の過去の写真をじろじろ見られているのはやっぱり恥ずかしいみたい。
「みんなお腹空いたでしょ!? 引っ越し祝いにパーッとごちそうでも食べましょ!」
「誤魔化したねー」
「ユウさんみたいな人でも照れたりするんですねー」
「二人ともうるさい! 二人はご飯抜きにするわよ!?」
「「ごめんなさい」」
照れ隠しするユウキをニヤニヤと笑っていたクロエルとシスティアを制してアルバムの話は終了。
しかし、文の頭の中ではさっきのアルバムの中にいた少女が誰なのか、という疑問が頭に残ってしまい、ご飯よりもそちらの方を気にならざるをえないのであった。
今回で9話終了です!
9話では今後登場予定のキャラ2名の存在をぼかしてみました。
その内の1人はあと3話以内に出そうと思っていますので、どんなキャラか予測しながらお待ちください!





