9-2話 お引越しTIME
「引っ越しかぁ、やったことないから何やればいいのかわからないなぁ」
自分がちゃんと作業できるか文が吐露する。
すると『私も』といった表情でクロエルとシスティアが首を縦に振って同意している。
14~16歳の彼女達にとっては引っ越しの経験などなく、引っ越しと言われても何をやればいいのかわからないのだろう。
「引っ越しなんて前の家にある必要なものをまとめて移動するだけよ。といっても、今回はそんなに必要なものは多くないし4人でやればすぐよ、すぐ」
不安そうにしている3人の気を和らげようとユウキがヘラヘラしながら雑な説明をする。
実際のところ、今回の引っ越しは楽な部類である。
前の家は元々ユウキが一人で使っていたものであるため荷物は少ない上に、前のハウスから出した荷物をそのまま新しいハウスに運べばいいだけなので普通の引っ越しのようにダンボールにまとめる必要もないのだ。
その上現在パーティには4人もいるため、人数も十分である。
「まぁ確かに4人もいるんだしユッキーの言うようにすぐ終わるんじゃないかな? ちゃちゃっと終わらせてゆっくりしようよ」
「うん、そうだね。それに自分の部屋があると思うとちょっと楽しみ……」
「私も楽しみです! これからは自分の部屋でゆっくりとオナ――」
「よし! さっさと作業始めよ!」
なにやらシスティアが怪し気な発言をしかけたような気もするが、クロエルがうまく遮ってくれたおかげで4人はそのまま引っ越しの作業を始めるのであった。
♢♢♢♢♢
引っ越しのために4人が最初にはじめたのは前のハウスの荷物を外に出しであった。
「よし! まずはリビングの家具から片付けようか!」
そして一番最初に荷物を片付ける部屋はリビングに決定。
理由としては大きな家具が多いためである。
「そうねー、じゃあまずはテーブルを運ぼうかしらね。他の家具を運ぶのにちょっと邪魔だし」
さらに一番最初に部屋のスペースを取っているテーブルを運ぶことに決定し、4人の中で一番近い場所に立っていた文がすでにテーブルに手をかけて運ぶ準備をしていた。
「このテーブルを運べばいいんだよね? 誰か一人手伝ってくれない?」
「あ、じゃあ私が手伝いますね」
「ありがとうシス。じゃあ私がこっちを持つからシスは反対側持ってくれる?」
「かしこまりました。……はい、持ちました!」
「じゃあ『1・2・3!』で持ち上げるね!」
「わかりましたー、掛け声はお任せしますね」
「いくよー、『1・2・3!』」
掛け声と共にテーブルにかけた手に力を入れる二人。
しかし、テーブルは持ち上がりはしたものの少し経ってから『ガタッ』と音とともに再び床に脚をつけた。
「ちょ、ちょっと重いね……」
「そうですね……私達二人だとちょっと運ぶのは難しいかもしれませんね……」
どうやら二人だけではテーブルを持ち上げれなかったみたいだ。
確かに二人が持ち上げようとしたテーブルは意外と大きく、非力な女の子二人だけでは持ち上げるのは厳しいかもしれない。
「あ、じゃあ私も手伝うよ」
テーブル運びに苦戦しているそんな二人を見てクロエルが声をかける。
2人で運べなかったテーブルもこれで運べるようになるだろう。
「じゃあ3人はそれを外に出して。えーっと……じゃあ私はこれを運ぶわね」
3人がテーブルを運ぶことになったため、一人残されたユウキは別のものを運ぶことにした様子。
一人でも運べるものを見つけた彼女はリビングから抜け出していってしまった。
冷蔵庫を持ち上げながら。
その大きな冷蔵庫を軽々と抱いた彼女は重たそうな表情を一切せずにそのままリビングから抜け出していく。
リビングに残された3人はテーブルに手をかけたまま彼女を見てポカーンと口を開けていた。
「えー……冷蔵庫って一人で運べるものなの?」
「いや……あれだけの大きさだったら大人二人……私達のような女の子だったら最低でも3人は必要なんじゃないかな?」
「(クロさんは男の子なのでは……)それを一人で運べるユウさんの力は一体どころからきているんですかね?」
「もう私達いらなくない? ゆーちゃんだけで十分引っ越しできるでしょ」
ユウキの底知れぬパワーを目の当たりにし、自身の存在意義がわからなくなった3人であったが、そのまま順調に引っ越しの作業は進んでいった。
♢♢♢♢♢
「ふぅ……とりあえずリビングの荷物は全部外に出し終わったわね。みんな手伝ってくれてありがとうね」
自身の家の引っ越しに手伝ってくれた3人にユウキはそれぞれお礼を言う。
引っ越しを始めてからしばらく経ち、今はリビングの荷物出しが終わりひと段落ついた所のようだ。
「う、うん……ほとんどゆーちゃんがやってた気がするけど……」
「私達3人が家具を運んでいる間に1人でどんどん片付けちゃうもんね……」
「小物にしても同時に何個も持って行ってましたよ。本当にユウさん一人でよかったかもしれませんね」
しかし、ユウキと比べたら自分達の働きは大したことがないと自覚している彼女達は『お礼を言われても……』といった微妙な表情をしていた。
「荷物出しはあとは私の部屋と客室のものだけかな? そのあとそれぞれの部屋の掃除をしたら旧ハウスでやることは終わりよ」
「といっても寝室にあるものってベッドだけだよね? ゆーちゃんの部屋の方は知らないけど」
「フミさんはユウさんの部屋を見たことないんでしたっけ? 私は昨日ユウさんの部屋で寝させていただきましたが、同じようにベッドが一つあるだけでしたよ」
「じゃあ、すぐ終わるでしょ。さっさと終わらせて新しいハウスに荷物を運ぼうよ」
「オッケー、じゃあ私は自分の部屋を片付けておくから3人は客室のベッド運びと掃除をお願いね」
3人に客室での作業を指示したユウキは1人で作業をするために自身の部屋の方へ向かっていってしまった。
彼女が隣の部屋に入っていくことを見送った3人は客室に入ってベッドを運ぶことにした。
「じゃあ私がこっちを持つからふーみんとシスチーは反対側の方持ってぇ」
クロエルの指示によりクロエルが部屋の奥側、文とシスティアの二人が手前の方でベッドを持ち上げることになり3人がそれぞれベッドに手をかける。
持ち上げる準備が整ったところで『1,2,3!』の掛け声と共にベッドを持ち上げたその時のことであった。
「ん?」
クロエルが床の方を見て何かに気づいたようで、床の方を不思議そうにじーっと見つめていた。
「どうしたのくーちゃん?」
「いや、ベッドの下に何かあるっぽいの」
「ベッドの下?」
どうやら持ち上げた際にベッドの下からその何かが覗き、クロエルがそれに気づいたみたいだ。
彼の発言により、そのベッドの下にあった何かを見ようと文とシスティアはベッドを一旦戻してベッドの下を覗いてみると彼の言う通りベッドの下に何かあることがわかった。
「本当だ、なんか箱みたいなものがあるね」
「なんだろうね、これ?」
「ちょっと取り出してみましょうか」
謎の箱が気になった3人であったが、その中からシスティアがベッドの下に手を入れて取り出そうとする。
「っ……これ重いですねぇ、中に何が入っているのでしょう?」
例の箱を引き出そうとするシスティアであったが、どうやら箱の中身に何か入っているようでなかなか取り出せずに苦心している。
しかし、なんとかその箱を引きずりながらも、なんとか取り出すことができた。
出てきた謎の箱の中に何が入っているのか3人は気になってはいたものの、勝手に開けるのも気が引けてしまい、ただただその箱をジーっと見つめているだけであった。
「あー! この部屋に置いていたんだった! 忘れてた!」
3人が謎のダンボール箱を不思議そうに見ていると背後からユウキが大きな声と共に現れた。
当たり前であるが、ユウキの家から出てきたものなのでやはりこの箱は彼女がベッドの下に隠していたもののようだ。





