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セクハラ勇者ちゃんと行く愉快な世界〜異世界転移した私と変態達の旅〜  作者: もみまん
6話 NOT変態? 謎多き黒魔道士
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6-3話 ブチギレ勇者ちゃん

 文、ユウキ、システィア、クロエルの4人はリビングのテーブルに静かに座っていた。

 リビング内は、なんともいえないような空気が流れており、誰もしゃべらない、まるで葬式かのような静寂である。

 そんな静寂の中、ユウキが手に持っている剣の柄を机に振り下ろし『カンッ!』という音が冷たい空気の中、鋭く鳴り響いた。

 

「えー、これから裁判を始めます」

 

(なんか始まった……)

 

 ユウキ以外の3人が同時にそのセリフを心でつぶやく。

 クロエルは知らないが、彼女がわけのわからないことを言いだす時はよほどキレているか興奮している時だ。

 それを知っている文とシスティアはこれから起こる事に嫌な予感がした。


「今回、裁判長を務めさせて頂くユウキです。今の私は勇者ではありません。一人の極悪人を裁く正義の執行人です」

 

 いつもよりかなり低めの声でユウキが言った。

 顔は眉間にシワを寄せ、ギラギラと目を光らせている。

 声といい、表情といい、かなりイライラしているようだ。

 

「えっと……なんで私は縄で縛られているの?」

 

 そんなとても話しかけづらいユウキにクロエルが尋ねる。

 言葉の通り、彼は縄で縛られ、その姿は江戸時代の罪人のようである。

 また、椅子に座った状態で椅子ごとグルグルに縛られているため身動きが全く取れない。

 

「被告人は黙っていなさい」

「ひ、被告人?」

 

 どうやら先ほど言っていた極悪人とはクロエルのことのようだ。

 しかし、彼自身を含めた3人は何故クロエルが縛られているのか、そして、何故こんな裁判じみたことをやっているのかわからず、ただただ混乱している。

 そんな3人を気にすることなくユウキは裁判(?)を続ける。

 

「それではシスティア検事、事件の説明をお願いします」

「えっ? 検事? 事件? それに説明って何をすれば……」

「これ、私の書いた事件の内容。それ読んで」

「は、はぁ……」


 ユウキは乱暴に一枚の紙をテーブルに置き、システィアは目の前にあった紙を持ち、それに書かれてある内容を読み上げる。


「えーっと……『事件は私達が住んでいるハウスの浴室で起きました。被告人(クソ野郎)が被害者であるフミさん(偉大なる勇者様の嫁)に猥褻な行為をしたと思われます』」

「えっ? してないんだけど」

「うん、されてないよ」

 

 被告人、被害者が共に読み上げられた内容を否定した。

 しかし、裁判長であるユウキが『静粛に』と二人を制し、システィアに読み続けるよう命令する。

 

「『しかも、被告人は自分のことを女の子と偽って被害者に近づいている。その行動は、被害者を油断させるためと思われ、とても悪質であると言える。』」

「私はそんなつもりじゃ——」

「被告人は黙りなさい!」

 

 クロエルが再び否定しようとするが、声をあげた瞬間にユウキが声を張り上げて彼を黙らせる。

 その威圧に押されてクロエルも黙ってしまい、再びシスティアの朗読する声だけがリビング内に流れる。

 

「『——以上です』」

 

 しばらく続いたシスティアの朗読がやっと終わった。

 そして、読み終わってすぐに再び『カンッ!』と剣の柄で机をたたく音が響く。

 

「もう良いです。十分判決に必要な判断材料は揃いました。それでは判決を言い渡します」

 

 そう言うとユウキはスゥっと息を吸い、

 

「有罪!! 死刑!!!」

 

 と力強く判決を言い渡した。

 

「判決はやっ! そして重っ!」

 

 文は思いもよらないスピード判決と重すぎる刑罰に声をあげる。

 

「な、なんで私が殺されなきゃいけないのよ!? 控訴する!」

 

 クロエルも自身の死刑宣告に対して反対。

 あまりにも理不尽な刑罰故に、文句を言うのは当然だ。

 

「うるさい! 控訴なんて認めない! ここは私の家!! 私がルールなの!!」

 

 しかし、ユウキは二人の言葉など聞かず、腰に納めた剣に手をかけて今にも死刑を実行しそうな勢いだ。

 

「それにふーちゃんとお風呂入るなんて……! 私だってまだ一緒に入ったことないのに!! 絶対に許さない!!!」

「私怨もはいってるじゃないの!?」

 

 色々と理由をつけて有罪としているが、どうやら個人的な恨みが強いようだ。

 

「それに男なんてエロいことしか考えてないケダモノよ!! そんな汚れた脳みそした生き物がふーちゃんに近づいて来たってことは……そういうことなんでしょ!?」

「べ、別に私はふーみんに対してそんな感情持ってないわよ!」

「はああああああああ!? 男でありながらふーちゃんの魅力が分かってないって言うの!? 私が男だったら絶対に〇〇〇を〇〇〇して〇〇〇しまくるわよ!!」

「どうしたらいいのよ!? っていうかあんたの方がよっぽど汚れた脳みそしているわよ!」

 

 男全般を非難する彼女に対してツッコミを入れるクロエルであったが、その言葉を受けた彼女は頭を抱えて発狂していた。

 

「うわああああああああああ!! イライラしてしょうがなああああああああああい!! 百合に男が混ざるなんてありえなあああああああああい!!!」

「ちょっと! ユウさん落ち着いてください!!」

「離しなさい!! シスゥ!! こいつだけは絶対に許さない!!!」

 

 顔を真っ赤にして鬼のように怒り狂ったユウキをシスティアが止めようとするが、鬼神と化したユウキを抑えられるわけもなかった。

 そして、システィアが簡単に振り切られると、

 

 シャキン!

 

 と、金属を擦ったような鋭い音がリビング内に響く。

 その音の正体はユウキの剣が鞘から勢いよく抜かれた音であった。

 

「ひいぃぃぃぃぃぃ!!」

 

(この人……本気だ……!)

 

 ギラギラした白い刃が目に入ったクロエルは、彼女が本気で自分を殺そうとしていることを理解して悲鳴を上げる。

 逃げようと試みたが、縛られているため逃げ出すことなどできず、ただ空しく椅子がガタガタ揺れる程度だった。

 光る刃が鏡となって彼の姿を映すが、その表情は恐怖で歪んでおり、自身のことを美少女と自称する彼でも今の自分は可愛く見えない。

 そんな危ない状況を見かねた文もユウキを止めよう椅子から立ち上がった。

 

「ちょっと、ゆーちゃん! やめて!!」

「ふーちゃんのお願いでもダメ! こいつは殺す!! 絶対に殺す!!!」

「いやあああああああああああ!!! 助けてぇ!! シスチィィィィ!! ふーみぃぃぃぃん!!」

 

 殺意満々のユウキ、恐怖で泣き叫ぶクロエル。

 ハウスのリビングで今にも殺人事件が起こりそうである。

 そして、ついにユウキが剣を振りかぶったその時、

 

「やめなさいって言ってるでしょ!!!」

 

 剣を振り下ろそうとする危なっかしいユウキに文の拳が命中。

 いつものように吹き飛び、壁に叩きつけられ、彼女は大人しくなった。

 正直好きではない能力であったが、こうやって暴走したユウキを止めることができ、珍しく役に立ってよかったと心の底から思う文であった。

 

◇◇◇◇◇

 

「今回は私が悪かったの……くーちゃんがお風呂入っているのに勝手に乱入して……」

 

 ユウキの暴走を止めた後、自身の行動について謝罪をする。

 クロエルと出会ったことでテンションが上がっていたとはいえ、色々と自分勝手な行動をしていた。

 今回の騒動はその行動もひとつの要因であることを彼女は自覚していたのだ。

 

「シスもくーちゃんもごめんね……色々と迷惑かけちゃって……」

「い、いいよ! なんか私が男であることを隠していたのも悪かったようだし……」

「私も気にしてないですよ。少し強引なフミさんもそれはそれで萌えます」

 

 二人に謝罪をした文は、今度はユウキに顔を向ける。

 彼女は寝そべったまま、大人しくしていた。

 

「ゆーちゃんもごめんね……」

「……」

 

 文は自分の行動に対して反省の意を込めて謝罪する。

 今回、一番謝らなくてはならないのは彼女だ。

 しかし、謝罪を受けた当人は何も言わなかった。

 

「私のことを心配してくれているのに、その気持ちも考えずに自分勝手なことばかり言っちゃった……」

「……」

「や、やっぱり怒ってる? 本当にごめんね!」

「……」

 

 文はユウキに何度も謝るが、彼女からは反応がない。

 何も言わないユウキが怖くなり、ビクビクしていると、システィアが肩を叩いてきた。

 

「フミさん……ユウさん気絶してて聞いてないですよ?」

「あっ……」

 

 怒って無視をしているのかと思われたユウキであったが、彼女は白目をむいて気絶していただけであった。

 

◇◇◇◇◇

 

「あぁ……今日も疲れた……」

 

 暴走したユウキを止め、一通り落ち着いたところで文は疲れを取るためにゆっくりと入浴をしていた。

 変態と一緒でないこの時間だけが彼女にとって唯一の癒しの時間だ。

 

「それにしても、なんで私が出会う人は変態ばかりなんだろう……」

 

 浴室の湯舟に浸かりながらそんな独り言をつぶやく。

 ユウキやシスティアに関してはかなりオープンな変態であったため、出会ってすぐに変態と分かったのだが、クロエルに関しては違った。

 どう見ても女の子の格好をしている彼が女装をしていることなど気づけるはずもない。

そのため、『ようやくノーマルな人間に出会えた……!』と感動していた文であったのだが、蓋を開いてみたら女装をし、自分のことを美少女と自称する変態であったことに酷く哀しい気持ちになる。

 

「でも女装しているってだけだし、ゆーちゃんやシスよりは大分マシ……な気はする」

 

 文はユウキとシスティアを引き合いにクロエルの評価をする。

 結局変態であることは確かであったが、二人と違って文自身にセクハラをしてこないため、変態と分かってからの第一印象も二人より好印象であったのだ。

 

「そういえば、私のこの力ってくーちゃんには効かなかったよね?」

 

 クロエルの変態性についてぼやいていた文であったが、今朝の出来事をふと思い出す。

 彼と出会った時のこと、尻餅をついている文は彼の手を引いて立ち上がったが、その時に例の力は発動しなかった。

 一度、ユウキが同じ状況で例の力が発動して地面にめり込んだことがあるのに……だ。

 

(私のこの力って”女の子相手に力が強くなる”か”変態相手に力が強くなる”のどちらかだと思う。

 そして今日、くーちゃんに対して例の力が発動しなかった時はこの力が”変態相手に力が強くなる”ものだと思っていた。

 だけど彼女……いや、彼は男の子だった。

 さらに、彼が女装する変態だと判明……

 つまり、私のこの力は……)

 

「”女の子相手に力が強くなる”ってことなの……」

 

 自分の能力がハッキリと判明した文はガックリとうなだれるように水面に顔を埋めた。

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