6-2話 クロエルの隠し事
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文がクロエルとの会話を楽しんでいる中、ユウキとシスティアもまた、とある事を話し合っていた。
「なんかフミさん楽しそうですね~、私達とは少し年が離れているから同い年と出会えてうれしいんですかね?」
「……」
「あれ? ユウさん、どうしたんですか? 大人しくしちゃって。もしかしてクロさんに嫉妬ですか?」
「べ、別に嫉妬なんかしてないわ! そうじゃなくて私が考えていたのはね……あの子、嘘をついてるんじゃないかと思うの」
「あの子ってクロさんの事ですか? 嘘というのは?」
「いや、さっき聞こうとしてふーちゃんに邪魔されたんだけどさ、あの子、一緒にいた他の冒険者とはぐれたって言ってたでしょ? だったら私たちにお願い事をするにしても『町に連れてって』じゃなくて『仲間を一緒に探して』だと思うのよね」
「うーん……もしかしたら、喧嘩別れでもしたとか……」
「いや、そうだとしても街から離れているこんな場所に女の子ひとり残していくことなんてしないと思うし、クロ自身もそれが危険だと分かってると思うから、自分から一人になったりしないと思うのよ」
「だ、だとしたらどうしてクロさんはこんな場所に一人でいたんでしょう?」
「それはわからないわ……あの子がいままで言った話は全部嘘で一緒に行動していた冒険者なんてそもそもいなかった可能性もあるわ」
「どうしましょう? 何かある前にフミさんに教えた方がいいのではないでしょうか?」
「うーん、ふーちゃんはあの子の事をすっかり気に入ってるようだし……でも、何かされてからじゃ遅いから隙を見てふーちゃんに話してみようと思うわ」
文がクロエルと楽しそうに話している一方で、2人はクロエルに対して疑心を抱いていた。
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「ごちそうさまー」
「この食卓もだいぶ賑やかになりましたね」
「泊めてもらっている身なのに夕食までありがとうね」
「別にいいわよ、町まで連れて行くって約束したしね」
時刻は夜となり、ちょうど今、4人そろって夕食を食べて終えたところであった。
町に着くまで同行を依頼したクロエルであったが、結局町に着く前に日が暮れてしまい、彼女もハウスに泊まることとなっていたのだ。
「いやー、それにしてもこんなすごいキャリーハウス持っていてご飯も美味しいなんて最高ね! 私も毎日、これだけ満喫できたらいいんだけどなー」
「じゃあさ! くーちゃんも私達と一緒に旅しない!?」
「えっ? 一緒に?」
「うん! くーちゃん今一人なんでしょ? しばらく私達と旅しない?」
文は目を輝かせてクロエルに旅の同行するよう勧誘をした。
ここまで、文がテンションをあげるのも珍しい。
性格、同じ年齢、似ている体格からなのか、クロエルのことをかなり気に入っているみたいだ。
「うーん…………ご飯は美味しい、豪華なキャリーハウスもある……旅の環境としては最高ね…………後はイケメンさえいれば完璧なのに……」
「ん? くーちゃん、何か言った?」
「な、なんでもない! でも、この家はユッキーのものなんでしょ? ユッキーがどうか聞かないと」
そういわれた文は視線をクロエルからユウキに向けると、
「ねぇねぇ、ゆーちゃんいいでしょ? くーちゃんも行く当てがまだないみたいだしさ」
と、お願い事をする。
しかも、上目遣いで。
「うっ……(か、可愛い……!)」
その顔を上から見ていたユウキからはチラリと瞳が見え、思わずお願いを聞きそうになってしまうが、そんな気持ちをグッと堪え堪え、なんとか話を逸らそうと考える。
「えーっとぉ…………あ! そういえばクロ、お風呂入ったらどう? 魔力使い果たす程だから疲れてるでしょ?」
「う、うん! じゃあ、一番風呂貰っちゃうね!」
「お風呂は部屋から出てすぐ左のとこにあるから!」
「ありがとー!」
そう言うとクロエルはそそくさと部屋を出ていき、お風呂の方へと向かっていく。
彼女も文に急に誘われてどうしようかと悩んでいたため、このタイミングで席を外すのは都合がよかったのだ。
「……いったわね」
そして、それはユウキにとっても都合が良いこと。
浴室まで向かっていく彼女を確認したユウキは再びテーブルに着き、
「ちょっとふーちゃんいいかしら?」
と、文に話を持ち掛けた。
システィアと話していたことを打ち明けるつもりだ。
「……? 改めてどうしたの?」
「ちょっとクロについて……ね? シス、ごめんけどふーちゃんにさっきの話をするから代わりに洗い物していてくれないかしら?」
「わかりましたユウさん」
システィアはそう言うと、テーブルの上にあった皿を重ねてキッチンに向かっていく。
テーブルには文とユウキだけが残された。
「くーちゃんの話って? もしかして一緒に旅するかって話のこと!? 私、あの子のこと結構好きだし一緒に旅した——」
「そういう話じゃないの」
楽し気に話す文の言葉をユウキが遮る。
その口調はいつものおちゃらけたようなものではなく、冷たい口調。
さらにはいつもの表情と違い、至って真剣な顔であった。
そんな彼女を見たことで、文もこれから話す内容が普段のふざけた話ではないことを察して黙ってしまう。
「あの子……何か隠しているわ」
そして、ユウキがクロエルを怪しいと考えている理由についての話が始まった。
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「——ということで、今はまだあの子の事は信用しきれないの。だから、その……あまり仲良くしない方がいいかもしれないわ」
クロエルの不審な点についてユウキはサラッと文に伝える。
彼女が何かを隠していること、言動が怪しいことについて。
しかし、その話を聞いても尚、文はクロエルに対する信用は変わらなかった。
「なんで? あの子が私を助けてくれたのを見たでしょ?」
「あの子は何かを隠しながら接触してきてる気がするの。私達に危害を加えるかもしれないわ」
「……少ししか話してないけどすごくいい子だよ?」
「確かに私が心配しすぎてるだけなのかもしれない。でもね、仮に一緒に旅をするとしたら怪しい行動や言動をする子は信用できないわ」
「何それ……私がくーちゃんと仲良くしているのがそんなに気に入らないの?」
「違う! ふーちゃんはあの子と一緒に旅したのかもしれないけど一緒に行動する上では信用が必要なのよ!」
「もういい! くーちゃんが信用できる事を私が証明する!」
彼女はそう言うとリビングから飛び出して行ってしまった。
まさに、母親に叱られて拗ねる思春期のようだ。
しかし、友達になれたクロエルを怪しいと言われてムキになるのもしょうがないのかもしれない。
「ちょっとふーちゃん! ……はぁ……別にクロの事を悪く言うつもりはなかったんだけど、分かって貰えなかったかぁ……」
「しょうがないですよ、クロさんのことずいぶんと気に入っているようですし」
今の文には何をいっても無駄だろう。
そう考えた二人は出ていく文を見送ることしかできなかった。
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「ふんふんふーん♪ ちゃんとしたお風呂に入れたのは久しぶりだし念入りに身体洗っておこーっと」
リビングで二人が話し合っている間、クロエルはお風呂を満喫していた。
鼻息まじりでご機嫌な様子。
「なーんか、旅の仲間に誘われちゃったけど、どうしよっかなー。確かに行く当てもないから旅の仲間は探していたけどねー?」
文に旅の仲間として誘われたクロエルであったが、その誘いについて悩んでいるようだ。
身体を洗いながら『うーん』と考えていると、
ガチャッ
と、後ろから扉が開く音がした。
「えっ……」
振り向くとそこにはタオルを巻いた文。
突然、お風呂に入ってきた彼女にクロエルは相当驚く。
「ちょ! ちょっとふーみん! どうしたの!」
「女の子同士なんだし一緒にお風呂入るくらいいいでしょ? 何か困ることがあるの?」
「いや、私は……その……なんというか……」
戸惑っている表情をしているクロエルは股に手を当てもじもじしていた。
それに気づいた文はユウキの言う通り何か隠してるのかと思い、クロエルの手を退かせようと無理やり手を引っ張る。
「ちょ……! 何するの、ふーみん!?」
急に手を引かれたクロエルも文に抵抗をした。
「や、やめて……! なんでこんなことするの!?」
「私達もう友達でしょ!? 隠し事しなくてもいいから!」
先程のユウキとの話を聞いて文は少し意地になっていた。
しかし、それもクロエルの事を知るため。
そして隠し事のない真の友達になりたいという思いからである。
そんな手の引き合いをしていた二人であったが、先ほどまでシャワーで手が濡れていたためなのか、お互いの手が滑ってクロエルの隠していたモノが露わとなった。
「あ……」
「え……?」
そこにはあるはずのないものがあった。
美少女……いや、女の子にはないもの。
(これって……男の人の……?
いわゆる、お…おちんち――)
「「きゃあああああああああああああああ!!!」」
風呂場から大音量の悲鳴が2つ、ハウス中に鳴り響く。
美少女黒魔導士クロエルは美少年だったのだ。





